熱き会計人の転機
公益社団法人日本プロサッカーリーグ
理事 公認会計士米田 惠美
Jリーグとの接点はどこで得たのですか。
米田もともとリクルートエージェント内に中村繁という人間が始めた【ちゑや】という組織変革・人材開発の場があったのですが、「中村、それを組織としてやれ!」と言ったのが当時のリクルートエージェント社長であり、現Jリーグのチェアマンを務める村井満でした。その後中村が独立を経て、法人化する際にお声がけいただき、私も共同経営者になっていたので、村井とは距離の近いところにいました。ある時久しぶりに3人で飲んでいると、村井から「今度の講演で命をかけて話すからちょっとライターやってくれ」と頼まれました。ものすごい熱量と経営者の覚悟が詰まっている講演で感動したのを覚えています。翌朝にレポートをまとめて村井に提出すると、「よくこれだけ表現してくれた」と喜んでもらえたんですね。
その翌月、今度はJリーグのクラブチームから理念浸透の依頼が【ちゑや】に入った。村井からもらった熱量に感謝する気持ちもあり、100枚を超える提案書をすぐに作成。助言をもらおうとそれを村井に見せたら「なんじゃこりゃ!」と。「ここに書いてあることを、クラブではなくリーグでやってくれ」。結果、2017年4月からJリーグの社外フェローに。そして翌年、理事に就任しました。
その後の仕事内容、ミッションについて教えてください。
米田村井からは最初、Jリーグの「風土改革」を依頼されました。村井の言葉でいうと“静脈”づくり。でもデューデリしてみると実は“動脈”が機能不全を起こしていることがわかりました。経営トップから従業員に向けて意思を伝える機能です。当時は組織が混乱し、どこに向かっているかわからない状態に陥っているように思いました。経営幹部のコーチングセッションを1年弱実施した後、改革スピードを上げてほしいと理事就任を打診されましたが、正直迷いました。Jリーグ内部に入って進めるからには他の仕事を手放す必要がありますし、サッカー界の外から来た人間ですから反発されるだろうと。でも最後は、Jリーグという社会的意義の高い事業をやる組織が持つ可能性を確信して決断しました。
理事就任後は経営サイクルの健全化から手をつけました。ビジョンや戦略と予算策定・目標設定、人事評価の仕組みを接続させる。そして皆が組織を前進させる当事者としてのマインドをもってもらう。企業再生に近い仕事の一方で、地域貢献活動を加速させるミッションも。Jリーグは地域密着を掲げ「スポーツでもっと幸せな国へ」と言ってきた理念遂行型の組織ですから、とても社会性が高い取り組みがたくさんある。この取り組みを拡大させたり、持続可能にしていく役割も担っています。
Jリーグは社会性・事業性・競技性を並立させるような経営の応用問題ですし、関係者も膨大なので調整が大変な分、難易度は高いけど、とても面白いです。大げさではなく、Jリーグは社会を変える装置だとも思っています。その中で、物事の本質を見極めるという会計士としてのスキルや経験は今も生きています。決して王道ではありませんが、自分が信じた道で「ここなら命をかけられる」と思える領域のために、この武器を大事に使っていきたいと思います。
公益社団法人日本プロサッカーリーグ理事 公認会計士米田 惠美
公益社団法人日本プロサッカーリーグチェアマン
彼女には二足のわらじを履いてもらっているようなものです。会計士としての経験を踏まえた経営改革の領域と、彼女のライフワークとしているより良い社会をつくるための活動。この両面でアサインをしました。この組織にはスポーツのプロもいれば事業のプロもいる。高度な少数精鋭のプロたちですが、裏を返せば“タコツボ化”した縦割りの組織になりがちです。そこで事業や組織のあり方を改善し、社会に開かれたイノベーティブな風土にしたいというのが私からの要請でした。当然、苦労は多いと思います。サッカー以外の業界から30代の女性理事がやってきた。反発もあったかもしれません。でも彼女はサッカー界が良くなるということを信じて、一つひとつかたちにしています。そんな彼女の能力に、今は皆が信頼を寄せ始めているところです。