会計士の肖像
渡辺公認会計士事務所/税理士法人優和
渡辺 俊之
2004年、会計士協会理事を任期満了で退任したのと前後して、渡辺は監査業務のウエイトを高めながら、独立直後と同じ税務・監査兼業へ傾斜していく。そこには多様な税務知識と、監査で得た幅広い知識、経験が上乗せされていた。同じ年、税理士法人制度のスタートという流れに乗って「税理士法人優和」を設立、理事長に就いた。
私たちの税理士法人は、会計士共同事務所と同じように、各地の事務所が統合するかたちで設立されました。現在は、東京,京都、茨城、埼玉の4拠点体制で運営しています。
全国展開していると、大きくなった会社の業務を連結納税などで分担することもできる。各拠点の成功例、失敗例といった生の情報を共有できるのもメリットだと感じます。それぞれの事務所によって経営のスタンスは違うので、無理やり文化を統一しようといった考えは、毛頭ありません。幸い今はネットやスカイプという武器がありますから、それを活用して月1回のテレビ会議や統一Web研修会をやったり、年に2回は幹部が顔を突き合わせて懇親を深めているんですよ。
今現在の私の業務比率を労働時間で考えてみると、監査が3割、税務4割、企業などのコンサルティングが2割、といったところでしょうか。残りは、行政監査と社外監査役の仕事に費やしています。行政監査というのは、具体的には港区の包括外部監査人です。区の清掃事業などについて公会計の立場から監査を行い、効率化に向けた提言を行うわけですね。従来メスの入りにくかった分野に切り込むわけですが、それだけに、世間にインパクトを与えることができる。これもほかにない面白い仕事です。
また、社外監査役としては、1部、2部上場会社を数社担当しています。ここでは、やはり座学ではわからない経営の意思決定過程や、巨大組織への浸透方法等、コーポレートガバナンスの現実に触れられるのが醍醐味です。いったい企業経営者はどうやって企業統治を行おうとしているのか?そもそも理想のガバナンスとは、どういうものなのか?こうしてあらためて見つめ直してみると、我ながらよくやるなあ、とは思いますね。仕事量は50代の頃と比べ、実感として変わっていないし、最近、自分の確定申告の数字を45年分エクセルでグラフ化したら、“数字的”に、60歳代以降も、まったく落ちていなかった。
大学の仲間で一流企業に行った人たちで社長になった人も、60代後半にリタイアして悠々自適の人生を送っています。年に何十日も海外旅行に行っているなんていう話を聞くと、羨ましくもありますね。でも当面、私には無理でしょうね。70歳を超えても現役でいられることを、素直に感謝したいと思います。今が楽しいんですから。
最初にも話したけれど、大学時代の成績がもう少しよかったら、私は今ここにはいないでしょう。そうじゃなくて幸運だったな、だからこそ会計士になれたんだ、とつくづく思います。半世紀も昔のことに負け惜しみを言っても仕方ない、これは本心ですよ(笑)
『下り坂会計士のマルチ人生』。渡辺自らのブログのタイトルだ。“下り坂”かどうかは置くとして、どこまでも多彩に、複眼的に生きようという意志が、そこには込められているのだろう。今目指しているのが、「遊びを仕事にすること」。どうやらこれも、ただの言葉の遊びではないようだ。
私の昔からの将来的課題は、「遊びながら仕事をし、仕事をしながら遊ぶ」なんですよ。仕事一筋ではつまらないし、長続きもしないでしょう。週末ともなれば女房と一緒にあちこち旅行したりするし、海外スキーも続けています。ただ、いかんせん現役なので、実に忙しい。仕事か遊びかどちらかを我慢すれば、生活にずいぶんゆとりが生まれるとは思うのだけど(笑)。そこで考えたのが、遊びを仕事にすればいいじゃないか、ということです。
私は15年ほど前に沖縄の唄三線に出会って、すっかりハマってしまった。恥ずかしながら会計士協会の音楽祭にも出ました。弾き語りの合間に「沖縄の経済特区に会社をつくろう」なんてお遊びの講演をするわけです。そんなことをやっているうちに、沖縄でのクライアントもできました。
スキーも趣味で、つい最近も4年連続で、1週間ほど休みを取って、昔からの仲間たちとフランスのトゥロワバレーやら、マッターホルンを踏破したんですよ。山岳地帯を一日60㎞以上、滑って越えていくのです。そんななかでも、パソコンがあればスカイプで秘書と直接やり取りできる。休暇中の海外からテレビ会議に出席することも珍しくありません。部下たちは嫌がっていますけどね(笑)。そういうふうに、仕事も遊びも渾然一体、前向きに楽しむわけです。
若い人たちに一言、ですか?啓発し合える仲間を持つこと、そして「俺はこの仕事はやらない」というのではなくて、何にでもチャレンジしてほしい、ということでしょうか。
私の座右の銘は、「未見の我」です。人はみな、自らの能力に気づかず生きているんです。今までとは違う新たな大地に立った時、初めて「まだ見ぬ自分」と出会うことができるんですね。
※本文中敬称略
渡辺公認会計士事務所/税理士法人優和渡辺 俊之
[業界活動など] 日本公認会計士協会常務理事、自動車リサイクル法:資金管理業務諮問委員会・委員、前田建設工業株式会社・社外監査役、港区包括外部監査人、公益財団法人ニッセイ文化振興財団(日生劇場)監事、一般社団法人全国清涼飲料工業会監事、公認会計士稲門会会長ほか多数
[主な編著書] 『伸びる会社のズルいお金の使い方』(幻冬舎)、『加除式 一般・公益社団・財団法人の実務-法務・会計・税務-』(新日本法規出版)、『加除式不動産有効活用の実務と対策』(第一法規出版)、『Q&A公益法人の運営と会計・税務』(新日本法規出版)、『Q&A中間法人の設立・運営の実務』(新日本法規出版)ほか多数