The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社IBJ取締役
経営管理部部長桑原 元就
02年、桑原氏は監査法人トーマツ(当時)に入所。そもそもベンチャー企業に就職するのが目標の彼にとって、「監査法人には、とりあえず入るという気持ち」だった。ちなみに“とりあえず”の意味は、こういうものだ。
「少なくとも『こいつを採ってよかった』と思われるまではしっかり働こう。最低5年間は何も考えずに求められる仕事をやり、そこで一度立ち止まって自分のやりたい道に進んでいるかどうかを確認して、出るべきだと思ったら出よう、と決めていました」
最初に“立ち止まった”のは、入所4年目くらいの時だった。
「大企業からベンチャーまで担当できるという話だったのですが、実際には大きなところばかり。『ベンチャー企業と仕事できる部署に異動させてください。無理ならば辞めます』と宣言したのです。ありがたかったのは、上司が『そこまで覚悟があるのなら、仕事をつくるから残れ』と言って、本当に案件を持ってきてくれたこと。初めて会社から自分が求められた気がして、うれしかったですね」
IPO予備軍の会社を回る仕事は、従来業務のプラスアルファ。「上場大企業とはタイプの違う、建前なしで話す経営者に会えたりして、想像どおり楽しい現場だった」が、失敗もあった。“通常業務”が佳境にあった時、あるベンチャー企業の上場に向けた予備調査を仰せつかる。目の回る忙しさの中、「ついつい、別のレポートから引っ張ってこられる部分はないか、という発想」で作成し、上司に提出する。
「細かいことを言うタイプの方ではなかったし、大丈夫と高をくくっていました。ところが後日に呼ばれて行くと、100ページ余りの文書ほぼすべてのページに付箋がついていて、細かく直してある。『これはお前の言葉か』『魂がこもっていない』という指摘はこたえました。あの時の反省は、いい加減な仕事をしてはならない、という教訓として今も胸に刻まれています」
厳しい指導に恩義も感じつつ、桑原氏は「転身はもう少し頑張ってから」と、その機会をうかがっていた。ところが08年、想定外のリーマンショックが世界経済を襲う。
「日本の市場も冷え、IPOなんて無理、という雰囲気に。外に出て伸び盛りのベンチャーでバリバリ働くつもりが、夢を断たれた気がしましたね。正直、あの時はこのまま監査法人に骨を埋めるのかな、と感じていました」
そんな桑原氏の運命を変えたのは、11年の初めに専門学校時代の友人からかかってきた1本の電話だった。
「『婚活事業で上場を目指すベンチャーが監査役を探しているんだけど、お前、ベンチャーなんて興味ないよな?』って。『いや、あるある』ですよ(笑)。一度はあきらめかけていたところに、ふっとこういう話が来る。これも縁かな、と思いましたね」
株式会社IBJ取締役
経営管理部部長桑原 元就
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