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Accountant's magazine vol.50

-アカウンタンツマガジン-
2018年10月01日発行

会計士の肖像

「「自分は誠実に仕事をしているか?」自問自答すれば、足りない部分も見えてくる。それをやり切るのが 僕の言う"プロ"なのです」

青山学院大学 名誉教授 大原大学院大学 会計研究科 教授
博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

苦労の末、専任に。学会での活動で存在感を高める

82年、慶應の博士課程を終えた八田だったが、すんなり専任のポストに就けたわけではなかった。いくつかの大学で非常勤からの“昇格”に挑戦するものの、実を結ばない。そんな状況下、就職先を斡旋する電話をかけてきたのは、財務会計の重鎮、飯野利夫氏(一橋大学、中央大学、駿河台大学名誉教授)だった。こうして、87年、富山女子短期大学に助教授として迎えられる。

飯野先生との出会いは、アメリカでした。81年、ドクター3年の時に、会計学で有名な米国イリノイ大学に自費で短期留学したのです。そこに、たまたま当時中央大にいた先生が、1年間の在外研究で来ていた。毎日図書館で顔を合わせているうち、昼飯を食べに行く間柄になって。「君は偉いね。大学の教員なんか、こっちに来ても遊んでばかりだよ」とおっしゃってました。

富山には、東京から飛行機で通うことが多かったです。1回だけ、寝坊して富山便に乗り遅れたことがありました。石川の小松空港ならすぐ便があるというので飛び乗ったのですが、小松から富山って、結構距離がある(笑)。ようやく間に合った授業で、「今日の授業料は高いですよ。タクシー代が3万かかりました」って話したら、みんな「私たちのために、そこまで」という感激の面持ち。こちらの責任なのに(笑)。ただ、どんな話をしようとも、学生を授業に惹きつけ、多くのことを吸収してもらうことは教師冥利に尽きます。実際、私が赴任したとたん、簿記検定の合格率がそれまでの倍ぐらいにアップしたんですよ。

人生にも“運”があるのだろう。富山に職を得て1年が経たないうちに、「2年後にできる大学に来てほしい」という話が舞い込む。受諾した八田は、90年、駿河台大学経済学部経営情報学科に助教授として赴任。94年には同科の教授となり、さらに96年、新設された大学院の教授に。大学での研究・教育にとどまらず“対外活動”で注目されるようになったのも、この頃だ。

96年の夏から翌年にかけて、大学の制度を使って、アメリカに半年間の在外研究に行きました。僕の中には、「日本の経済や会計のあり方を考察するうえで、アメリカの経験知から学ぶことは少なくない」という問題意識が、以前からあったからです。

帰国後書いたのが、「米国の会計士業界は、コマーシャリズムの方向に流されつつある」という内容の論文です。そうしたら、それが99年に日本会計研 究学会の学会賞を受賞した。ちなみに、2001年にあの「エンロン事件」が起きて“警告”は的中するのですが。

当時は、実務上の課題をベースに制度改革を企てる研究者がいるらしいと、かなり異端視されました。僕自身、考察するだけでなく、変えるべきものは変えなければいけないと決意して、特に会計研究学会や監査研究学会などの学会での仕事に、真剣に取り組むようにしました。

学会では、どんなに偉い先生相手でも、言うべきことを言います。日下部先生が亡くなって以降、直系の指導教授という存在がいなかったし、学閥みたいなものに縛られることもない。いろいろ“回り道”した結果、誰の顔色を窺う必要もないポジションにいられたのは、大きかったですね。ともあれ、そんなふうに改革を目指す姿勢を大学も認めて、00年には学長補佐的な仕事をする教務部長に抜擢されました。そうしたら、同じ年の夏に、また一本の電話がかかってきた。相手は、青山学院大学の先生で、「来年監査論の専任教諭を採るから、応募してほしい」と。

来る時は来るもので、その話と相前後して、今度は金融庁から「来年度の公認会計士二次試験の監査論の試験委員をやってもらいたい」という連絡がありました。「えっ」と思いました。実は、一番やりたい仕事だったから。金融庁が、曲がりなりにも僕のことを監査論のプロパーだって認めてくれたことに対して、素直に嬉しく思いました。

Profile

青山学院大学 名誉教授 大原大学院大学 会計研究科 教授  博士(プロフェッショナル会計学) 八田 進二

青山学院大学 名誉教授 大原大学院大学 会計研究科 教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

1949年8月3日
名古屋市千種区生まれ
1973年3月
慶應義塾大学経済学部卒業
1974年9月
公認会計士第二次試験合格
1974年10月
須藤公認会計士事務所勤務
(~1978年5月)
1975年10月
監査法人中央会計事務所勤務
(~1986年12月)
1976年3月
早稲田大学大学院
商学研究科修士課程修了
1982年3月
慶應義塾大学大学院
商学研究科博士課程単位取得
1987年4月
富山女子短期大学
商経学科助教授
1990年4月
駿河台大学経済学部
経営情報学科助教授
1996年4月
同大学大学院
経済学研究科教授
2001年4月
青山学院大学経営学部
経営学科教授
2005年4月
同大学大学院
会計プロフェッション研究科教授
2011年4月
同大学大学院
会計プロフェッション研究科長
2018年4月
青山学院大学 名誉教授
大原大学院大学 会計研究科教授

[専門家としての過去の対外活動]

日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、会計大学院協会理事長、金融庁・企業会計審議会委員(内部統制部会長)などを歴任。株式会社日本政策投資銀行、理想科学工業株式会社、日本航空株式会社の社外監査役、独立行政法人経済産業研究所、学校法人聖路加国際大学、東京アマチュア・マジシャンズ・クラブの監事などを兼務。

主な受賞

日本会計研究学会学会賞(1999年)、日本内部監査協会・青木賞(2001年)、日本監査研究学会・監査研究奨 励賞(2010年)、会計大学院協会・会計教育貢献者賞(2015年)、日本会計教育学会・学会賞(2015年)、日本内部監査協会・功労賞(2017年)ほか多数。

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