大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
2023年に「ジャニーズ事務所創業者の性加害」「ビッグモーターの保険金不正請求」「日本大学アメフト部学生の大麻使用」「宝塚歌劇団員のパワハラ・いじめ被害」など、世間の耳目を集める不祥事が相次いだのは、記憶に新しい。私はそのたびに“ガバナンスに詳しい専門家”としてメディアにコメントを求められ、その問題点を述べた。
ところで、今挙げたのが、いずれも未上場企業ないし、非営利団体が起こした問題だった(宝塚歌劇団は阪急電鉄の一部門ながら、独自の理事会がある)ことは、注目に値する。本来、ガバナンス議論の対象になるのは、主に上場企業である。社会的影響力が大きく、株主をはじめとする不特定多数のステークホルダーを擁する存在だからこそ、経営の監視・監督機能と業務執行を峻別し、見えるかたちで健全な組織運営が行われなければならないからだ。
しかし、そもそも所有と経営が分離していない“一人社長”のような組織にまでガバナンスが求められるのは、ある意味時代の要請ではないだろうか。上場企業の理論を援用して、社会性、公共性を持つあらゆる組織の健全性を向上させていくことは、もはや避けて通れないこととなった。
さて、今なお炎上中の“非営利団体”による不祥事が、自民党の政治資金問題である。ともすれば“派閥の是非”などに論点が拡散するきらいもあるが、この事案の核心は、当事者たちの“アカウンタビリティの欠如”であることを指摘しておきたい。これまでも述べているように、アカウンタビリティは単なる会計や帳簿付けの話ではなく、“説明責任”を意味する。説明責任を果たすとは、「どこからいくら収入があり、何にいくら使ったのか」を詳らかにすることだ。
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大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。