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「第二期 第6回基調講演 女性専門職業人が判断を下す時の課題」
参議院議員・公認会計士・税理士
竹谷 とし子
藤沼塾レポート
太陽有限責任監査法人
代表社員 会長梶川 融
通常、公認会計士が相手にしているのは上場企業だが、今日は、地方自治体や地域の中小企業、さらには社会福祉法人、医療法人などの非営利組織に対する監査の意味、可能性について話してみたい。とはいえ、単に「監査の対象が増えますよ」と言いたいのではない。これらの組織は、地域社会、経済の担い手であり、雇用では8割以上を占める彼らを“サポート”するという、従来にない社会貢献のチャンスが広がっていることを、特に若き会計人にわかってもらうのが目的である。
会計士が非営利組織などに関与することが、なぜ社会貢献になるのか?例えば、社会保障の分野で論議になるのは、判で押したように“受益と負担、再配分”だ。「保険財政厳しき折、高齢者にも、もう少し負担してもらおう」といった類の話である。それが不要だとはもちろん言わないが、同時に俎上に上げるべき“給付の効率化”を口にする人間は、ほとんどいない。
そして実際には、医療法人などの運営主体がもっとガバナンスを向上させ、経営の効率化に真正面から取り組むのなら、同じアウトカムをもっと低コストで提供できる可能性が大いにある。にもかかわらず、その部分は完全にスルーされているのだ。こうした点を、数字の裏付けを持って社会に提言できるとしたら、会計士をおいてほかにないのではなかろうか。
もう一つ例を挙げれば、社会保障の現場を含めて、地域では人手不足も深刻だ。人が集まらないのは、労働生産性が低いままのために、給料が上がらないのも大きな理由だ。裏を返せば、生産性を上げることイコール地域での“仕事づくり”ということになる。難問であるだけに、解決にはやはり我々の専門知が求められるだろう。
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太陽有限責任監査法人代表社員 会長梶川 融
かじかわ・とおる/1974年、慶應義塾大学経済学部卒業。75年、公認会計士第二次試験合格。76年、監査法人中央会計事務所入所。79年、公認会計士登録。2000年、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)総括代表社員。14年、同法人代表社員会長。日本公認会計士協会常務理事、副会長、公会計協議会会長などを歴任。