会計士の肖像
TOMAコンサルタンツグループ
代表取締役 理事長藤間 秋男
2012年、TOMAグループは分社化を行った。ホールディングカンパニーとなる「TOMAコンサルタンツグループ」を新たに設立し、そこを扇の要に、税理士法人、監査法人、社会保険労務士法人、行政書士法人、司法書士法人、財務・人事・医療などのコンサルティング会社が有機的に機能する。各分野の専門家がチームを組むことで、企業が抱える様々な経営課題をトータル・サポートする体制は、かつて、藤間の祖父が描いていた夢を実現させたものだ。
「TOMAに声をかければ、どんな分野の相談にも応えてくれる専門家がそろっている」。ワンストップサービスは、顧客にとって利便性が高いのはもちろんですが、我々の“売り方”における差別化、すなわち強みになっています。今年のうちには、念願だった弁護士法人もつくる予定で、その強みは一層増していくでしょう。
そして、この体制は永続的に事業を続けていくための布石でもあります。従前は、僕が総リーダーを務める個人事業だったわけですが、当然のことながら、僕が死んでしまえば、お客様との契約が絶えてしまう。法人化は必須でした。加えてこだわったのは、どこかと提携するのではなく、理念やビジョンを共有する内部で、同じ目線、同じ体系のもとでやっていくということ。資格の有無を問わず積極的な人材登用を図り、各部門を任せられる社長を一人でも多く育てていきたいと考えているのです。それが、本当の意味での永続性につながるから。
僕は、長年“老舗研究”に取り組んできました。「100年企業とは何か」をテーマに、老舗企業のトップや学者たちから得た知見を、中小企業の経営者に役立ててもらいたくて書籍にまとめたり、老舗企業に学ぶ「100年企業サミット」を開催したり。僕がライフワークとして取り組んでいるのは、100年企業づくりと事業承継、この2つです。TOMA自身が125年以上という歴史を持っているわけで、僕が業界で果たすべき役割は、ここにあると肝に銘じてのことです。
55歳の時、藤間は「65歳で社長を退任する」と社内に宣言した。事業承継をライフワークとするだけに、「お客様の見本となる世代交代を」と、早くから準備を進めてきたのである。藤間の後任には、現在の筆頭副理事長である市原和洋氏が就くことが決定しており、来年、藤間自身は会長に就任する。
「僕の次は誰がいい?」って、実はこれも全社員に向けてアンケートを取ったのです。市原を後任に選んだのは、アンケートから人望の厚さが窺えたし、何よりTOMAの理念をしっかり守り、伸ばしてくれると確信してのことです。今、うちは「1000年続くコンサルティングファームになる」という図々しいビジョンを掲げていますが(笑)、僕はけっこう本気。理念とビジョンで社員を引っ張っていき、ベクトル合わせを徹底してやっていけば、必ず実現できると信じているのです。
本当はね、市原にバトンタッチしたらスパッと会社から身を引くつもりだったのですが、「藤間さん、あと数年で辞めちゃうからなぁ」というお客様の声がチラホラ耳に入るようになり、ちょっとまずいかなと。なので、市原から“お役御免”にされるまで、彼の応援団としてやっていくつもりです。それと、会長になったら全国行脚してセミナーをしたいと考えています。もちろん、事業承継や100年企業をつくるお手伝いをするために。前述したように、これは僕の使命だと思っているし、「明るく・楽しく・元気に・前向き」であることについては、今も誰にも負けない自信があるから(笑)。
さらに、突飛に聞こえるかもしれないけれど、引退後はライブハウスとカレー屋さんをやりたい。これは趣味の世界における僕の夢で、特にカレー屋さんについては、自分の手で上場企業に育てたいと思っているんですよ。もともと枠にはまるのが好きじゃないし、これからは、さらに自由に楽しませてもらうつもりです。
性分なんでしょうね、同じことをただ繰り返すというのがどうにも苦手で。逆に、変わることを怖がる人もいるでしょう。例えば、毎日同じ定食を食べないと落ち着かない、みたいな……。僕は無理。メニューも店もどんどん変えていくタイプで、心持ちとしては「日々新たに」です。何かに挑戦して失敗してもいいじゃないですか。失敗は、人生に尊い知恵を授けてくれるのですから。事業家の土光敏夫さんも同じことを言っていますが、「今日という日は誰にも平等にやってくる」ということ。明日でも明後日でもなく、新たに迎えた今日という日に全力投球し、常に変化を求めていく。僕は、そんな生き方を続けていきたいのです。
※本文中敬称略
TOMAコンサルタンツグループ代表取締役 理事長藤間 秋男
[主な保有資格] 公認会計士、税理士、中小企業診断士、行政書士、AFP、賃貸不動産経営管理士、M&Aシニアエキスパート、登録政治資金監査人、スキューバダイビング、小型船舶2級、日本さかな検定3級、ほめ達検定3級
[主な著書] 『どんな危機にも打ち勝つ100年企業の法則 老舗企業に学ぶ「儲かる仕組み・人をつくる仕組み」』(PHP研究所)、『1/4は捨てなさい! 今のままなら、来年は倒産しますよ』(ダイヤモンド社)、『「百年企業100選」未来に残したい老舗企業』(共著・東方通信社)、『ヒト・モノ・コトを次代へつなぐ「事業承継の教科書」』(TOMAコンサルタンツグループ著・PHP研究所)など