The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社フィル・カンパニー
取締役 戦略事業本部長小豆澤 信也
14年1月、小豆澤氏は、満を持して個人事務所を設立し、独立する。ただし、「見切り発車だったことも多く、最初の月の売り上げは、確か5万円くらいだった」そうだ。
「こりゃやばい、と(笑)。これまでにつながりのあった会社や金融機関を、一生懸命回って営業をやりました。監査法人時代にクライアントだったところにも、『名刺ができました』と、挨拶に行って」
努力は実を結び、ほどなく個人事務所の経営は軌道に乗った。
「基本的には、顧問として経営者の話し相手になって、日常的な悩みを聞きつつ、解決策を探す。例えばM&Aを検討したいという話になれば、そこでデューデリを受注するなど、スポットの案件にも対応しました」
当然のことながら、監査法人時代の仕事との違いも実感した。
「監査法人とお客さまは、どこかで壁がありますよね。それがあるべき姿といってもいい。でも、独立後は、それでは仕事になりません。信頼してもらえれば壁は自然に崩れます。お客さまが、監査法人時代には想像できなかったような深い悩みを抱えていることがわかったり、混乱の原因になっているビジネスプロセスについてなど、問題発生の早い段階で相談してくれるようになったり。そこに大きなやりがいも感じました」
顧問業とともに柱になったのが、IPO支援である。フィル社にかかわったのも、上場プロジェクトだった。
「当社には、トーマツの最後の時期に、IPOの予備調査に入りました。監査の対応もしっかりしていて、我々の指摘にも真摯に向き合っているという印象だったのですが、いかんせんまだ10人未満の体制で、明らかにリソースが足りない。それがわかっていたので、独立してから『業務委託でIPOをお手伝いさせていただけませんか』と話をして、受注したわけです」
当時は、まだ内部監査のベースになる仕組みも存在しなかった。それを構築した後、14年9月に、業務委託の関係のまま、自ら内部監査室長に就く。そして、紆余曲折も経てIPOを成し遂げた翌月の16年12月、同社に入社する道を選んだのである。
「ビジネスモデルに魅力を感じたのもあるのですが、なんといっても社長の能美裕一のビジョン、価値観に惹かれたんですよ。組織が大きくなるにつれて、当たり前のことができなくなる。能美からは、『正しいことを正しくやる手伝いをしてほしい。君は守りのスタンスの仕事も得意だが、攻めの仕事もできる』とも口説かれました」
会社は、そのために社長室長のポストを新設、副業すなわち個人事務所の仕事もOKという条件だった。
「週に2~3日通うつもりだったのですが、部下がついて、徐々にやることが増えてきて……そのへんも、能美のうまいところでしょうね(笑)」
株式会社フィル・カンパニー取締役 戦略事業本部長小豆澤 信也