会計業界の起業人
辻・本郷税理士法人
理事長本郷 孔洋
顧問先1社からのスタートだった。
「顧問料は月2万円。でも、新規の開拓も営業の方法もわからないわけですよ。1カ月どこにも行くところがない。電話も鳴らない。そのうちスーツを着るのも面倒になって。こりゃまずい、と思い始めましたね」
そんな頃、監査法人時代の先輩が見かねて、顧問先を紹介してくれた。
「当時、ろくな仕事もしていなかった私にですよ。いやぁ、助かりました。逆に、この人は何かしてくれるかもしれない、とあてにしていた人はダメなものでね。説教はされても、何もしてくれない(笑)」
親切にすればお客さまは増える。先輩からはそんな助言を数多くもらった。まだ顧問先も少ないから、一つの仕事や顧客に接するための時間は十分にあった。本郷氏の若さと懸命さ、丁寧さは、やがて次々と紹介を呼び込むようになる。
「独立10年目には年間1億円を売り上げ、所員も20人くらいになっていました。ただ、昼夜を問わず忙しく働きながら思ったのは、50代、60代になって同じことはできないと」
山田淳一郎氏(現・税理士法人山田&パートナーズ名誉会長)など、当時の若手同業者たちと全国共同事務所計画などの夢を話し合い始めたのも、ちょうどこの頃。そして、その血気盛んな仲間との交流が本郷氏にさらなる転機を呼び込んだ。
「交流の中で資産税という、当時、未開拓の分野に出合うことができた。しかも、バブル景気の追い風が吹いてくれて、事務所のスタッフは13年目に100名を超えました。やはり時代の風を読み、波に乗るということが大切だと思いましたね」
そして、本郷氏の次なる大きな転機となったのが2002年。当時、所員約80名を擁していた辻会計事務所との合併だった。だが、組織の合併は簡単なことではない。人事交流やオペレーション変更なども含め、本格的な相乗効果が生まれ始めたのは、合併から3年後。それぞれに構えていた事務所を完全に統合してからだという。
「大きな組織には、大きな組織を動かせるだけのシステムが必要だということです。竹も節目がないと育たない。自分の人生を振り返っても、企業や社会を見ても、10年に1度は大きな節目がやってくる。だから私も、何かやるときは10年後にはどうするかな、というのを考えます。たとえば、うちでは地方にある7つの支部を35歳前後の若手に任せているのですが、経営に携わるようになると10年後のことを考えるようになる。皆、大きく成長してくれましたよ」
ところで、自らの成功の要因はどこにあったのか。率直に尋ねてみた。
「大きな魚がいる釣り場を見極めることです。そして、魚が釣れなくなったなと思ったら、漁場を変える。また、縁はお金じゃなくて人につくもの。だから、私は自分の価値観は持たないことにしているんです。年齢差も意識せず、いろいろな人の話を聞きに行って、いいなと思えばどんどんマネる。それが自分なりの成功哲学だと思っています」
辻・本郷税理士法人理事長本郷 孔洋
| vol.1の目次一覧 |
|---|