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Accountant's magazine vol.62

-アカウンタンツマガジン-
2021年07月01日発行

会計プロフェッションによるコラム「Accountant's Opinion」

「「意見不表明」は、監査法人や市場への不信を増幅しかねない」

大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

最近、上場会社の決算で、監査意見不表明になる事例が散見されており、監査の信頼性に一抹の不安を感じている。本来は、無限定の適正意見付きの財務諸表が公表されることで市場の信頼を確保し、投資家の利益を守る点に監査の使命があるからである。

確かに、「ハイアス・アンド・カンパニー」(2016年の上場来、20年4月期3Qの全期間)、「理研ビタミン」(2016年3月期~21年3月期2Q)、「ジャパンディスプレイ」(2014年3月期)、「ブロードメディア」(2018年3月期3Q)、「東芝」(2017年3月期3Q)、「ウェッジホールディングス」(2020年9月期~21年9月期2Q)といった企業の財務諸表に対して、この“意見不表明”の烙印が押されている。

仮に監査の結果、重要な点で「決算数字がおかしい」と判断された場合には、監査法人からの“適正意見”はもらえず、“限定付適正意見”もしくは“不適正意見”が表明されることになる。そうしたメカニズムによって、財務諸表の投資判断における有用性は、担保されているのである。

一方、問題の“意見不表明”とは何か? 監査基準の規定には、「監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、自己の意見を形成するに足る基礎を得られないときは、意見を表明してはならない」(監査基準・第四報告基準 一 基本原則の4)とある。何らかの理由で重要な監査手続が実施できない、あるいは監査の範囲が制約されたために、意見を裏づける十分な証拠が得られない場合などに、やむをえず「財務諸表の適否を判断できない」ということで意見不表明とするのである。

では上記の事例は、具体的に何を理由としたものだったのか?

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大原大学院大学 会計研究科 教授 青山学院大学 名誉教授  博士(プロフェッショナル会計学) 八田 進二

大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。

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