会計士の肖像
石田正公認会計士事務所
石田 正
日本マクドナルドに9年間在籍した後、石田は活動の場をそのまま事業会社に据えた。2005年にはセガサミーホールディングス専務取締役(CFO)に就任し、主にM&A後の統合作業に尽力。次いで11年からは、カルビーの常勤監査役を務め、社外取締役の一人として積極的に活動してきた。いずれも友人や知人から紹介を受けたもので、「結局はご縁ですね。私はずっと人に恵まれてきました」。
カルビーから依頼があったのは、上場を目前に控えたタイミングで、監査機能をより強めたいということでした。当時の松本晃CEOが、初対面の私に「黙っていては困ります。遠慮しないで取締役会では必ず発言してください」と話されたのは、今でも鮮明に覚えていますね。私は、松本さんがいたから、あれだけ存分に、そして面白く、いろんな仕事ができたのだと思っています。
一番印象的だったのは、取締役会と経営会議が明確に区分されていたこと。当時の取締役会は7人、うち5人が社外取締役という構成で、その顔ぶれには驚いたものです。実業家やジャーナリストなど様々で、私を含めてうるさい人間ばかり(笑)。取締役会は完全な監視機能を有していました。ともすると、日本企業の場合は、取締役会の設置に関して形から入るケースが多く、それを疑問視していた私にとっては非常に新鮮に映りました。
そして、日本的な監査体制のなかで、内部監査をどう活気づけるかを大テーマにしていたので、求められたのは「経営視点による監査」です。いわゆる摘発監査だけではダメだと。それこそ先述したように、例えば工場に出向いて、現場が抱える問題を様々な角度から見つけ出し、サマリーをして、経営層に対して臆せず意見を出せというわけです。私自身の志向にも合致するもので、やりがいは大きかった。何より、企業のガバナンスはいかにあるべきかを学ばせてもらいました。
カルビーの監査役は昨年に退任。「猫と日向ぼっこの生活ですよ」と石田は笑うが、現在は数社において経営アドバイザーを務め、変わらず精力的に動いている。また、ライフワーク的に臨むのは、日本CFO協会主任研究委員としての活動だ。石田は組織内会計士のフロントランナーとして得てきた経験と知見を生かし、CFOの育成に努めるとともに、その機能強化のための支援活動に注力している。
十数年前になりますが、日本CFO協会と新日本監査法人がスタートさせた「会計士出向プログラム」の制度づくりにかかわりました。現在は止まっちゃっているけれど、会計士を出向形態で事業会社に送るこの制度は、今も有効なプログラムだと思っています。プログラムに参加した人は、監査法人に戻ったり、そのまま事業会社に残ったりと各人各様だけれど、みんな生き生きと仕事をしていますよ。
もともとは、会計士が監査法人にしかいない現状を何とかしたいという問題意識から生まれたものでした。私が日本マクドナルドにいた頃は、事業会社で働く会計士は非常に稀でしたし、自分の海外経験からしても、それは異常なことに思えたのです。昨今は組織内会計士の数も増加傾向にあるけれど、欧米に比べるとまだまだ少数ですから、活動は続けていく必要があります。
バブル崩壊後、日本企業は必死になってグローバル化を進めてきたものの、激変する環境に対処しきれていないのが現状です。ことに、日本はいまだに間接部門の生産性が低く、私はかなりの危機感を持っています。これからを生き抜くには、企業価値を高める財務戦略の遂行が不可欠で、経理・財務部門とCFOは、今まで以上に間接部門の生産性の改善が求められますし、経営の戦略的意思決定のための重要な役割を果たさなければなりません。
こういった背景からも、会計士の職域は一般的に考えられているより、うんと広く、深いということを知ってほしいですね。枠組みの中に自分を押さえ込まず、一歩踏み出せば、いろんなことにチャレンジできるということを。また、それ以前に受験生の減少という大問題にも手を打たなければなりません。この状況についても、私はかなりの危機感を持っていて、会計士という職業がいかに魅力的であるかをもっとPRしないとまずいですよ。10年後に合格者を何人にするかじゃなく、受験生をどこまでどう増やしていくか。長期の人的投資活動としてプランを立てるべきだと思います。と、いろいろと口を出すのが、今の私の役割であり、責任でもあるので、今しばらく頑張らないといけませんね。
石田正公認会計士事務所石田 正