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Accountant's magazine vol.15

-アカウンタンツマガジン-
2012年12月01日発行

会計士の肖像

「我々は、独占的な資格を与えられているのだから、それに恥じない仕事をすべき。常に矜持を正しながら―」

東日本税理士法人
病院経営アドバイザー長 隆

病院改革仕掛け人として、会計人として。闘い続ける日々

地方自治体が運営する公立病院の多くは、人口の減少や医師不足によって、長らく厳しい経営環境にさらされている。その状況を改善するために、総務省が設定しているのが「地方公営企業等経営アドバイザー制度」だ。長が、初の同アドバイザーに任命されたのは95年。以降、2006年までこの公職を務めた。日本全国、要請があれば現場に赴き、利害抜きで経営改革、再生案件に取り組む。それら奮闘を通じて、長の名は広く知られるところとなった。

全国の公立病院の6割以上が、税金などの資金を投資してもなお赤字経営が続くという時代で、案件は続々と寄せられてきました。しばらく、アドバイザーは僕だけだったから、文字通り全国行脚です。総務省の課長補佐や係長と、安いビジネスホテルに泊まりながらね。ちなみに、日当は7000円でした。このアドバイザーの仕事で、確かに僕の知名度は上がったし、公立病院に限らずお客さんは増えたんだけど、公職にあるから、ほとんどお金は取れなかったですねぇ(笑)。

まずは、要請のあった公立病院の財務状況や運営状態を調査し、識者や関係者で構成した経営改革委員会を設置する。総務者としては、赤字の病院と自治体を切り離し、自立を求めるのが基本方針なので、そこから、公設民営化、民間譲渡、あるいは医科大付属化などといった、生き残りの道を模索していくわけですが、決してスムーズに運ぶ話ばかりではありません。地域医療は国が責任を持つべきだと、異を唱えられるケースも多い。それでも、問題点が明確で、そこに“お役所”的な甘えがあれば、僕は厳しい提言をします。時には、市長に向かって「あんた辞めなさいよ」なんてやるもんだから嫌われることもある。でも、僕は誰の味方でもなく、”国民目線“でおかしいと思うことには、もの申すだけのこと。それが闘いであっても、結果、苦境にあった病院がいいかたちで再生するのを見るのは、実に嬉しいものです。

アドバイザーとして走り続けていたこの時期、長は、自身が「最大の闘いだった」と振り返る事件に見舞われている。01年、群馬県の地方紙、上毛新聞社の佐鳥達雄元社長らが、特別背任容疑で逮捕された事件だ。この時、上毛新聞社と顧問契約を結んでいたのが長である。この事件にからみ、長は、上毛新聞社から6億円の損害賠償を求められるという事態となった。

佐鳥元社長が実質的に経営していた不動産会社が、大投資をしてリゾートマンションを開発したものの、バブル崩壊で販売不振に陥って、結果、会社の金を95億円使い込んだという話。大王製紙と酷似した事件ですよ。僕がオーナーに依頼されて、監査に入ったのは逮捕前。調べてみたら、これは明らかに特別背任でした。僕は、佐鳥家のご家族に集まってもらって、きつかったけれど、「明日、特別背任として意見を発表します」と。お子さんたちに泣かれて……胸が締めつけられた。でもね、時に会計士には、依頼人であっても告発をしなくてはならないような、つらい場面もあるということです。

その後、僕は上毛新聞社から筋違いな損害賠償請求を受け、7年間、裁判で争ったんですよ。相手側の訴えはこうです。95億円のうち半分は、特別背任を指摘して正当な注意を払ったが、残りは見つけられなかった――実は、元社長が多額の小切手を使って裏保証をしていたのですが、それを報告しなったという点で、虚偽報告だと。僕はそれを知り得なかったし、身に覚えのないことです。損害賠償請求額が6億円でしょ。負けたら、破産するしかない。実際、「5000万円で和解しなさいよ」と言う弁護士もいたけれど、それでも僕は、全面的に争うと決めたのです。

5年前、やっと最終判決が出たのですが、完全勝訴でした。判決文にあった言葉は「荒唐無稽な原告の主張である」。マスコミやネット上で、ずいぶん誹謗もされましたが、堂々と闘えることは闘うべきです。弁護士もそうですが、我々会計士も独占的な資格を与えられているわけでしょ。だからこそ、それに応えるような仕事をしなければならない。報酬や立場にとらわれず、矜持を忘れないでいたいものです。

Profile

東日本税理士法人 病院経営アドバイザー 長 隆

東日本税理士法人病院経営アドバイザー長 隆

1941年3月14日
静岡県下田市生まれ
1958年4月
大正製薬株式会社入社
1964年3月
早稲田大学第二政治経済学部卒業
1967年3月
税理士試験合格
1971年9月
公認会計士第二次試験合格
1971年10月
監査法人太田哲三事務所(現新日本有限責任監査法人)入所
1975年1月
公認会計士登録
1976年7月
公認会計士長隆事務所開設
2002年4月
税理士業務部門を法人化し、名称を東日本税理士法人に

[主な委員など委嘱]
内閣府・行政刷新会議分科会評価者(2009年11月~11年11月)、総務省・公立病院改革懇親会座長(2007年7月~08年3月)、総務省・地方公営企業等経営アドバイザー(1995年~2006年)、総務省自治体病院経営改善推進研究会座長、ほか20を超える自治体病院改革関連の委員長・委員、大学の非常勤講師などを歴任

[主な共著書]
『高齢者ケア施設 開設ガイドライン』(中央経済社)、『医療法人のための税務調査対策(第3版)』(中央経済社)、『Q&A特定医療法人のすべて(第3版)』(中央経済社)、『Q&A病院再建と民事再生法』(中央経済社)、『Q&A医療法人の経営と税務(第3版)』(中央経済社)、『地方公営企業会計の基礎』(中央経済社)、『高齢者ケア施設マニュアル』(ダイアモンド社)など多数

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