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Accountant's magazine vol.6

-アカウンタンツマガジン-
2011年06月01日発行

会計士の肖像

「私たちは会社や業界ではなく、社会に就職している。だからこそ、自己を磨き続けなければならない」

プライスウォーターハウスクーパース株式会社
代表取締役社長内田 士郎

葛藤の末に見えた道。「海外で活躍できる会計士になろう」

学院3年の頃から、内田は友人たちとビジネスを始めている。原宿辺りを中心に、輸入雑貨やアクセサリーなどを売る露天商ビジネスだ。最初はアルバイト感覚だったが、持ち前の仕切りの巧さ、アイデア力が仕事を大きくしていった。販売網は地方にも広がり、月に40万、50万円と売り上げる。学生時代から車を持ち、「小遣いに困ったことはない」。が、時が経つうちに、どんなに稼いでも、遊び半分でやっている自分に充足を感じられなくなった。

ここで出会う多くの人たちは、人生を懸けて取り組んでいるわけですよ。もっと稼ぎたい、いつか自分の店を持つと、真剣に未来を切り開こうとしている。僕のような学生のお遊びとは意気込みが違うんです。それがわかってくると、お金は持っていても、結局何も極められない自分に虚しさを覚えるようになりました。

一方で、僕が本気で自分と向き合うようになった直接的なきっかけは、親友を海で亡くしたこと。74年9月8日。丸山鉄雄君ともう一人、3人で伊豆下田へサーフィンに出かけたのです。台風一過の見事な晴天で、絶好の波乗り日和に思えました。だけど台風が去った後の波は意外と高い。それなのに「ビッグウェーブだ!」と勢い込んで海に出て、僕らは大波に飲まれてしまった。結果、丸山君だけを失ったのです。自分たちの無謀さが引き起こした、堪えがたい痛恨事でした。

さらにその後、今度は別の友人と遭った交通事故です。タイヤを滑らせてガードレールに突っ込んだ大きな事故で、運転していた友人は3カ月の重傷。なのに、後部座席に座っていた僕は無傷。これはもう、天からのメッセージだと思いました。「今の生き方でいいのか」という僕への問いかけ。商売ばかりで大学へはろくに行かない、昼前に起きたことがない生活。人間、放っておけば安易で楽しい道を選びがちですが、この時の僕は、それが凶事を呼んでいるのだと。ストイックになって、葛藤する日々が続きました。

目前の霧はなかなか晴れなかったが、就職を意識する時期になって、内田はようやく道標を得る。公認会計士の資格取得を目指す――「まともに机に向かったこともなかった」内田にとって、それは初めて直面した難関だった。約3年間の苦しい試験勉強を支えたのは、最後まで絶対に諦めないと決めた強い信念と、「亡くなった丸山の分まで精一杯生きる」という思いだ。

海外への憧れがずっと心にあったので、商社に就職したかったのです。1年間、日米会話学院に通ってある程度の英語力は身につけていましたし。でも、大学の成績が悪い。成績重視の大手企業には相手にもされません。気がつけば、周りは一流企業にどんどん就職が決まっている。何となく周囲の態度が“上から目線”になって、悔しかったですね。どうやって、この周回遅れを取り戻すか……。そんな時に思い出したのが、たまたま出た会計学の授業で聞いた先生の言葉でした。「米国の会計士はビーン・カウンター(豆の数を数える人)ではなくビジネスアドバイザーだ。米国のビジネス社会で活躍している人には、会計士の資格を持っているケースが多い」。将来はビジネスリーダーになりたいという僕の志向と合っていたし、誇れる自分の土台を得るためにも、会計士を目指すことにしたのです。

4年の夏から専門学校に通い、ゼロからスタートです。簿記検定1級と税理士試験の会計2科目は、そう時間をかけずに受かったので、「会計士もいけるな」とその気になったんですが、そんな甘い話はなく、79年の初挑戦は失敗。再度、一念発起し、それからの1年間はすべてをかけて勉強に打ち込みました。露天商の仕事からは完全に手を引き、日々、10時間以上机に向かう苦行のような生活。人生で一番勉強した時代です。翌80年、第二次試験に合格できたことは、それまで破天荒に生きてきた僕に、本当の意味での自信を与えてくれました。苦痛の日々だったけれど、やっと人生の新しい出発点に立ったという感じですね。

Profile

プライスウォーターハウスクーパース株式会社 代表取締役社長 内田 士郎

プライスウォーターハウスクーパース株式会社代表取締役社長内田 士郎

1955年4月2日
東京都渋谷区生まれ
1978年3月
早稲田大学政治経済学部卒業
1980年10月
公認会計士第二次試験合格
ピートマーウィックミッチェル会計士事務所 東京事務所入社
1984年3月
公認会計士登録
1986年10月
KPMG Peat Marwick LLP, Partner
米国カリフォルニア州サンノゼ事務所入社
1993年1月
PricewaterhouseCoopers LLP, Managing Partner
米国シカゴ事務所勤務 米国日本企業部統括責任者に就任
1999年10月
PwCコンサルティング株式会社取締役 常務執行役員
S&E(Service & Energy)事業本部長に就任
2002年10月
IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社
取締役流通事業本部長兼 日本IBM株式会社
流通サービス事業部長に就任
2005年10月
ベリングポイント株式会社 代表取締役社長に就任
2009年5月
ベリングポイントのPwCネットワーク加入、社名変更に伴い、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント株式会社代表取締役社長に就任
2010年1月
PwCアドバイザリー株式会社、ほか1社との経営統合および社名変更を経て、プライスウォーターハウスクーパース株式会社代表取締役社長に就任

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