大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
日本公認会計士協会(JICPA)は、自らを自主規制団体と規定している。ところが、その自主規制の機能が、今、“外圧”による制度的な危機に瀕している。
2022年末、世界の証券市場の監督を司る証券監督者国際機構(IOSCO)主導のモニタリング・グループ(MG)の提言による構造改革で、その下に国際倫理・監査財団(IFEA)という新組織が誕生した。そして23年1月、それまで国際会計士連盟(IFAC)傘下にあった国際監査・保証基準審議会(IAASB)と国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が、新生IFEAの下に移管されることになった——。
端的に言えば、国際的な監査基準を策定するIAASBと倫理基準に関与するIESBAが会計士業界の手を離れ、規制当局直轄となった、ということだ。
MGの狙いは、公共の利益に応えるためにマルチステークホルダーの意見を取り入れ、監査の“独立性”を高めることにある。例えば25年をめどに、IAASBとIESBAのメンバー選出を行う基準設定審議会指名委員会でのボードメンバーにおける監査実務家の枠を、16議席中5議席(従来は9/18議席)まで削減するという。
会計プロフェッションにおける自主規制の重要性を指摘してきた立場から見て、これは「とんでもないこと」なのだ。監査基準と倫理基準の設定は、会計プロフェッションの自主規制の要である。特に自ら倫理基準を定め、自らを律することは、社会の信頼性を担保する生命線と言っていい。それを丸ごと取り上げてしまったのだ。
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大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。
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