The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
GMOペパボ株式会社取締役
経営戦略部部長五十島 啓人
悩んだ末、「事業会社の中に入ってどこまでやり切れるのかチャレンジしたい」と、後者の道を選ぶ。その決断には、監査法人時代、クライアント企業のCFOたちとコミュニケーションしたことが影響しているという。
「トーマツでマネージャーだった頃に、財務を統括する役員とお話をする機会が多く、CFOは、会社を成長させるため、様々な課題を解決する立場であることを知り、非常に興味深く感じました。事業をどう伸ばしていくか――そんな視点をもって仕事をすることは、より広い視野が求められるということでしょう。彼らとのコミュニケーションを通じて、ゆくゆくは自分もCFOになりたいという気持ちが芽生えていきました」
8年在籍したトーマツを辞め、エネルギー関連企業に転職したのは、13年1月だった。だが、ここでも“回り道”を余儀なくされる。
「入社してみて、経営トップがやりたいことと自分が目指すものの間に隔たりがあることに気づいたのです。この状態のままでは、10年後、自分自身に胸を張れる存在になることは難しいと感じ、再び転職を考えました」
こうしたプロセスを経た翌14年2月、ネット関連サービス企業、GMOぺパボに入社する。実は同社は、監査法人時代に五十島氏がIPOを成し遂げたクライアントだった。
「私が転職活動に乗り出したことを知り、声をかけてくれたのです。この頃には、将来CFOとして幅広く事業を見たいという思いが強くなっており、社長から、『その可能性は十分ある』という言葉をいただけたので、入社を決めました」
その夢はすぐに実現する。取り組んでいたプロジェクトの働きを、佐藤健太郎社長に認められ、入社約2カ月で取締役に就任したのである。
「ただし」と五十島氏は言う。
「監査法人から一般企業のCFOへというと、そこからIPOを果たし、組織づくりに邁進というサクセスストーリーが多いです。しかし、私の場合はある程度“完成した組織”の“成長フェーズ”のタイミングで入社したので、会社の将来像と現状の捉え方といった点において、バックオフィスのスタッフとのコンフリクトが生じたこともありました。私も肩に力が入り過ぎていたのかもしれません」
その後、業務整理や人員配置換え、業務分担などを細かくすり合わせ、さらにトーマツの後輩に経理に加わってもらうなど人的補充も奏功し、体制を徐々に整えていった。
GMOペパボ株式会社取締役
経営戦略部部長五十島 啓人