大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
近年、上場企業監査に占める中小監査法人のウエートが高まるに従い、その品質の担保が課題に上っている。2023年4月に施行された「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律」(以下「改正法」)に、「上場会社等監査人登録制度」の導入が盛り込まれたのには、そうした背景があった。日本公認会計士協会は、以前から自主規制としての独自の登録制度を設けていたが、上場企業監査をしたければ、要件を満たして上場会社等監査人名簿に登録されることが、法的義務とされたわけである。
一方、改正法施行の時点で上場企業監査を行っていた法人には、未登録でも一定の期間、監査を続けることができる経過措置(みなし登録上場会社等監査人)が認められ、その期限は24年9月30日までとなっている。本誌が出る頃、新制度が“完全実施”となっている予定だ。
監査水準を向上させる方策として、この登録制度を評価するにやぶさかではない。しかし、現状を打開する切り札になるのかといえば、疑問も残るのだ。
そもそも、期限までに監査人名簿への登録はどれだけ進むのだろうか。ちなみに完全実施を2カ月後に控えた24年8月7日の時点で、新制度への登録済みは86法人、先ほどの「みなし登録監査人」が46法人となっている。つまり、従来およそ130の監査法人で上場企業監査を行ってきたことになるのだが、10月1日以降どうなるのかは、未知数だ。
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大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。
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