会計士の肖像
株式会社ビジネスブレイン太田昭和
代表取締役社長石川 俊彦
90年、公認会計士登録。「だからといって、仕事は全然変わらない」と笑う石川だが、以降、社内でも群を抜いて、営業とコンサルティングに本領発揮。数多くの大型案件を手がけ、BBSの発展にも大きく寄与してきた。その最大の武器は、顧客と一体になって、経営課題解決の道筋を導き出す“石川流セッション”である。
1泊2日、あるいは2泊3日で行うセッションです。顧客からヒアリングした経営課題に沿って、僕が解決に向けた仮説を用意し、セッションの場でダーッと張り出すんですね。その仮説をもとに徹底議論し、「うちの会社はこう変わる」を、皆で共有化していく。いわば有料セミナーのようなものですが、最初から“答え”を用意しておくスタイルで、詳細が決まればシステム開発にかかり、定着化のための実践的なコンサルティングを始めるという流れです。このセッションで、99%仕事が決まる。もとは、IBMの手法を僕がアレンジしたものなんですけど、経験を組み込んだノウハウの塊なので、どうも、ほかの人はマネができないようです。ゼネコン、食品メーカー、テレビ局など、5億円を超える規模の仕事を手がけ、それに伴ってBBSも大きくなっていくのが醍醐味でしたね。
あとは、集会が終わったあとの“ナイトセッション”(笑)。なかにはね、外部のコンサルティング会社が入るのを嫌う経営幹部もいたりするのですが、そういう人は、酒で僕を潰そうとする。でも、負けたことがない。飲み比べでいえば、僕一人で日本酒4升を空けたことがあります。まぁ自慢するような話じゃありませんが(笑)。
僕に営業哲学があるとすれば、「すぐに、お客さまを好きになる」こと。好きになられていやがる人はいないでしょ。打ち解けて、確かな人間関係を構築できれば、お客さまの懐から本当の課題を引き出すことが必ずできます。うちは、短所探しの視点に立ち、経営戦略だけを提案して終わってしまうコンサルティング会社とは違います。だからこそ、BBSの経営方針のひとつに「長所を見つめる」があるのですが、僕は、この考え方がとても好きです。
「長所を見つめる」――この考え方は、グループ会社に対しても、そして社員一人一人に対しても、貫かれている。かねてより、BBSは従来の戦略会計分野にとどまらず、金融、製造、医療など様々な領域において、グループ会社による多彩なサービス展開を推進しているが、それらが有機的に機能しているのは、「人を重んじる」理念が根づいているからだ。
実態として多い管理評価は、すなわち「ここが悪い、あそこが悪い」の引き算人事。でも企業は組織であり、人の有機体で、誰もが個々の役割を担っているわけです。その長所を生かして組み合わせていけば、素晴らしい組織体ができる。だから僕は“足し算の人事評価”を徹底しているのです。
例えば営業だけをとっても、お客さまを見つけてくる“玉出し名人”がいれば、アポ取り、聞き取り、企画書作成など、それぞれに名人がいる。企画書づくりが苦手でも、プレゼンに強いヤツもいる。そういう様々な名人をつくることが大事なのです。先述しましたが、これはラグビーで教わった精神。ラグビーは格闘技だから、体が小さいと欠点になるかといえば、そうじゃない。スクラムハーフのポジションに就けば、むしろその小ささ、機敏さが長所として生きてくる。そういった機能分化が進み、互いの機能を最大限に生かし合えば、最強の組織になりますよ。
最近の一番のエポックは、本社をこの日比谷に戻したことでしょうか。東京での出発地です。リーマンショックの影響もあって、3年前に固定費削減で別の場所に移転したのですが、士気を高めようと、思い切って戻ってきました。日本企業の中国・アジア進出を支援する事業を本格推進するには、我々も海外進出をしなければならないし、当面は、攻めの戦略を取ります。
僕らの仕事は、クライアントの課題解決手法なり、仕組みなりを開発していかなければ飽きられてしまう。そして、一人一人にプロフェッショナルとしての魅力がなければ、評価していただけない。商品の品揃え、人材の質をより高めることに積極的に投資します。社長になって5年目。本来、僕はトップのタイプじゃないと思うんだけど、職責をまっとうするのみ。前だけを見て走るのが、僕の得意技ですから。
※本文中敬称略
株式会社ビジネスブレイン太田昭和代表取締役社長石川 俊彦
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