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現場で働く会計士の声

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Accountant's magazine vol.36

-アカウンタンツマガジン-
2016年06月01日発行

会計士の肖像

「「面白そうだ」との直感を信じ、様々な挑戦をし続けてきた。「好奇心+会計」のベースが引き寄せてくれた充実人生」

渡辺公認会計士事務所/税理士法人優和
渡辺 俊之

勃興期の監査法人へ。「教科書」と違う現実を学ぶ

71年4月、渡辺は監査法人千代田事務所(後の中央青山監査法人)に入所する。上場企業の組織的監査を目的とした監査法人制度自体、4年前の67年にできたばかり。そんな時代だった。

事務所を設立した7人の会計士が、それぞれ6、7社のクライアントを抱えて飛び回っていました。新入りはその補助をするわけですが、とにかく実務を覚えるのに無我夢中で、「自分たちが新しい時代の監査を担うんだ」などと肩に力を入れる余裕はゼロ。でも、見ること聞くことすべてが新鮮で、仕事は楽しかったですよ。

特に教科書で習ったことが現場で生のデータとして見られるのは、面白かった。「標準直接原価計算」なんていうのが、実務として目の前で行われているのに遭遇すると、感動的でさえありました。

同時に、「教科書との違い」も痛感させられましたね。例えば間接費の配賦について、教科書的にはわりとさらりと触れられているだけなのに、企業によっては、ものすごいボリュームの書類を用意するわけですね。ここにこんなに労力や時間をかけるのは無駄ではないか、と思えるほど。しかしそうではなくて、それこそが経営に必要なデータなのだということがわかってきたのは、それなりに経験を積んでからのことです。

とにかく、世の中には多種多様な“生きた”会計事象があるのだということが、監査の仕事を通じてよく理解できましたよ。その一つひとつについて、先輩たちに交じって真剣に論議もしました。クライアントの経理や財務などにも、当時の私などよりはるかに知識と経験を持った人が数多くいて、逆に勉強もさせてもらいました。そうやって、徐々に会計士としての考え方の基礎を身につけていったわけです。

とはいえ、できたての監査法人の忙しさは、想像を超えていた。実は渡辺は、入所翌年に結婚する。休みをもらってハワイに新婚旅行に出かけたまでは、よかったのだが……。

帰国して新聞を広げて、びっくり。クライアントだったある企業が倒産したのみならず、決算に不正があったのではないか、と取りざたされる事態になっていたんですよ。携帯端末で、どこでもニュースが見られるような時代じゃないですからね、戻ってきたらいきなり天国から地獄です。

翌週からは新婚生活どころか、連日の“午前様”状態。膨大な会計資料をひっくり返して、不正の痕跡を洗うわけです。どうやら悪さを働いたのも会計士資格を持つ経理部長だったらしく、簿外の手形の振り出しだとかの手口が巧妙で、それは大変な作業だったことを記憶しています。まあ、地検特捜部みたいな仕事は、私自身にとってはエキサイティングでもあったのですが、当然のごとく妻には大いに呆れられました。

当時の仕事で印象に残るものといえば、建設現場の実査・立会にも驚きましたね。建築途中の建物に上って、内部を検証するわけですけど、足がすくむような高さ。ここから落ちたらどうするんだ、と(笑)。

ただ、そんな経験もしながら「現場に行くことの大切さ」を体に染みこませることができたのも、あの時代に得た大きな収穫でした。建設現場にしろ棚卸にしろ、実際に足を運んでヒアリングすることによって、帳簿だけではわからない部分が見えてくる。あちこち現場を見ることによって、「この会計事象にはこのあたりに問題がありそうだ」とイメージできるようになるのです。そこが会計士にとって大事なポイントでもあるし、強みにもなる。この信念は、今も変わりません。

私は今でも、森林を実査するために、ヘルメットに長靴で道なき道を分け入ったりするんですよ。歳を考えて、危険なことからはそろそろ引退しないといけない、とも思うのだけどね。

Profile

渡辺公認会計士事務所/税理士法人優和 渡辺 俊之

渡辺公認会計士事務所/税理士法人優和渡辺 俊之

1944年11月30日
埼玉県行田市生まれ
1968年3月
早稲田大学第一商学部卒業
1970年10月
公認会計士第二次試験合格
1971年4月
監査法人千代田事務所(後の中央青山監査法人)入所
1974年8月
公認会計士登録
1975年4月
渡辺公認会計士事務所設立
1984年2月
優和公認会計士共同事務所(現優和会計人グループ)設立
2004年4月
税理士法人優和設立

[業界活動など]
日本公認会計士協会常務理事、自動車リサイクル法:資金管理業務諮問委員会・委員、前田建設工業株式会社・社外監査役、港区包括外部監査人、公益財団法人ニッセイ文化振興財団(日生劇場)監事、一般社団法人全国清涼飲料工業会監事、公認会計士稲門会会長ほか多数

[主な編著書]
『伸びる会社のズルいお金の使い方』(幻冬舎)、『加除式 一般・公益社団・財団法人の実務-法務・会計・税務-』(新日本法規出版)、『加除式不動産有効活用の実務と対策』(第一法規出版)、『Q&A公益法人の運営と会計・税務』(新日本法規出版)、『Q&A中間法人の設立・運営の実務』(新日本法規出版)ほか多数

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