The CFO –ニッポンの最高財務責任者たち-
アクセルマーク株式会社
執行役員 経理財務本部長野口 仁
幻の起業プロジェクトには、自ら誘った結果、会社を辞めた友人も何人かいた。「顔向けできない」「みんなにすまない」「立ち直れない」日々を送っていた野口氏に転機をもたらしたのは、モバイルゲーム、Web広告などを柱とするアクセルマークが、経営管理部の部長を募集しているということだった。
「会計士のスキルを事業会社で生かしてみたいという気持ちは、ずっと持っていました」
入社の第一印象は「監査や事業再生でいろんな会社を見てきましたが、管理体制の脆弱さは、その中でも1、2を争う」というものだった。
「管理が会社の成長スピードについていけず、“カオス”状態。でも、すでに出来上がっている会社に比べ、大いにやりがいを感じましたよ」
特に感じたことの一つが「監査法人と事業会社のマネジメントの違い」だ。
「事業会社のライン組織は、部長として全体の能力の底上げに常に取り組む必要があります。また、『モチベーションを高いところで維持する』ことも重要です。これらは、メンバーとの信頼関係がなかったら絵に描いた餅です。正直、想像していなかったくらい膨大でタフな衝突がメンバーとありました。面と向かってわかりあうまでとことん話し合うしかない。成功や達成感の共有を積み上げていく。そういうところは、一定以上の会計的な素養を備えた人間たちがプロジェクトベースで集散する監査法人とは、明らかに違います」
「入社当時、みんなが“戦国時代の一国一城の主”状態で1+1が1・2くらいだった我が部署も(笑)、1+1が2にも3にもなるようなチームに育ってくれました。それが、上司である僕への一番のご褒美です」と、ここまでを総括する。
そんな野口氏は「改めて会計プロフェッションとして信念を持ち続けることの大事さを痛感している」という。
「世の中では会計不祥事が絶えません。変な言い方ですが、事業会社に身を置いてみると、下心ある恣意的な会計処理の誘惑に駆られる気持ちもわかるんですね。僕の場合だと、業績にコミットしている状況で、どこがどうなればこういう会計処理になるってパッと頭に浮かぶんですよ。会計士として、誘惑に負けない人格、プライドを保持できるかどうか。特にCFOのような立場で仕事をしようとしたら、そこが大きく問われるように感じるのです。その意味でも、会計事務所や監査法人の人は、グレーゾーンだからとかで躊躇せず、常に高潔で正論をいう人であってほしい」
「会社の成長やゴールへ向かう社員と一体感を肌で感じられることに、想像以上の充実感を覚える」と語る野口氏だが、今の状況に満足はしていない。
「常にチャレンジする自分でいたいんですよ。それは異次元の管理体制への挑戦や会計畑と関係ないことかもしれない。この好奇心と無鉄砲さのおかげで自分が10年後何をしているかまったく想像できません(笑)」
アクセルマーク株式会社執行役員 経理財務本部長野口 仁
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