■高卒で経理になれる?
高校卒業という学歴で経理職に就くことは、決して不可能ではありません。確かに大手企業の中には大学卒業を条件とする求人も存在しますが、
中小企業や地域密着型の企業では、学歴よりも意欲や適性を重視する傾向が強くなっています
。
上場企業においても、採用枠を設けているところは多数あります。実際、これを書いている編集部の担当は、新卒のときには上場企業の経理部で働いていましたが、経理部員の1/3は高校卒業後に経理として入社した方々でした。その後のキャリアアップで管理職まで昇進している方も数多く存在します。
経理という仕事は、数字に対する正確性や継続的な学習意欲、そして責任感が何よりも重要な要素となります。これらの資質は学歴とは直接的な関係がなく、個人の努力と姿勢によって身につけることができるものです。
また、近年は人材不足が深刻な業界も多く、企業側も採用の門戸を広げている傾向にあります。特に経理職においては、実務経験や専門資格の有無が学歴以上に評価される場面が増えてきています。つまり、
高校卒業という出発点であっても、適切な準備と継続的な努力によって、経理のプロフェッショナルとして活躍する道は十分に開かれているのです
。
■高卒で経理職に就くための道筋
(1)高卒者の経理職の現状
文部科学省の「学校基本統計(学校基本調査報告書)」(令和6年度版)によると、商業高校からの就職率は34.6%。普通科の高等学校からの就職率は6.2%でした。
高卒者が経理職に就く際の特徴として、まず挙げられるのが地域性です。東京や大阪などの大都市圏では大学卒業者との競争が激しくなる傾向がありますが、
地方都市や中小規模の企業では高校卒業者にも多くのチャンスがあります
。
これは、地方企業が地域に根ざした人材を求めていることや、長期的な雇用を前提とした採用を行っていることが背景にあります。
また、業界による違いも重要なポイントです。製造業や建設業、小売業などの分野では、高校卒業者でも経理職として採用されるケースが多く見られます。これらの業界では実務を通じたスキル習得を重視し、学歴よりも人柄や成長意欲を評価する企業が多いためです。
(2)経理職の求人状況
経理職の求人について
WEBサイト「ジャスネットキャリア」
で詳しく見てみると、現在は比較的求人が多い状況が続いています。特に中小企業においては、経理担当者の退職に伴う補充や事業拡大による増員など、様々な理由で求人が発生しています。
求人の特徴として、未経験者歓迎の案件が増加していることが挙げられます。これは企業側が人材育成に力を入れるようになったことや、経理業務のデジタル化により、従来よりも習得しやすい環境が整ってきたことが要因となっています。また、派遣社員や契約社員からスタートし、実績を積んだ後に正社員登用される道筋も一般的になってきました。
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経理の仕事に求められるスキルと資格
経理として働くために必要なスキルと資格について、それぞれ詳しく見ていきましょう。これらは高校卒業者でも十分に習得可能なものばかりです。
(1)Excelスキル
Microsoft Excelは経理業務において欠かせないツールの一つです
。基本的な表計算から始まり、関数の活用、グラフ作成、ピボットテーブルの操作まで、幅広いスキルが求められます。
経理業務でよく使用される関数としては、VLOOKUP関数やSUMIF関数、IF関数などがあります。これらの関数を駆使することで、会計システムにある大量のデータをExcelに流し込み、必要な情報を効率的に抽出したり、条件に応じた計算を自動化したりすることができます。また、月次や年次の集計作業では、ピボットテーブル機能を使って複雑なデータ分析を行うことも多くあります。
Excelスキルの習得方法としては、書籍やオンライン教材を活用した独学が一般的です。また、職業訓練校や民間のパソコンスクールでも実践的な講座が開催されています。重要なのは、基礎的な操作だけでなく、経理業務に特化した活用方法を身につけることです。実際の業務を想定した練習問題に取り組むことで、より実践的なスキルを磨くことができるでしょう。
(2)会計ソフトスキル
現代の経理業務では、会計ソフトの操作スキルが不可欠となっています。弥生会計、勘定奉行、freeeなど、様々な会計ソフトが存在し、企業によって使用するソフトは異なります。
会計ソフトの基本的な操作としては、仕訳入力、残高照会、帳簿出力などがあります。これらの操作を正確かつスピーディーに行うことで、日常的な経理業務を効率化できます。また、月次決算や年次決算の際には、より高度な機能を使用して財務諸表を作成することもあります。
会計ソフトスキルの習得については、まず主要なソフトの特徴を理解することから始めましょう。多くの会計ソフトは無料体験版を提供しているため、実際に操作してみることで理解を深めることができます。また、各ソフトメーカーが提供する公式の研修プログラムに参加することも効果的な学習方法です。
(3)日商簿記
日商簿記検定は経理職を目指す上で最も重要な資格の一つです
。簿記の知識は経理業務の基盤となるため、高卒で経理を目指す方には特に推奨される資格です。
日商簿記3級は経理の入門レベルとして位置づけられ、個人商店や小規模企業の経理業務に必要な知識を網羅しています
。貸借対照表や損益計算書の基本的な構造、基本的な仕訳ルールなどを学習します。この段階では、経理業務の全体像を把握することが主な目的となります。
日商簿記2級になると、より実践的な内容となり、中規模企業の経理担当者として必要な知識を習得できます。工業簿記の内容も含まれるため、製造業での経理業務にも対応できるようになります。
多くの企業では日商簿記2級以上を経理職の応募条件としているため、できる限り簿記2級の取得を目指すことをお勧めします
。
(4)MOS(Microsoft Office Specialist)
MOSは Microsoft Office製品の操作スキルを証明する国際資格です。特にExcelのMOS資格は、経理職での評価が高い資格の一つとなっています。
ExcelのMOS資格では、基本的な表計算から高度な関数活用、データ分析機能まで、幅広いスキルが評価されます。経理業務で頻繁に使用される機能について体系的に学習できるため、実務での応用力も身につきます。また、PowerPointやWordのMOS資格も、報告書作成や プレゼンテーション作成の際に役立ちます。
MOS資格を持っていても、正直そこまでの大きなアドバンテージにはなりません。ただ、スキルの客観的な証明となるので、就職活動の際のアピールポイントにはなるでしょう。
■高卒で経理を目指すメリット
高校卒業後すぐに経理の道を選ぶことには、大学進学とは異なる独自のメリットがあります。これらのメリットを理解することで、より自信を持ってキャリアを歩むことができるでしょう。
(1)早期に実務経験を積める
高校卒業後すぐに働き始める最大のメリットは、
若いうちから実務経験を積めることです
。経理という職種において、実務経験は非常に価値の高いものとなります。大学生が4年間学業に専念している間に、高卒者は4年分の実務経験を蓄積することができるのです。
実務経験の価値は、単に業務をこなすだけではありません。実際の企業活動の中で経理業務に携わることで、教科書では学べない生きた知識を身につけることができます。例えば、決算期の繁忙期における業務の流れや、取引先との調整方法、システムトラブル時の対応方法など、実務を通じてのみ習得できるスキルが数多く存在します。
また、実務経験を積みながら資格取得に取り組むことで、理論と実践の両面から知識を深めることができます。実際の業務で疑問に感じたことを資格学習で解決し、学習内容を実務で活用するという好循環が生まれやすくなります。
(2)転職の選択肢が広がる
経理スキルを身につけることで、将来的な転職の選択肢が大幅に広がります。経理は全ての企業に必要な職種であり、業界や企業規模を問わず需要があるためです。これは高校卒業者にとって大きな安心材料となるでしょう。
経理経験者の転職市場での評価は年々高まっています。特に実務経験と資格の両方を持つ人材は、多くの企業から引く手あまたの状況です。転職を通じてキャリアアップや年収アップを実現する経理担当者も多く、専門性を活かした働き方が可能になります。
■高卒者が経理職に就くためのステップ
(1)必要な準備と心構え
高校卒業者が経理職に就くためには、適切な準備と心構えが欠かせません。まず最も重要なのは、
継続的な学習に対する意欲と姿勢です
。経理という職種は、税制改正や会計基準の変更など、常に新しい知識をキャッチアップしていく必要があります。
準備段階では、まず自分の適性を客観的に見極めることが大切です。経理業務では数字に対する正確性と集中力が求められるため、細かい作業を継続して行うことが苦にならないかを確認しましょう。また、責任感の強さも重要な要素です。経理は企業の財務情報を扱う重要な職種であり、ミスが企業経営に大きな影響を与える可能性があることを理解しておく必要があります。
学習面での準備としては、まず簿記の基礎知識を身につけることから始めましょう。独学でも構いませんが、通信講座や夜間講座を活用することで、より体系的に学習を進めることができます。並行してExcelスキルの向上にも取り組み、基本的な関数の使い方から始めて徐々に高度な機能まで習得していきましょう。
精神的な準備も同様に重要です。高校卒業という学歴にコンプレックスを感じることがあるかもしれませんが、経理という職種では実力が最も重要視されます。学歴よりもスキルと経験で勝負できる分野であることを理解し、自信を持ってチャレンジしてください。
(2)就職活動のポイント
①応募先の選び方
経理職への就職活動を成功させるためには、ある程度の戦略が必要です。まず、応募先企業の選び方が重要なポイントとなります。大企業よりも中小企業の方が高校卒業者にとってチャンスが多いことは確かですが、企業規模だけで判断するのではなく、企業の成長性や社風、教育制度なども総合的に評価しましょう。
②履歴書や職務経歴書の作成
履歴書や職務経歴書の作成では、取得した資格や学習中の内容を積極的にアピールしましょう。簿記の勉強をしていることや、Excelスキルを磨いていることなど、経理業務への意欲と準備状況を具体的に示すことが重要です。
また、なぜ経理を選んだのか、どのようなキャリアビジョンを持っているのかを明確に説明できるよう準備しておきましょう。
③求人情報の探し方
求人情報の探し方としては、ハローワークや求人サイトだけでなく、地域の商工会議所や税理士事務所からの紹介なども活用しましょう。特に地方では人脈を通じた求人情報が多いため、積極的にネットワークを広げることが効果的です。
派遣会社や人材紹介会社の活用も検討してみてください
。これらの会社では経理専門のコンサルタントが在籍していることが多く、高校卒業者でも応募可能な求人を紹介してもらえる可能性があります。また、派遣社員として経験を積んでから正社員を目指すという段階的なアプローチも有効な戦略の一つです。
■まとめ
高校卒業後に経理職を目指すことは、決して無謀な挑戦ではありません。確かに大学卒業者との競争はありますが、適切な準備と継続的な努力により、十分に実現可能な目標です。
経理という職種の最大の魅力は、学歴よりも実力が重視される点にあります。簿記などの資格取得と実務経験を通じて専門性を高めることで、高校卒業という出発点に関係なく、プロフェッショナルとして評価される道が開かれています。
成功のカギとなるのは、まず基礎的なスキルの習得です。簿記2級の取得を目標に設定し、同時にExcelや会計ソフトの操作スキルを磨いてください。これらのスキルは就職活動での強力な武器となるだけでなく、入社後の業務遂行においても欠かせない基盤となります。
経理のプロフェッショナルとしてのキャリアを築くために、まずは第一歩を踏み出してください。適切な準備と強い意志があれば、必ず道は開かれるはずです。
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