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月次決算の実務解説:業務の流れとスムーズな進め方

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2026年10月16日 ジャスネットキャリア編集部

月次決算とは、毎月の会社の業績と財政状態を取りまとめる作業です。法律上の義務はありませんが、多くの企業が導入しており、経理担当者にとっては日々の仕訳や管理業務の成果を毎月確認する重要な仕事です。

一方で「毎月バタバタして締めが遅れる」「何をどの順番で進めればよいかわからない」という悩みを抱える方も少なくありません。また、経理職への転職を考えている方にとっては、「月次決算を一人で回せるか」が求人でよく問われるポイントでもあります。

この記事では、月次決算の定義と目的から、具体的な業務の流れ、締めを遅らせないための工夫、経営判断への活かし方、そして転職でのアピール方法までを、実務の目線でわかりやすく解説します。

目次

■月次決算とは?その定義と目的

(1)月次決算の基本的な定義

月次決算とは、1か月ごとに会計帳簿を締め、その月の損益や財政状態を明らかにする手続きのことです。毎月の取引を集計し、損益計算書や貸借対照表などの資料にまとめて経営陣に報告します。

決算には大きく分けて「年次決算」と「月次決算」があります。年次決算は会計年度ごとに行うもので、会社法、金融商品取引法、法人税法などによって実施が義務づけられています。株主などへの情報提供や、法人税などの税額計算に用いることが主な目的です。

これに対して月次決算は、法律で義務づけられているものではありません。あくまで社内の管理目的で行う決算であり、作成する資料の構成や形式も各社が自由に決められます。

項目 年次決算 月次決算
頻度 年1回(会計年度ごと) 毎月
法的義務 あり(会社法・金融商品取引法・法人税法など) なし
主な目的 株主への情報提供、税額計算 経営状況の迅速な把握や経営判断、年次決算の精度維持
資料の形式 法令・基準に沿った形式 各社独自の形式でよい

(2)月次決算の目的と重要性

法的義務がないにもかかわらず、多くの会社が月次決算を導入しているのは、会社の実績や財務状況、前年同月からの推移などを素早く把握することが、リアルタイムでの経営判断に欠かせないからです。月次決算の主な目的は、次の4つに整理できます。

  1. リアルタイムに経営の現状を把握し、迅速な対応を図る
  2. 年度計画で定めた売上高、粗利、販管費、営業利益の進捗状況を管理する
  3. 年次決算の利益を早期に予測し、精度の高い決算見込みを立てる
  4. 毎月の帳簿整理を確実に行い、より適切な年次決算につなげる

経理担当者にとってのメリットも大きいです。決算整理を毎月行っておけば、年次決算での作業負担が軽くなります。また、仕訳の誤りや計上漏れを早期に発見できるため、決算全体の精度を高く保てます。年度末に1年分のミスをまとめて洗い出すよりも、毎月少しずつ確認するほうが、結果的に効率的で正確な決算につながるのです。

■月次決算の流れと手順

(1)月次決算の基本的な流れ

月次決算は、月末の残高確認から始まり、第10営業日頃の経営報告で完了するのが一般的です。以下はスケジュールの一例です。会社の規模や業種によって日程は異なりますが、全体像をつかむ参考にしてください。

手順 時期の目安 主な作業内容
①現預金の残高確認 月末 現預金の実際有高が帳簿残高と一致しているか確認
②月次棚卸 月末~1日 実地棚卸または帳簿棚卸を実施
③売上高・売上原価の確定 第3営業日頃 請求書控えから売上高を確定し、棚卸結果をもとに売上原価を確定
④販管費の確定 第5営業日頃 毎月発生する経費の月次配賦を行い、販管費を確定
⑤試算表作成・決算整理 第7営業日頃 仮勘定の振替、減価償却費・引当金・経過勘定の計上など
⑥月次決算報告 第10営業日頃 損益計算書・貸借対照表・分析資料をまとめ経営陣に報告

作業の際に確認する主な書類は、現預金出納帳、売掛金残高一覧表、在庫管理表、棚卸表などです。最終的に作成する書類は、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、資金繰り表、そのほか各種分析資料となります。

月次決算の流れをつかもう / 売上高と売上原価の確定と月次配賦 / 試算表の作成
https://career.jusnet.co.jp/keiri_work/2/18.php

(2)重要な手順とその詳細

①売上高の確定

月次決算で最初の山場となるのが売上高の確定です。当月にすでに計上した売上と、当月分の請求書控えを突き合わせ、計上漏れや誤りがないかをチェックします。差異があれば修正仕訳を入れ、当月に計上すべき売上高を確定させます。そのためには、各部門から請求書控えなどを漏れなく提出してもらうことが前提になります。

②売上原価の確定と粗利の算出

売上高が確定したら、次は当月に売り上げた商品にかかった仕入費用、つまり売上原価を確定します。商品小売業や卸売業に関する計算式は次のとおりです。

売上原価=月初商品棚卸高+当月商品仕入高-月末商品棚卸高

月初商品棚卸高は前月の帳簿で確認します。当月仕入高は請求書や帳簿をもとに一覧表を作って合計します。月末商品棚卸高は実地棚卸の集計額を使うのが原則ですが、月次では当月仕入高を売上原価とみなすなど、便宜的な数字を用いることもあります。確定した売上高から売上原価を差し引いた金額が、売上総利益(粗利)です。

③月次配賦による販管費の確定

月次決算に特有の処理が「月次配賦」です。年1回払いの保険料や年2回支給の賞与のように、実質的には毎月発生しているのに、支払月にしか金額が確定しない費用があります。これを支払月に一括計上すると、その月だけ費用が膨らみ、各月の正しい損益がわからなくなります。そこで年間発生額を12で割り、毎月の費用として計上します。

対象となる経費 支払日・金額が確定する時期
賞与 年2回
損害保険料 年1回
生命保険料 契約ごとに異なる
固定資産税 原則年4回
減価償却費 年度末

④試算表の作成

日々の取引は仕訳帳に記録され、総勘定元帳に転記されます。月次決算では、この総勘定元帳から試算表をまとめます。貸借対照表や損益計算書は、この試算表をもとに作成されます。毎月試算表を作っておけば、年次決算の作業量も大きく減らせます。

(3)決算整理前の準備とチェックポイント

試算表を確定させる前には、決算整理の準備として次の点を確認しておきましょう。

  • 現預金の帳簿残高が、通帳・残高証明・現金実査の結果と一致しているか
  • 売掛金・買掛金の残高が、取引先別の残高一覧表と一致しているか
  • 仮払金・仮受金・立替金などの仮勘定が、適切な科目に振り替えられているか
  • 減価償却費、各種引当金(賞与引当金など)が月割りで計上されているか
  • 前払費用・未払費用などの経過勘定が計上されているか
  • 経費精算や請求書の未処理分が残っていないか

決算整理の結果は、精算表にまとめて記録します。精算表は、現金、売掛金、買掛金、貸倒引当金などの勘定科目ごとに、どの項目をどう修正したか、また貸借対照表や損益計算書にどう反映するかを一覧にした書類です。修正の履歴を残しておくことで、翌月以降の作業や監査対応もスムーズになります。

■月次決算を遅滞なく行うための方法

月次決算は、遅くとも翌月上旬~中旬までに報告するのが望ましいとされています。報告が遅れるほど情報の鮮度が落ち、経営判断に使えなくなるからです。締めが遅れる主な原因は、各部署からの書類回収に時間がかかることと、会計処理や確認作業が想定以上に長引くことです。それぞれに事前の対策を打っておきましょう。

(1)書類提出の締切を社内外に周知する

請求書控え、経費精算、仕入先からの請求書など、月次決算に必要な書類の提出期限を明確に決め、社内外に周知します。「毎月第2営業日までに提出」のように固定のルールにすると定着しやすくなります。期限が近づいたらリマインドを送るなど、早めの回収を心がけましょう。

(2)月次決算スケジュールを社内で共有する

経理部内だけでなく、営業部門や購買部門など関係部署とも月次決算のスケジュールを共有します。どの部署が、いつまでに、何を提出するのかが見えていれば、連携がスムーズになり、催促の手間も減ります。

(3)概算を許容する

月次決算はリアルタイムの経営状況を把握することが目的なので、場合によっては概算の数字を使っても構いません。たとえば、請求書が届いていない費用は見積額で計上し、翌月に差額を調整する方法があります。年次決算ほどの厳密さを求めず、スピードと精度のバランスをとることが大切です。

(4)作業の標準化とチェックリスト化

毎月繰り返す作業は、手順書やチェックリストにまとめておきます。担当者が不在でも業務が止まらず、確認漏れも防げます。月次配賦の金額のように毎月同じ処理は、定型仕訳として登録しておくと効率的です。

(5)日次の処理を溜めない

月末にまとめて処理しようとすると、どうしても締めが遅れます。仕訳入力や証憑の整理は日々こまめに行い、月末時点で未処理が残らない状態を目指しましょう。

■月次決算を活用した経営判断

月次決算の価値は、数字を締めることではなく、その数字を経営判断に使えることにあります。損益計算書や貸借対照表に加えて、次のような分析資料を作成すると、経営陣が状況を把握しやすくなります。なお、月次決算には法律上の定めがないため、資料の構成や形式は各社独自で問題ありません。

分析資料 内容と使いどころ
比較損益計算書(予算実績対比) 当月の予算を単月・累計で達成できているかを確認する
比較損益計算書(前期比) 当月の実績を前年同月と単月・累計で比較する
部門別損益計算書 比較損益計算書を部門ごとに作り、経営分析や業績評価に使う
その他の分析資料 受注残高表、売掛金残高表、買掛金残高表、売上高推移表、借入金一覧表、経費推移表、在庫一覧表など

こうした資料から、経営陣は具体的なアクションを判断します。たとえば、予算に対して売上が下振れしていれば、営業施策の見直しや販管費の削減を早めに検討できます。部門別損益で赤字が続く部門があれば、人員配置や事業の継続可否を議論する材料になります。資金繰り表で数か月先の資金不足が見えれば、金融機関への借入相談を前倒しで進められます。

経理担当者は、数字を報告するだけでなく「なぜ前年より粗利率が下がったのか」「どの経費が増えているのか」といった変動の要因まで説明できると、経営陣からの信頼が高まります。月次決算は、経理が経営に貢献できる最も身近な機会といえるでしょう。

■月次決算に関するよくある質問

(1)月次決算はどのように始めるべきか?

まだ月次決算を導入していない会社や、初めて担当する方は、まず「毎月試算表を作る」ことから始めましょう。日々の仕訳を漏れなく入力し、月末に現預金残高と売掛金・買掛金の残高を確認するだけでも、月次の損益はおおむね把握できます。

次の段階として、減価償却費や賞与などの月次配賦、棚卸による売上原価の確定を加えていきます。最初から完璧を目指す必要はありません。経営陣が何を知りたいのかを確認し、必要な資料から優先して整えていくのが現実的です。

(2)月次決算の頻度はどのくらいが理想か?

名前のとおり、月1回の実施が基本です。報告のタイミングは、遅くとも翌月中旬まで、できれば第10営業日前後を目安にするとよいでしょう。上場企業や成長中のスタートアップでは、第5営業日以内の「早期化」を目標にするケースもあります。

なお、資金繰りが厳しい会社や、変化の激しい業種では、売上や現預金残高だけを週次で確認することもあります。自社の状況に合わせて、月次決算を軸に必要な指標を補完する考え方がおすすめです。

(3)経理業務の自動化とシステム化について

月次決算のスピードと精度を上げるうえで、システムの活用は欠かせません。代表的な方法には次のようなものがあります。

  • クラウド会計ソフトで銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を自動作成する
  • 経費精算システムを導入し、申請から承認、仕訳までを電子化する
  • 請求書の受領・発行をシステム化し、電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応する
  • 月次配賦などの定型仕訳をテンプレートとして登録し、入力の手間を減らす

ただし、システムが出した数字をそのまま信じるのは危険です。自動仕訳の勘定科目が正しいか、残高に異常がないかを確認するのは人の仕事です。自動化で浮いた時間を、数字の分析や経営への報告の充実に充てることが、これからの経理に求められる姿といえます。

■月次決算スキルは転職にどのように活かせるか

経理の求人では、「月次決算の経験」が応募条件や歓迎条件に挙がることが多くあります。月次決算は日々の仕訳から試算表、分析資料の作成までを含むため、一通り経験していれば経理の基礎を幅広く身につけていると判断されやすいからです。

転職市場では、経験の段階によって評価が変わります。目安は次のとおりです。

経験の段階 主な業務 想定されるポジション
補助レベル 仕訳入力、経費精算、請求書処理など月次決算の一部を担当 経理スタッフ
一人で締められるレベル 月次決算を一通り担当し、試算表と報告資料を作成 経理担当(中堅)
年次決算・開示まで対応 年次決算、税務申告の補助、開示資料作成まで担当 決算担当、主任クラス
改善・管理レベル 早期化や業務改善、チームの管理、経営への分析報告 経理リーダー、管理職

職務経歴書や面接では、「月次決算を担当していました」と書くだけでは不十分です。次のように具体的に伝えると、実務能力が伝わりやすくなります。

  • 担当範囲 : どの工程からどの工程までを担当したか(例:売上・原価の確定から試算表作成、経営報告資料の作成まで)
  • 規模・特徴 : 会社の売上規模、取引件数、作成していた資料、使用していた会計システムなど
  • 改善の実績 : 締め日を第8営業日から第5営業日に短縮した、チェックリストを導入してミスを減らした、など
  • 経営との関わり : 予実分析や部門別損益の作成を通じて、経営判断にどう貢献したか

特に、締めの早期化や業務改善の経験は、どの企業でも評価されやすいアピールポイントです。現在補助的な業務を担当している方は、上司に相談して担当範囲を広げたり、試算表の分析に関わらせてもらったりすることで、市場価値を高められます。

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■まとめ

月次決算は法律上の義務こそありませんが、経営状況をリアルタイムで把握し、迅速な経営判断を支えるために欠かせない業務です。現預金の残高確認、月次棚卸、売上高・売上原価の確定、月次配賦による販管費の確定、試算表の作成、そして経営報告という流れを押さえておけば、全体像は理解できます。

締めを遅らせないためには、書類提出の締切とスケジュールを社内で共有し、必要に応じて概算も活用することが大切です。さらにシステム化で作業を効率化し、浮いた時間を分析に回せれば、経理としての価値は一段と高まります。

月次決算を一人で回せる力は、経理職の転職市場でも高く評価されるスキルです。日々の業務を一つひとつ積み重ね、担当範囲や改善の実績を具体的に語れるようにしておきましょう。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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