会計士の肖像
税理士法人レガシィ
代表社員天野 隆
財産管理において、堅調に経験とノウハウを蓄積してきた天野たちだが、90年以降は、バブル崩壊の影響をもろに受け、譲渡関連の案件数は減少の一途をたどるようになる。この頃から、天野は事業の軸足を「相続」に移していくのだが、きっかけとなったのは、ひとつの案件だった。
広大な土地を所有する資産家が他界されたのですが、遺言は「自分が住む街の子供たちに森を残したい」というものでした。当然、ご遺族が相続できなくなるので却下されることを承知で、我々はその土地をすべて財団に寄付することを提案したのです。「父の願いがかなうなら」と喜んでくださったご遺族も立派ですし、有形・無形かかわらず、優れた価値や思いを後世に遺す相続の仕事は素晴らしいなぁと。これが原点です。
もちろん、なかには兄弟姉妹間で争いになるケースもあります。最近感じるんですけど、全部うまくいく場合って、天国の人が応援してくれる時なんですよ。亡くなった方にしてみれば、遺族がもめることは当然望んでいない。解決に向けて立ち返るべきは、「故人がどういう人だったか」「何に重きを置いていたか」。それを、事案ごとに一生懸命考える。そして、故人の遺志に近づけるような提案をすると、大体うまくいくし、関係者にも喜んでいただける結果が増える。これも「終着駅からメソッド」の成果のひとつです。
相続税の申告等件数は、おかげさまでトップクラス。じゃあ事業が常に順調かといえば、日々が戦いという感じですよ。相続って毎年売り上げる仕事で、継続業務ではないでしょ。昨年は単年で390件を受注しましたが、それらははじめから受注保証されているわけではないのです。いつも新しい出会い。紹介者あってのおかげなのです。だから我々は、紹介者のためにとことん尽くす。例えば建設会社だったら、彼らの受注につながるよう「相続専門のレガシィ」としてあらゆる側面支援をする。それを続けていると、相続が発生した時に「いい人がいますよ」と、今度は紹介してくださる。先行投資型で、常に新しいチャネルを開拓するという営業スタイルは変わっていません。遠い昔、小学生の頃、登校途中に街灯を消しながら歩いていた感覚に似ていますねぇ(笑)。きっと、どこかで誰かが見てくれていると。
CIを実施したのは2008年。かつて天野の父親が開業した税理士事務所も、自ら起こした会社も称号変更を経てきたが、ここで「レガシィ」として一本化、再誕した。先人の大切な“財産”や“思い”を承継するサポートを担う相続専門の総合コンサルティンググループ。その特異性に立ち、業界オンリーワンへの道を目指す。
「レベルアップではなく、グレードアップでしょ」。これは、子供が成長した後、経営参画した妻(専務取締役)に言われた言葉。実は“真髄”なんですよね。これまでも、いろいろな方からのアドバイスを受けてきましたが、この言葉が一番心に響きました。それからです、妻と二人で真剣に経営に取り組んでいったのは。オンリーワンの存在になりたいのです。個人住宅警備の8割のシェアを維持しているセコムさんがその見本。相続のことで、うちではなくほかの会社に依頼するケースがあった場合、「え?何でレガシィじゃないの?」と周囲から言ってもらえるような。それって、すごい存在感でしょう。技術には絶対の自信があります。あとは、その持てる力を理解していただく仕組みをつくっていくことが、僕の今の課題です。
振り返れば、浮き沈み、いろいろありました。行き着いたのは、環境が悪くなった時にこそ、人は自分と本気で向き合うし、気づきもあるということ。稲盛和夫さんの言葉に、人生は「考え方×熱意×能力」というものがあります。熱意と能力にはマイナスはないけれど、考え方にはプラスとマイナス両面ある。だから、考え方がマイナスだと、熱意と能力があればあるほど、結果マイナスは大きくなるという方程式です。ピンチになった時、それをチャンスと捉えられるか、船井幸雄さんが言うプラス発想になれるか、僕はそれが分水嶺だと思っています。先々、豊かな人生を送るためにも、若い人たちには、ぜひそうあってほしいですね。
※本文中敬称略
税理士法人レガシィ代表社員天野 隆