The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
株式会社オルトプラス
取締役 CFO 財務・経理部部長竜石堂 潤一
転身へのきっかけをつくったのは、その後、IPOを目指す企業も担当するようになったこと。そのうちの1社が、東証マザーズに上場を果たす。
「50坪くらいの部屋に社員が20人ほどの会社が、いつの間にやら200坪のオフィスへ。業績は急拡大し、ショートレビューから2年足らずで上場。それを目の当たりにして、企業の成長に直接かかわってみたい、という気持ちが芽生えたのです」
実は監査という立場でのIPO支援に、限界を覚えてもいた。
「2000年代に入り、例えば規程や組織図の見直しなどはコンサルティング業務になるため、監査契約の範囲内で行うことが契約上難しくなるとともに、採算性の点からもできなくなったのです。もう一歩踏み込んでアドバイスしたいのに、という悶々とした思いは大きくなるばかりでしたね」
先の会社が上場したのは07年8月。翌月、突然運命の女神は微笑む。独立して会計事務所を開いていた同期とたまたま飲み、「上場の仕事が一段落した」と話をしたことが、“思い”の具体化につながった。「上場準備で人を探している会社がある。興味があれば紹介する」という話を受け、ITベンチャー、サムライファクトリーのトップに会ったのは11月初め頃だった。
「夢が、目の前に転がってきた。二つ返事で『お願いします』と答えました」
ただし監査法人を辞めることに、ちょっとした問題が。10月から、晴れてマネージャーを拝命していたのである。「あいさつ回りを済ませていた担当企業に、『実は12月末で退職することになりました』と、また出向く羽目に(笑)。当時のパートナーにはご迷惑をおかけしましたが、夢のためにと、心を鬼にして押し切りました」
翌08年1月、同社に入社。同年5月には取締役兼管理部長に就任して、IPO準備の中心となる。だが諸事情により、結局上場は見送ることに。竜石堂氏は12年1月、退任を申し出る。
「IPOがなくなった以上、そこにいるのは申し訳ない、という気持ち。でも実際に会社の中で上場準備にかかわれたのは、非常に勉強になりました。とはいえ、次の働き口を、急ぎ何とかしなければなりません。人材紹介会社にエントリーしたほか、退任のあいさつに行った証券会社やベンチャーキャピタルの方からも、いくつかお話をいただきました」
そして、またもや「一番早く、具体的なオファーをもらった」、ソーシャルゲームを開発、運営するオルトプラスに、同年4月に入社するのである。
当時、「社員40名ほどで、管理部には1人しかいなかった」。だが「これも縁だろう」という“インスピレーション”は、入社11カ月でかたちとなる。
「代表の石井武(CEO)には、『うちは歴史がないぶんIPO業務は楽で、逆にやりがいがないかも』と言われましたが、確かに“過去のしがらみ”がないのは、大きなアドバンテージでした。ただし規程を整備、運用などの事務手続きは、どんな会社の場合もあまり変わりません。上場承認を得るまで、結構な力仕事もこなしましたよ」
結果、経理2人体制でマザーズへの上場を果たしたのは13年3月だった。
株式会社オルトプラス取締役 CFO 財務・経理部部長竜石堂 潤一
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