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Accountant's magazine vol.53

-アカウンタンツマガジン-
2019年04月01日発行

会計プロフェッションによるコラム「Accountant's Opinion」

「パラダイムシフトが進む監査の未来にゴーン事件が暗示するもの」

大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

昨年、日産のカルロス・ゴーン前会長が逮捕された時、私は数多くのメディアから取材を受けた。問題となった有価証券報告書への報酬過少記載については、「退任後に受け取る報酬を毎年決めていたのなら、それぞれを当該年に会計処理しなければ、原則アウト」と述べたが、想定どおり、日産は今年になって、記載していなかった約90億円の決算追加計上を決めた。

役員報酬の額を年に10億円過少記載したとしても、同社の決算全体から見たら、財務諸表の監査では誤差の世界であろう。したがって“重要性”はないと主張する弁護士などもいるが、それはあまりに皮相的な見方である。2010年から上場企業に1億円以上の役員報酬の開示が義務付けられたのには、株主や投資家がその企業のガバナンスの状況を確認できるようにする、という意味合いが大きい。日産は、株主の利益よりもゴーン氏の都合を優先したと言われても仕方がないのだ。

ゴーン氏に関しては、子会社を通じて海外に高級住宅を購入させるなど、私的な出費を日産に払わせている事実も次々に露見した。これらの“悪事”を、ほかの取締役が誰1人として認識していなかったとは考えにくい。もし知らなかったのならば、それこそガバナンスがまったく機能していなかったことになる。いずれにしても、社長以下取締役は、前会長と同罪である。

ここまでの不正が罷り通ったのは、瀕死の日産を救ったカリスマに、誰もものが言えなくなっていたからだろう。ただ、あえて言えば、ゴーン氏が同社をV字回復させた経営手法自体は、特に斬新なものでもない。会計的には「ビッグバス・アカウンティング」と称されるやり方で、要は「大きな風呂で徹底的に垢を落とす」のである。過去の不良債権は整理する、不良在庫を一気に特損で落とす、そして大胆なリストラを敢行。この手法のミソは、それを断行した年度は、赤字幅が大きく膨らむところにある。会社の優良な部分だけが残り、身軽になった次の期には、黙っていても業績は急回復する仕組みになっている。

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大原大学院大学 会計研究科 教授 青山学院大学 名誉教授  博士(プロフェッショナル会計学) 八田 進二

大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。

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