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Accountant's magazine vol.60

-アカウンタンツマガジン-
2021年01月01日発行

会計プロフェッションによるコラム「Accountant's Opinion」

「不正を防ぐ砦=監査法人の本気の"覚悟"が問われている」

大原大学院大学 会計研究科 教授
青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

社外監査役としての体験談から。関与企業の担当監査法人から、次年度の監査報酬に関して増額要請を受けた時のこと。先方からは、諸般の事情を踏まえて、「3%程度の報酬のアップ」が提示されたので、私は、「日本の場合、監査報酬が諸外国に比して低額ということから、この際、倍の報酬にしなくてよいのですか。ただし――」と提案した。そして、きょとんとする周囲の面々に続けたのは、次のような話だ。

「日頃より経理の現場から、『判断に迷う事項について監査法人の担当者に質問すると、必ずといっていいほど“持ち帰って調べます”と言う。返答をもらえるまでの1週間、フラストレーションが溜まりっぱなしだ』と聞きます。報酬を倍にすることで、質問に即答できる体制で臨んでもらえませんか」

予想外の展開に戸惑う監査法人主査の口をついたのは、「持ち帰って検討させてください」という答えだった。

三題噺のような話をやりたかったのではないことは、理解していただけると思うが、はたして1週間後の返答は、「その提案にはお応えしかねます」というものだった。どうしてそのくらいの覚悟が持てないのか残念な気もしたが、監査業界の現状を見れば、仕方ないのかと半ば諦めの気持ちになるのも確かだ。

結局その企業は、「3%アップ」を飲んで監査契約を継続したが、日本でも今、報酬の折り合いがつかずに監査法人のローテーションが行われることは、珍しくない。本コラムでも何度か書いたが、そもそも「自分が受けるメリットの対価を支払う」一般的取引と違い、投資家や株主といった他者のために支出される監査報酬の位置付けは、説明がしにくい。企業ができるだけ“節約”したいと考えるのは理解できる。そして、そこに「監査対象の企業から報酬をもらって監査する」という利益相反を疑われる構造にあることも、他の商取引とは違う。

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大原大学院大学 会計研究科 教授 青山学院大学 名誉教授  博士(プロフェッショナル会計学) 八田 進二

大原大学院大学 会計研究科 教授青山学院大学 名誉教授 博士(プロフェッショナル会計学)八田 進二

慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得。博士(プロフェッショナル会計学・青山学院大学)。青山学院大学経営学部教授、同大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、名誉教授に。 2018年4月、大原大学院大学会計研究科教授。日本監査研究学会会長、日本内部統制研究学会会長、金融庁企業会計審議会委員等を歴任し、職業倫理、内部統制、ガバナンスなどの研究分野で活躍。

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