会計士の肖像
仰星監査法人
理事長南 成人
中小規模の監査法人にとって、品質管理のレベルやコストを単体で維持するのはなかなか厳しい。業界で相次ぐ合併がそれを示しているが、寡占化ばかりが進み、特色を生かそうとする監査法人が生き残れないのもまた問題である。ここに危機感を持ち、南は一貫して中小の監査法人を支援する立場を貫いてきた。日本公認会計士協会への貢献、また、09年には自身で「SAT-PJ(Standardization of Audit Tools Project)」を立ち上げるなど、南は常に積極的に行動している。
いわゆる準大手というカテゴリーができたのは16年なので、それ以前は、大手以外はみな“中小”として一括り。極論すれば、ひっくるめて監査の品質管理が劣ると見られていました。例えば、大手監査法人には提携した国際会計事務所からの監査メソドロジーの提供があるけれど、中小にはなく、自分たちで開発・対応していかなければならない。ただ、これを単体で頑張るには、人的にも資金的にも限界がある。そこで僕は、中小全体の底上げを図ろうとSAT-PJを立ち上げたのです。中小の監査法人を回りながら「監査のメソドロジー、ツールを一緒に開発しましょう」と呼びかけまして。この時に集まったのは7法人、志を同じくする仲間です。
協会の活動はSAT以前から始めていて、すでに監査基準委員会報告書づくりやツール開発には携わっていたんです。内部統制の評価・監査が入ってきた時や、国際監査基準が全面改定されることになった時にも支援ツールの開発に尽力しました。加えて、専門学校で授業をするために、監査の最前線と動向については死ぬほど勉強しているわけで(笑)、いろんな活動がうまくリンクした感じですね。
メンバーの入れ替わりはありつつ、SATは今も続いています。先頃、協会から発行された『財務諸表監査・内部統制監査の手引』はすでに第3版になりますが、この“元ネタ”はSATが提供したもの。大手監査法人は別として、上場会社の監査をしているほとんどの中小監査法人がこれを使っていると聞きます。やはり、「自分たちだけ」と単体で頑張っていても世界は広がらない。我々全体が力を携え、社会に貢献していくという活動は意義があると思うし、これからも力を注ぎたいと考えています。
仰星の理事長に就いて4年目。現在はマネジメント業務4割、監査業務と協会の活動がともに3割という按分で、南の日常は変わらずフル回転だ。当面は1000名規模を目指し、「創造的なプロフェッショナル集団」として独自の存在理由を持つ監査法人へと成長させることをミッションとしている。
ずっと標榜しているのは「最大ではなく、最強を目指す」です。端的に言えば、規模より質。志向しているのは品質の保持、財務的な安定性、組織カルチャーという3軸でのバランスが取れた成長で、なかでも、最も太い軸に据えているのは組織カルチャーです。新人であろうとベテランであろうと、個々が高い当事者意識を持ち、全体としてはオープンな風土がある。そしてもう一つ。先述したように、業務のメソドロジーを自ら開発するという創造的な仕事にも取り組む。これらが、僕の考える強い組織のカルチャーで、“仰星イズム”の源泉でもあります。
いたずらな規模拡大ではなく、もっと質を高める意味において、当面は1000人規模にまでもっていきたいと考えています。人材やITへの投資、海外展開を視野に入れて考えると、これぐらいの陣容が必要じゃないかと。いずれも組織体力が求められますからね。ただ、規模の拡大には悩ましい部分もあって、大切にしているカルチャーが埋没するようなことは避けたい。もとより“最強”を目指しているわけで、サラリーマン的な組織にはしたくありません。この点は、僕が責任を持って牽引すべきことだと考えています。
会計士の仕事って、ドクターのようなもの。僕は若い頃からずっとそう思ってきました。会社でいう血液とはお金の流れであり、僕らはその流れを見て「ここ、詰まっていますよ」と指摘したり、必要であれば治療したりできる。診断だけに終わらず、改善するためのアドバイスを提供しながら、一緒に成長していく……これこそがやりがいです。しかも、会計士の場合は一時的にではなく、対象の会社とは通年かかわり、支援し続けられるのだから、こんなにいい仕事はないと思いますね。
そして、資本主義社会において、中立の立場にある会計士の存在価値は決して変わりません。昨今の監査業務は、立証責任を果たすという意味で文書化の量が増えて厳しいものになっている。一方ではデジタル化が進むなど、まさに過渡期にあります。でも、会計のプロフェッションとして判断業務に時間を割くという本来の姿にいずれ収束するでしょうから、次代を担う人たちには、誇りを持って活躍してほしいと願っています。
仰星監査法人理事長南 成人
その他役職
・ 一般財団法人会計研修機構 理事
・ 株式会社ファンペップ 監査役
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