The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社キューブ
取締役CFO小澤 拓
就職先は、有限責任監査法人トーマツだった。「なるべく経営者と近いところで仕事をするために、あえてボリュームゾーンが小さめなところを選んだ」のである。そこでは、法定監査にとどまらず、IPO準備会社のデューデリジェンスや、中期経営計画策定支援といったコンサル業務にも携わる。
「特に2年目からは、積極的に手を挙げて、監査以外の案件に取り組みました。でも、最初は『お前の言っていることは、ロジカルでもなんでもない』と、毎日上司にボコボコにされて。やりたいという気持ちだけでは仕事はできないんだということを、骨の髄から叩き込まれましたよ」
「ひたすら目の前の仕事をやり切る」ことに全精力を傾けて3年、目標に向けてそろそろ次のステップに進もうかと考え始めていたところに、グループのデロイトトーマツコンサルティングに出向の枠がある、という情報が耳に入る。第三者目線から、よりクライアント寄りに、と考えていた小澤氏は、迷わずその道を選んだ。
新天地では、例えば「バックオフィス部門だけで数千人規模のIT関連企業の管理部門再構築に、1年間張り付く」といった数々のプロジェクトを経験する。
「コンサルの仕事は、ひとことで言えば、その会社のバリューチェーンやサプライチェーンなどのどこにボトルネックが発生しているのかを発見し、それらにどう優先順位を付けて解決していったらメリットを最大にできるのか、を指し示すことです。そういった思考がこの時期に鍛えられ、それは今の業務にもとても役立っているんですよ。ベンチャー企業というのは、何かやろうとすれば必ず問題点が付随してきますから(笑)」
ただし、頭の使い方は大いに勉強になったものの、徐々にもの足りなさを覚えるようにもなっていた。「どんなにパワポをつくっても、実行されなかったら意味がない」という、いわば“コンサルの宿命”に、限界を感じたのだ。
「やはり自分でやってみたい」と事業会社への転職を実行に移したのは、14年1月のことだ。「行くのなら、上長の意向などに縛られにくいベンチャー」と考え、最終的に選んだのは、ファブレスの家電メーカー、カドーである。しかし、入社早々、「ベンチャーの洗礼」を受けることに。
「IPOを目指していたのですが、いきなり『初めての法人監査があるから、頼みます』と。そう言われても、まだ会社の帳簿を見たこともない(笑)。3週間ぐらい毎日終電続きで仕事をこなし、なんとか間に合わせることができました。その後は、CFOとして、中計策定や、毎月の経営会議に向けて、レポートを作成したり、最大の懸案事項である資金調達に奔走したり」
そんな小澤氏が17年に別の事業会社に転職したのにも、理由があった。
「入社以来3年間、脇目もふらずに会社のために奮闘して、様々な経験もさせてもらいました。このあたりで、もう一度立ち止まり、将来を見つめ直してみようか、と。もともと起業したいという夢があるわけで、もう少しCOO(最高執行責任者)サイドのキャリアをとか、いくつかの会社の役員に兼務でかかわったらどうだろうとか、いろんなことを考えましたね」
株式会社キューブ 取締役CFO小澤 拓