- vol.50
-
「第二期 第6回基調講演 女性専門職業人が判断を下す時の課題」
参議院議員・公認会計士・税理士
竹谷 とし子
藤沼塾レポート
IFAC・JICPA元会長
藤沼亜起
第1期のテーマは「会計専門職を取り巻く環境認識と、将来に向けた取り組み」である。その第1回目として、あえて会計プロフェッションの10年後を展望してみたいと思う。
そもそも会計プロフェッションとは何か? 公認会計士法は「監査及び会計の専門家として、独立の立場において(略)国民経済の健全な発展に寄与する」と明記する。「国民経済の……」というのは、欧米流の言い方では「パブリックインタレスト(公共の利益)の擁護」だ。まさにこれこそが我々の行動指針なのである。
ところで、そうした使命を貫徹しようとする時、会計士は医師や弁護士や税理士など他のプロフェッションとは、異なる問題に直面せざるをえない。被監査会社、投資家、監査人の3者関係を前提に仕事をする会計士は、その報酬を受益者である投資家からではなく、“監査を受ける会社”から受け取る。そこに「インセンティブのねじれ」が生じ、ともすれば疑いの目を向けられる根拠ともなる。
だからこそ大事になるのが、“独立性”の貫徹である。さらには、社会全体に会計の意義や役割を十分理解してもらうこと、すなわち会計マインドの涵養も重要だと私は思う。だがこの点では、日本の現状はお寒い限り。五輪競技会場の建設費がわけもわからないまま膨らんだのは、まさにその欠如を示す典型例といえる。
本題の「会計プロフェッションを取り巻く環境」に話を進めると、今認識すべきポイントは、我々はグローバル化の進展、デジタルテクノロジーの革新、国際的規制とガバナ ンス改革の実行という時代の中にいる、ということである。“10年後”の姿もそれらを基軸に考察すれば、より明確にできるはずだ。
この記事の続きを閲覧するには、ご登録 [無料] が必要です。
IFAC・JICPA元会長藤沼亜起
ふじぬま・つぐおき/1968年、中央大学商学部卒業。アーサーヤング公認会計士共同事務所、太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)代表社員 などを経て、2000年、国際会計士連盟(IFAC)会長、04年、日本公認会計士協会会長を歴任。08年、中央大学大学院ビジネススクール特任教授、10年4月、 IFRS財団トラスティー評議員会副議長。現在、日本公認会計士協会相談役、財務会計基準機構評議員ほか、上場会社の社外取締役及び監査役多数。