The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社イグニス
取締役CFO山本 彰彦
念願の会計士としての仕事に一歩を踏み出した山本氏だが、そのまま新日本監査法人に在籍するものと思いきや、そうではなかった。09年初め、あずさ監査法人東京事務所に移るのである。
「大企業の本社が集中する東京に行ってみたかったのです。国際関係の部署で英語を使ってバリバリ仕事をしてみたい、という夢もありました。やっぱ、カッコいいじゃないですか(笑)」
念願かなって上京し、国際部に所属。海外展開する日本企業の監査や、外資系企業の連結対象になっている日本拠点の監査を行う、リファード業務などに携わる。
ところが、ようやく居場所を見つけたにもかかわらず、「やりたいこととは、何か違う」という思いが、日増しに強くなるのだった。
「他人の会社の帳簿をひっくり返したり、監査というのは、どちらかといえば嫌がられる仕事でしょう。社会に貢献しているっていう実感が、僕自身はあまり得られなかったんですよ。それに、さすがは難関試験を突破してきただけあって、周囲は“デキる”人間ばかり。東大出て、仕事ができて、イケメンで、おまけにいい奴(笑)。この中にいたら、完璧に落ちこぼれるな、と真面目に思いましたね」
そして、「監査法人で5年仕事したら、何か別のことに挑戦しよう」と、またしても新たなテーマを自らに課したのだ。
「僕、『人生すべてはポジショニング』っていうのが持論なんですよ。人の能力は様々で、ここでダメな人間も、あそこだったら輝ける、というのがあるはず。自分自身も、ハマる場所に行けば、もっと活躍できるんじゃないか、と。まあ、それがどこなのか、明確な姿は見えていませんでしたけど」
決断すれば、フットワークは軽い。周囲に転職を宣言し、エージェントにも登録。そんなある日、飲み会に友人が偶然連れてきたのが、スマートフォン向けアプリの開発などを手がけるイグニスの銭錕社長だった。その場で、何気なく転職準備中だと話すと「だったらうちに来ない?」と予想外の展開に。翌日、同社のオフィスを訪れ、あらためて社長の話を聞いた山本氏は、入社を即断する。
「トップがリスクの取れる、一本芯のとおった人物だというのが、よくわかりました。事業のビジョンも明確だし、何よりそこにいたエンジニアたちが、メチャクチャ優秀だったんですよ。『あと必要なのは、ファイナンス戦略というワンピースなんだ』という言葉は説得力十分で、『じゃあ、やります』と」
同社の取締役管理部長として転職を果たしたのは、12年7月。目論見どおり、アシスタントとして監査法人に入所してから5年弱で、新天地を見つけたことになる。
株式会社イグニス取締役CFO山本 彰彦