青山学院大学大学院
会計プロフェッション研究科教授・博士八田 進二
監査する側の責任も重大だ。「不正を見抜くのは困難だ」という話をしたが、だからといって、「企業が悪いのだから仕方がない」ということにはならない。監査能力を高め、過ちを見逃してしまうリスクを減らす努力をすべきなのは、当然のことである。
会計知識を高めれば、それで事足りるのか。私はそうは思わない。まず大事なのは、監査の対象である企業とは何なのか、経営とはどういうものなのかを知ることである。幾多の企業に接してみて実感するのは、同じ業種であっても会社ごとに違うカラー、社風があるということだ。それはほとんどの場合、トップによって醸成される内部統制に影響を及ぼしている。ならば、経営にかかわるトップについてもよく知り、いい意味で親密な関係を持たなければ、その会社について理解するのは難しいだろう。
会計士の心構えについては改めて論じるとして、内部統制の制度が導入されたとはいえ、そこに魂を入れたと言い切れない現状は危うい。このままだと、10年、20年後に「日本版エンロン事件」が起こるのではないか、と私は心配している。
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授・博士八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科 博士課程単位取得満期退学。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。2005年より現職。現在、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会臨時委員(監査部会)を兼務し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。
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