30代後半という年代で経理職への転職を考えている方は、多くの不安や疑問を抱えているのではないでしょうか。この年代での転職は適切な戦略と準備が必ず必要です。成功への道筋を一緒に考えていきましょう。本記事では、30代後半の経理転職について、市場の現状から成功のコツまで、実践的な情報をお届けします。
30代後半の経理転職事情を徹底解説!成功のためのポイントとは?

2025年7月7日ジャスネットキャリア編集部
目次
■30代後半の経理転職事情を理解する
(1)30代後半の経理職市場の現状
現在の経理転職市場において、30代前半までは20代と同様、伸びしろや若さなどの観点をプラス評価と捉え、未経験でも就職しやすい土壌があります。一方、30代後半はそれまでの経験を期待される側面が強くなってきます。多くの企業が経験豊富な経理スタッフを求めており、特に中堅企業や成長企業では、即戦力として活躍できる30代後半人材への需要が高まっています。
経理職の求人は他の職種と比較して安定性が高く、景気の変動に左右されにくい特徴があります。デジタル化の波により業務効率化が進む一方で、より高度な分析業務や戦略的な財務企画への参画が求められるようになり、経験値の高い30代後半の人材は重宝される傾向にあります。
また、働き方改革の影響で、ワークライフバランスを重視する企業が増えており、経理職においてもリモートワークや柔軟な勤務体系を導入する企業が多くなっています。これにより、転職を検討する際の選択肢も広がっています。
(2)転職希望者の増加と競争の激化
一方で、30代後半の経理転職市場には競争の激化という側面もあります。終身雇用制度の変化や副業解禁の流れを受けて、キャリアアップを目指す転職希望者が増加しているのが現状です。
特に大手企業や外資系企業の経理職については、高い専門性と豊富な経験を持つ候補者が多数応募するため、選考基準も厳しくなっています。しかし、これは逆に言えば、しっかりとした準備と戦略があれば、他の候補者と差別化を図ることができるということでもあります。
中小企業やベンチャー企業では、むしろ30代後半の経験豊富な人材を積極的に採用する傾向があり、年収アップや責任あるポジションでの活躍が期待できる環境が整っています。
■30代後半で求められる経理スキル
(1)実務経験と専門知識
30代後半の経理転職において最も重要視されるのは、実務経験の深さと幅広さです。仕訳入力や帳簿管理だけでなく、決算業務、予算管理、資金繰り、税務申告など、経理業務全般にわたる経験が求められます。
特に注目されるのは、月次決算や年次決算の早期化や品質向上に貢献した経験です。これらの経験は、企業の経営スピードアップに直結するため、多くの企業が高く評価します。また、監査法人や税理士事務所との調整経験も、専門性の高さを示す重要な要素となります。
(2)ITスキル
現代の経理業務においては、ITスキルも欠かせません。Excel の高度な関数やピボットテーブルの活用はもちろん、会計ソフトの操作経験、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システムの導入や運用経験があれば、転職市場での価値は大幅に向上します。さらに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入経験やデータ分析スキルを持っていれば、デジタル化を推進する企業からの注目度は格段に高まります。
(3)マネジメントスキルの重要性
30代後半の経理職に期待されるのは、個人の専門性だけでなく、チームを率いるマネジメントスキルです。部下の指導育成、業務の効率化、プロジェクトの推進など、組織運営に関わる経験が重要視されます。
マネジメント経験がない場合でも、後輩の指導や新人研修の担当、業務改善提案の実施など、リーダーシップを発揮した経験をアピールすることで、マネジメント適性をアピールできます。また、他部署との連携やプロジェクトリーダーとしての経験も、マネジメントスキルの証明となります。
組織の中で経理部門の位置づけが変化している現在、経理職には単なる数値の管理者ではなく、経営陣に対する戦略的なアドバイザーとしての役割が期待されています。このような期待に応えるためには、マネジメントスキルが不可欠です。
(4)コミュニケーション能力とチームワーク
経理職は数字と向き合う職種というイメージが強いですが、実際には多くの関係者とのコミュニケーションが必要な職種です。営業部門や製造部門との予算調整、経営陣への財務報告、監査法人や税理士との打ち合わせなど、様々な場面でコミュニケーション能力が求められます。
特に30代後半の経理職には、複雑な財務情報を分かりやすく説明する能力や、異なる立場の関係者の利害を調整する能力が期待されます。これらのスキルは、経理部門の影響力向上と企業価値の最大化に直結するため、転職市場でも高く評価されます。
また、リモートワークの普及により、オンラインでのコミュニケーション能力も重要性を増しています。Web会議での効果的なプレゼンテーション、チャットツールでの的確な情報共有など、デジタル時代のコミュニケーションスキルも身につけておく必要があります。
■30代後半の経理転職に役立つ資格
(1)日商簿記2級の取得
経理職への転職において、日商簿記2級は最も基本的で重要な資格です。30代後半であれば、この資格は必須と考えるべきでしょう。日商簿記2級は商業簿記と工業簿記の両方をカバーしており、実際の企業活動における会計処理の基礎を網羅的に学ぶことができます。
日商簿記2級の取得は、会計の基本的な理解があることの証明となり、転職活動において書類選考を通過する最低条件となることが多いです。また、簿記の知識は実務で直接活用されるため、転職後の業務遂行においても大きなアドバンテージとなります。
既に日商簿記2級を取得している場合は、日商簿記1級への挑戦も検討する価値があります。日商簿記1級は難易度が高く、取得者数も限られているため、転職市場での差別化要素として強力な武器となります。
(2)税理士の科目合格
税理士試験の科目合格は、経理分野における専門知識の証として、高く評価されます。たとえば「簿記論」や「財務諸表論」などの会計系科目は、仕訳・決算書作成などの実務に直結しており、企業の経理担当者として必要な基礎力を身につけていることを示します。
また、法人税法や消費税法といった税法科目の合格は、税務申告書の作成や節税対応など、より専門性の高い業務に対応できる人材であることの証明になります。
■30代後半の未経験者の経理職への転職方法
30代後半での未経験での経理への転職。「もう遅いのでは?」「資格がないと無理?」と不安になる方も多いでしょう。しかし、30代後半から経理職への転職は、正しいアプローチをすれば十分に可能です。
(1)他業種から経理正社員
例えば飲食業であれば「経理事務補助の仕事で経験したレジ締めや発注管理で数字感覚が鍛えられた」といった数字への貢献など、経理職で必要とされる知識や経験に紐づいたエピソードがあれば前向きに受け止められることがあります。ただし、その場合でも経験だけでなく最低でも資格として日商簿記2級を取得するようにしましょう。
(2)派遣から正社員への道
経理職を目指す30代後半の方にとって、派遣は「経験を積む最短ルート」です。派遣では伝票処理や経費精算、売掛・買掛金の管理や会計ソフトの入力など、基礎的な実務を担うことができます。これらを通して履歴書に「経理としての職務経験あり」と書けるようになります。
また、派遣社員には、「紹介予定派遣」という仕組みがあります。定期間(通常3〜6ヶ月)の派遣勤務後に、企業側と本人双方が合意すれば、正社員として直接雇用される仕組みで、この制度を利用して正社員を目指すこともできます。
(3)アウトソーシングから正社員への道
経理アウトソーシングとは、企業の経理業務を外部の専門業者が代行するサービスで、未経験でも採用されやすく、経理の基礎から学べる環境が整っているのが特長です。
主な業務内容は会計ソフト入力や経理処理の代行、請求書発行・送付や月次決算補助になります。業務を通して複数のクライアント企業の経理処理に携わるため、スキルの幅を広げることができます。
また、多くの経理アウトソーシング企業では、契約社員から正社員登用制度を設けています。
■30代後半の経理転職の成功事例
(1)異業種からの転職成功例
製造業の品質管理部門で働いていた35歳のAさんは、経理職への転職を決意しました。全くの未経験でしたが、品質管理で培った数値分析スキルと改善提案の経験を活かし、中堅商社の経理部門への転職に成功しました。
Aさんは転職活動前に簿記2級を取得し、さらに製造業での原価管理経験を経理業務との関連性でアピールしました。面接では、品質改善プロジェクトでのコスト削減実績を具体的な数値とともに説明し、経理業務への応用可能性を強調しました。結果として、前職を上回る年収での採用が実現しました。
この事例から分かるのは、異業種からの転職であっても、これまでの経験を経理業務との関連性で整理し、具体的な成果とともにアピールすることで、企業の評価を得ることができるということです。
(2)年収アップに成功した事例
中小企業の経理部門で働いていた38歳のBさんは、より大きな責任と年収アップを求めて転職活動を開始しました。前職では経理業務全般に携わり、特に決算業務の効率化と内部統制の構築に力を入れていました。
Bさんは転職活動において、決算作業日数の短縮実績や内部統制制度の導入効果を定量的にまとめ、企業価値向上への貢献度をアピールしました。また、部下2名の指導経験と業務改善提案の実績も強調し、マネジメント適性をアピールしました。
結果として、従業員300名規模の成長企業の経理課長として、前職から年収150万円アップでの採用が決定しました。
この事例は、経理業務における具体的な成果を数値化してアピールすることの重要性を示しています。
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■30代後半の経理転職を成功させるためのポイント
(1)キャリアプランの明確化
30代後半の経理転職においては、将来のキャリアプランを明確にしておくことがポイントです。単に「転職したい」という漠然とした動機では、企業からの評価を得ることは困難です。
まず、5年後、10年後にどのような経理担当者になりたいかを具体的に描きましょう。管理職として部下を指導したいのか、専門家として高度な業務に特化したいのか、将来的に CFO を目指したいのか、明確なビジョンを持つことが重要です。
このキャリアプランに基づいて、転職先企業を選定し、面接でのアピールポイントを整理することで、説得力のある転職活動が可能になります。また、キャリアプランが明確であれば、転職後のモチベーション維持にもつながります。
(2)志望動機や自己PRの準備
30代後半の転職では、志望動機と自己PRの質が合否を大きく左右します。これまでの経験を整理し、転職先企業でどのような価値を提供できるかを具体的に示す必要があります。
志望動機については、企業研究を徹底的に行い、その企業の事業戦略や財務状況を理解した上で、自分のスキルがどのように貢献できるかを説明しましょう。一般的な志望動機ではなく、その企業だからこそ転職したいという特別性を示すことが重要です。
自己PRでは、これまでの実績を具体的な数値とエピソードで示し、転職先での再現可能性をアピールしましょう。単に「経験があります」ではなく、「○○の業務で××の成果を上げ、その経験を活かして△△に貢献できます」という構成で組み立てることが効果的です。
(3)具体的な経験を整理する
転職活動を成功させるためには、これまでの経験を体系的に整理し、アピールポイントを明確にする必要があります。経理業務は多岐にわたるため、自分がどの分野でどの程度の経験を積んでいるかを客観的に把握することが重要です。
日常業務だけでなく、特別なプロジェクトや改善活動への参加経験も重要なアピール材料となります。システム導入プロジェクト、業務効率化活動、内部統制制度の構築など、通常業務を超えた経験は高く評価されます。
また、失敗経験やそこから学んだことも重要な要素です。30代後半という年代では、完璧な成功体験よりも、困難を乗り越えた経験や失敗から学んだ教訓の方が、人間的な魅力や成長力のアピールにつながることがあります。
■30代後半の経理転職におすすめの転職エージェント
(1)経理専門の転職エージェントの特徴
経理職の転職を成功させるためには、一般的な転職エージェントよりも、経理・財務に特化した専門エージェントの利用がおすすめです。専門エージェントは経理業務に精通したコンサルタントが在籍しており、業界の動向や企業のニーズを深く理解しています。
専門エージェントの最大のメリットは、求職者のスキルと企業のニーズのマッチング精度の高さです。経理業務の細かな違いや、企業が本当に求めている人材像を正確に把握しているため、的確な求人紹介が期待できます。
また、書類作成や面接対策においても、経理職特有のポイントを踏まえたアドバイスを受けることができます。経理職の転職において重要視される要素や、企業が注目するスキルセットについて、専門的な観点からのサポートが受けられます。
(2)転職エージェント利用のメリット
経理・財務・税務分野に特化した転職エージェントとして、ジャスネットキャリア(ジャスネットコミュニケーションズ)は30代後半の経理転職において特におすすめです。同社は会計業界に20年以上の実績を持ち、豊富な求人案件と専門性の高いサポートを提供しています。
ジャスネットの特徴は、単なる求人紹介にとどまらず、キャリア形成の長期的な視点でのアドバイスを提供していることです。30代後半という重要な転職タイミングにおいて、将来のキャリアプランを見据えた転職戦略を一緒に考えてくれます。
また、同社が開催するセミナーや勉強会は、最新の会計トピックスや転職市場の動向を学ぶ貴重な機会となります。これらの情報収集活動も、転職活動の成功につながる重要な要素です。
■まとめ
30代後半の経理転職は、適切な準備と戦略があれば必ず成功できる挑戦です。現在の転職市場では経験豊富な経理担当者への需要が高く、この年代ならではの強みを活かすことで、年収アップや責任あるポジションでの活躍が期待できます。
成功の鍵は、自分のスキルと経験を正確に把握し、それを企業のニーズと結びつけてアピールすることです。資格取得による専門性の向上、具体的な実績の整理、明確なキャリアプランの策定など、転職活動前の準備が成果を大きく左右します。
また、専門的な転職エージェントの活用により、より効率的で効果的な転職活動が可能になります。30代後半という人生の重要な節目において、理想のキャリアを実現するために、しっかりとした準備と戦略的なアプローチで転職活動に臨みましょう。
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