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Accountant's magazine vol.7

-アカウンタンツマガジン-
2011年08月01日発行

会計士の肖像

「この仕事の真義は、経営者の課題や関心事をよく理解すること。そこに立ってこそ専門能力は生きる」

有限責任あずさ監査法人
理事長内山 英世

揺るぎない信条を基盤に。広く人材の育成に心血を注ぐ

その後、朝日会計社が合併や名称変更を重ねる中、内山は39歳の時に代表社員に就任。様々な仕事で備えた力を発揮し、順調にキャリアを積んできた。が、振り返れば、内山にも進退に悩んだ時期がある。30代半ばを迎えた頃、法人内で仕事を続ける限界を感じ、独立することも考えたそうだ。そんな局面でアドバイスしてくれたのは、やはり尾澤修治氏。「同じ仕事も飽きるからな。これからは公的機関の会計が大きく変わる時代が来るよ」と。

官公庁まわりを中心に、僕がパブリックセクターの仕事に従事するようになったきっかけは、尾澤先生のそんな言葉でした。85年、事務所が電電公社民営化にあたっての検討課題など、相談を受ける機会があって、それを担当したのが最初です。従来の官庁的な会計を、民間の企業会計に変更していく過程には様々な課題があるわけですが、ほかにも例えば内部統制の問題、組織の在り方の問題など、もろもろ出てくる。それを多角的に、先方と一緒になって解決の方向性を検討していく。この時、学生時代に持っていた「会計や監査を通じて、どう世の中に貢献するか」という漠然とした思いが、ひとつ実現したと感じたのです。それまで抱えていた閉塞感の突破口になりました。

印象に残っているのは、ある農業団体の組織再編を全国的にお手伝いした仕事。それが縁で日本の各地を回り、僕は自分の目と耳で、各都道府県の農業の実情に触れることができた。机上の知識とは違って、知らないことばかりですよ。田んぼ一反300坪。反収(一反当たりの収穫量)って9俵ほどですが、それがいくらの収入になるか。農協への引き渡し価格が1俵1万2000円前後として、9俵で10万円強。粗収入でね。1万坪でやっと350万程度。それが日本の米農業。農業に対する見方は様々ありますが、事業基盤の彼我の差が参入障壁を築く要因になっているのは事実です。重要なのは、その数字の裏にある現実を見るということ。現実を知らなければ、監査で異常ウンヌンなんて判断はできません。先述したことと同じ。経営者の課題、関心事をよく理解しなければ、専門家とは言えないということです。

02年、内山が本部理事に就任した頃から、業務は監査の現場からマネジメントへと移行する。朝日監査法人とあずさ監査法人が合併する前の過渡期で、全国に広がる地方事務所の改革に臨む“力仕事”にも就いた。以降、業務開発や業務のIT化など、監査法人としてトップクラスを維持するため、内山は奔走してきた。

もう30年以上も前のことですが、僕には忘れられない原体験があります。地方の監査先に行く機会があったので、せっかくだからと、近くにあった当時の朝日会計社の事務所にお邪魔したんですよ。ところが、対応した人が朝日会計社の名前を知らない。「うちの先生が入っているロータリークラブですか?」みたいな感じで、カルチャーショックを受けました。この頃の監査法人は会計事務所の集合体のような側面があり、致し方なかったとはいえ、何かおかしいと。だから理事になってからも、積極的に地方事務所の改革に当たりました。それこそ全国を回りながら。「あずさ監査法人」という看板の下で、品質やレピュテーションをいかに均質化していくか。方針が違う事務所には脱退していただくとか、かなり大変な仕事でしたけど、それが僕の世代の役割だと思うんですよ。

目下、法人内で力を入れて取り組んでいるのは人材の育成。グローバルな視野を持ち、深い専門知識と行動力に富んだ人材をいかに多く育成するかが、僕にとっての大きなテーマです。年初に「あずさ国際会計人材育成奨学金」(公認会計士試験合格者の未就職者を対象に、無償で中国留学を支援する制度)を創設したのは、社会貢献としての人材育成の一環。この4月から、北京にある中央財経大学で授業が始まりますが、15人の定員数に対し、全国から80人を超える応募がありました。若者の内向き志向が懸念される中、多くの若者に手を挙げていただいたことは、喜ばしいことです。

グローバルのボードメンバー会議などに出ると、日本に対する各国の期待が高いことを実感するんです。それなのに日本人は、せっかく持っている日本の良さや優れたノウハウを発信する力が弱い。外国語というツールを使って、本質的なコミュニケーションができる人材が、今後は今以上に絶対必要になります。世界の期待に応えていく人材を安定的に輩出し、様々な企業で活躍するようになれば、それは会計士業界だけでなく、日本の産業界全体にとってもいいこと。僕自身、国や地域社会、先輩たちから幾多のことを教わって育ててもらったのです。多少回り道をした時期もあったけれど、今となっては貴重な経験ばかり。若い人たちには、失敗を恐れず、前を見つめてチャレンジしてもらいたいですね。

※本文中敬称略

Profile

有限責任あずさ監査法人 理事長 内山 英世

有限責任あずさ監査法人理事長内山 英世

1953年3月30日
神奈川県藤沢市生まれ
1975年3月
早稲田大学政治経済学部卒業
1975年9月
公認会計士第二次試験合格
1975年11月
アーサーヤング会計事務所入所
1979年12月
監査法人朝日会計社(現有限責任あずさ監査法人)入社
1980年3月
公認会計士登録
1999年7月
代表社員就任
2008年6月
専務理事、経営管理担当・東京事務所長就任
2010年6月
理事長、KPMGジャパンチェアマン兼CEOおよびKPMGインターナショナルボードメンバー就任
2011年9月
KPMGアジア太平洋地域チェアマン就任予定

公認会計士第三次試験(旧)の試験委員
青山学院大学国際マネジメント学科講師(非常勤)
政府各省庁委員会(財務、農水、総務、林野、経産)の委員などを歴任

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