The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
tripla株式会社
取締役CFO岡 義人
ソフトバンク時代に膨らんだ「ベンチャーで働く」ことへの興味。「今度は大企業の後ろ盾がないところで力を試したい」と、ITサービスを手がけるベンチャーに転職した。岡氏のミッションは資金調達と管理体制の構築。ところが、入社当時の管理部門は派遣社員が1人だけ。
「それまで中心的な役割を果たしていた社員が突然退職し、管理部門は〝カオス〟状態に。あらゆる業務に奔走することになりました。派遣の方も辞めようとしていたので、7時間説得して引き留めたり(笑)。新たに採用した方もなかなか定着しなかったのですが、半年ほどしてチームが整った感触がありました。この時の経験から、〝半年あれば管理部門をつくれる〟という肌感覚が今もあります」
管理部門の整備に続いて、資金調達も成功させ、大きな達成感を得た岡氏。次なる目標を「IPOを達成する」と定めた。
「会計人として世の中のために役に立つ、それも大きなスケールで。となると、成果としてわかりやすいものがIPOだと考えたのです」
現職への転身は2020年6月。「確実に成長を続け、上場できるポテンシャルがある企業」と、自身も高く評価していたtriplaである。ホテル・旅館の自社サイト向けの宿泊予約エンジン「tripla Book」などを手がける企業だ。しかし、新型コロナウイルス感染症が世界を席巻していくさなかのこと。大打撃を被っている旅行業界を選ぶことに、躊躇はなかったのだろうか?
「正直怖かったです。しかし、ある程度の時間はかかるにせよ、市場は必ず回復するはずだと信じました。となると、コロナよりも、経営陣が優秀かつ経験豊富であること、優れたプロダクトがあることなどのほうが、IPOを成功させるファクターとしては重要。triplaは、社外からの支援も厚く、これなら難局を乗り越えられると確信できました。とはいえ、当時はコロナで打撃を受けていたのも事実。入社後すぐ資金調達に動き、落ち着いてから上場準備に着手しました」
上場準備における難題の一つは採用だった。ただでさえコロナ禍で旅行業界が敬遠されているうえに、管理系の人材はリスクを嫌う傾向がある。
「入社直前になって『やっぱりやめます』と断られ、一から採用活動をやり直したこともあります。上場スケジュールに影響するためかなり焦りましたが、半年で管理部門を整えた前職での経験から短期間でも〝やれる〟とは思っていたんです。結果、ギリギリのタイミングで複数名を採用でき、チームを構築。その後も旅行業界への逆風は続き、少ないリソースのなかで課題をクリアし、上場にこぎつけました」
tripla株式会社取締役CFO岡 義人