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経理職の転職市場に見る、経験年数と求められるスキルを解説

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2025年8月5日 ジャスネットキャリア編集部

経理職は企業の数字面での基盤を支える重要な職種として、安定した需要がある職業のひとつです。しかし、転職市場においては経験年数が大きな評価要素となることが多く、求職者にとって自身のキャリアレベルを正確に把握することが成功への第一歩となります。

本記事では、経理職の転職市場における経験年数の意味や求められるスキル、そして成功に向けた戦略について詳しく解説していきます。

目次

■経理転職における経験年数の重要性

(1)経験年数は転職市場で評価される?

経験年数はあくまで“参考指標”であり、実際の評価は「担当範囲の広さ」「自己完結できる業務のレベル」「業務改善・効率化の実績」など、質的な面が中心です。

例えば、月次決算の一連の流れを理解し、効率的に処理できるようになるには 最低でも1年から2年の実務経験が必要 とされています。さらに、年次決算や税務申告といった業務については、さらに経験を積む必要があるとされています。

たとえば「5年やっていても請求書発行と仕訳入力だけ」の人より、「3年で決算や税務申告まで経験済」の方が評価される場面も多いです。

また、経理職は他部署との調整や外部の税理士、監査法人との連携も重要な業務の一部です。これらのコミュニケーション能力や調整力も、実際の業務経験を通じて培われるものであり、経験年数はこうした総合的な業務遂行能力の指標として機能しています。

(2)企業が求める経験年数の目安

企業が経理職の採用において求める経験年数は、募集するポジションのレベルや企業規模によって大きく異なります。一般的な傾向として、 エントリーレベルの経理アシスタントや経理事務職では、未経験者や1年未満の経験者も歓迎される場合が多くあります 。これらのポジションでは、基本的な簿記知識や数字入力の正確性、そして学習意欲が重視される傾向にあります。

一方、経理担当者としての独立した業務を任せられるレベルでは、 3年以上の実務経験 を求める企業が多数を占めています。この段階では、日常的な会計処理から月次決算までひと通りの業務を経験していることが期待され、上司の指示を受けながらも独力で業務を進められる能力が求められます。

主任や係長クラスの中間管理職では、5年から7年程度の経験が一般的な要件となります。このレベルでは、部下の指導や業務管理、そして経営陣への報告業務なども含まれるため、 実務経験に加えてマネジメント能力 も必要とされます。

経理課長やマネージャークラスでは、10年以上の経験を求められることが一般的です。このポジションでは、経理部門全体の統括に加え、経営戦略への参画や内部統制の構築など、より高度な業務が期待されるため、長期間にわたる多様な経験が不可欠となります。

■経理職に求められるスキルと資格

(1)基本的な経理スキル

経理職で成功するためには、まず基礎的な会計知識が欠かせません。複式簿記の原理を理解し、仕訳処理を正確に行える能力は最も基本的なスキルです。これには、資産、負債、資本、収益、費用といった会計要素の理解と、それらの増減が財務諸表にどのような影響を与えるかを把握することが含まれます。

会計システムの操作方法だけ学べば小手先の業務はできてしまうというのが、正直なところですが、それでは後々、影響が出てしまうでしょう。

財務諸表の作成と分析能力も重要なスキルのひとつです。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の作成はもちろん、これらの数値から企業の財務状況や経営成績を読み取り、経営陣や関係者に分かりやすく説明できる能力が求められます。特に近年では、単なる数値の集計にとどまらず、データを基にした経営判断の支援ができる人材の価値が高まっています。

税務知識も経理職には不可欠です。法人税、消費税、源泉所得税など、企業が関わる各種税制について基本的な理解を持ち、適切な税務処理ができることが期待されます。税制は頻繁に改正されるため、継続的な学習姿勢も重要な要素となります。

いきなりすべてを理解するのは難しいので、少しずつ覚えていく姿勢が必要です。

システム操作スキルも現代の経理職には欠かせません。会計ソフトウェアの操作はもちろん、ExcelやAccessなどのOfficeソフトを活用したデータ分析や資料作成能力も重要です。特にExcelについては、関数やピボットテーブル、マクロなどの高度な機能を使いこなせることで、業務効率化に大きく貢献できます。

(2)経理職に役立つ資格

経理職のキャリア形成において、資格は客観的なスキル証明となる重要な要素です。日商簿記2級程度の基礎知識は求められますが、 企業が重視するのは「資格+実務力」です。資格だけで年収が跳ね上がることは稀で、実務でどう活かせるかが問われます

■経験年数別の転職成功率

(1)3年未満の経験者の転職事情

経理経験3年未満の転職者は、転職市場において「第二新卒」や「若手経験者」として位置づけられます。若手層のニーズはあるものの、「ルーティン業務に留まる」場合が多く、転職してもステップアップとは言えないケースもあるため、キャリア形成を重視するなら注意が必要でしょう。

3年未満の経験者が転職を成功させるためには、 これまでの経験で身につけたスキルを具体的にアピールすることが重要 です。たとえ短期間であっても、日次の仕訳処理、売掛金・買掛金の管理、給与計算の補助など、実際に担当した業務内容を詳細に説明し、その中で発揮した正確性や効率化への取り組みを強調することが効果的です。

この段階の転職者には成長ポテンシャルが重視される傾向があります。資格取得への意欲や学習計画、将来のキャリアビジョンを明確に示すことで、採用企業に対して長期的な戦力としての価値をアピールできます。

特に日商簿記2級の取得や税理士試験への挑戦など、具体的なスキルアップ計画があることは大きなプラス要素となります。

(2)3年以上の経験者の転職事情

経理経験3年以上の転職者は、転職市場において 最も需要の高い層 のひとつです。この段階では基本的な経理業務をひと通り経験し、独力で業務を遂行できる能力を持っているとみなされるため、多くの企業から引く手あまたの状況となります。転職成功率も他の経験年数と比較して高く、条件面での交渉余地も大きくなります。

3年以上の経験者に求められるのは、実務の確実性です。月次決算の一連の流れを理解し、期限内に正確な処理ができることは最低限の要件となります。さらに、予算実績管理や原価計算、税務申告の補助など、より専門性の高い業務経験があることで、転職先の選択肢が大幅に広がります。

この層の転職者には、マネジメント能力の芽生えも期待されます。後輩指導の経験や、部署間調整の実績があることは高く評価されます。また、業務改善提案や効率化の取り組み実績があれば、単なる実務者としてではなく、組織の発展に貢献できる人材として認識されます。

転職活動においては、これまでの経験をより戦略的にアピールすることが重要です。担当した業務の規模や複雑さ、取り扱った取引の特殊性、導入したシステムや制度の効果など、定量的な成果を含めて説明することで、採用企業に対して具体的な貢献イメージを提供できます。

(3)10年以上の経験者の転職事情

10年以上の経理経験を持つ転職者は、転職市場において「ベテラン層」として位置づけられます。この層の転職成功率は、求める条件の高さと市場での競合の激しさから、他の経験年数と比較してやや複雑な傾向を示します。「ポジションが限られる」「給与・勤務地の希望がシビアになりがち」でミスマッチが起きやすいだけで、 スキル・実績次第では、CFO候補や経理部長としての高年収転職も十分可能 です。

10年以上の経験者に求められるのは、単なる実務能力を超えた戦略的思考力と組織運営能力です。経理部門全体の業務設計や内部統制の構築など、企業の重要な意思決定に関わる高度な業務経験が評価されます。

また、この層では業界特有の会計処理や制度対応の経験も重要な差別化要因となります。上場企業での開示業務、連結決算の実務、国際会計基準への対応、税務調査への対応など、専門性の高い分野での実績があることで、特定の企業や業界からの強い需要を獲得できます。

転職活動においては、これまでのキャリアを俯瞰的に整理し、一貫したストーリーとして語れることが重要です。各職場でどのような課題に直面し、どのような解決策を実行し、どのような成果を上げたかを体系的に整理することで、経営層に対して説得力のあるプレゼンテーションが可能となります。

■経理転職市場のトレンド

(1)経験年数別の年収相場

*年収はジャスネット調べ

経理職の年収レンジとしては、未経験者で年収320~380万円程度、2~3年の経験者で年収400万~480万円程度が一般的な水準となります。東京都心や大阪の中堅〜大手企業では、3年未満でも400万超の提示があるケースも珍しくなく、特に月次決算や連結・開示経験があると、600万円以上のオファーも現実的です。

3年以上10年未満の中堅層を対象とした求人では、即戦力としての活躍が期待されます。月次決算業務の完全な独立処理、予算管理、原価計算、税務申告書作成の補助など、より高度で専門的な業務を担当することが前提となります。年収レンジは年収400万円台後半~700万円程度となり、特に管理職候補としての採用では、さらに高い水準が期待できます。

10年以上の経験者を対象とした求人では、部門管理者や専門家としての役割が中心となります。経理部門の統括、内部統制の構築と運用、経営陣への数字の報告、企業の経営戦略に直接関わる業務が含まれます。年収レンジは年収600万円以上となり、特に上場企業や外資系企業では、より高額な報酬が提示されることが一般的です。

(2)フレックスやリモート勤務の求人

近年の働き方改革の流れを受けて、経理職においてもフレックスタイム制やリモート勤務を導入する企業が増加しています。これらの柔軟な働き方を提供する求人は、特に子育て世代や介護を抱える社員、通勤時間の短縮を希望する転職者から高い人気を集めています。

フレックスタイム制を導入している企業では、月次決算や年次決算などの繁忙期を除き、始業時間や終業時間を一定の範囲内で調整できる制度が一般的です。コアタイムを10時~15時に設定し、8時~19時の間で労働時間を調整できるパターンが多く見られます。このような制度は、プライベートとの両立を重視する転職者にとって大きな魅力となっています。

リモート勤務の実態としては、 クラウド会計や電子証憑への対応が進んだ企業に限られ 、紙文化の残る中小企業では、フルリモートは難しいのが現実です。特に「請求書処理」「押印文化」「紙証憑対応」が残っている企業では出社が基本です。

柔軟な働き方を導入している企業では、自律的な業務管理能力やコミュニケーション能力がより強く求められる傾向があります。上司や同僚との連絡を密に取り、進捗状況を適切に報告できる能力、そして在宅勤務環境でも高い集中力を維持できる自己管理能力が重要な評価要素となります。

■転職エージェントの活用法

(1)転職エージェントの選び方

経理職の転職を成功させるためには、適切な転職エージェントの選択が重要な要素となります。転職エージェントは大きく総合型と特化型に分類され、それぞれ異なる強みと特徴を持っています。これらの特性を理解し、自身の状況に最も適したエージェントを選択することが成功への近道となります。

総合型転職エージェントは、幅広い業界と職種の求人を扱っており、求人数の多さが最大の特徴です。大手企業から中小企業まで、さまざまな規模の企業の求人を保有しているため、選択肢の多さを重視する転職者には適しています。また、全国展開している場合が多く、地方での転職を検討している場合にも有効です。

一方、経理職特化型の転職エージェントは、より専門性の高いサービスを提供しています。経理業務の特殊性や業界の動向を深く理解したコンサルタントが担当するため、より的確なアドバイスや求人紹介を受けることができます。

ジャスネットは、人材紹介だけでなく人材派遣業も行っています。このことで、エージェントは 人事部だけでなく、経理部門の部長や課長とも直接繋がっています 。企業経理部の事情に精通しているので、あなたに合った企業の経理部をご紹介することができます。

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(2)エージェントを活用した転職成功のポイント

転職エージェントを効果的に活用するためには、まず 自身のキャリアの棚卸しを徹底的に行う ことが重要です。これまでの業務経験を時系列で整理し、担当した業務内容、取り扱った取引の規模、使用したシステム、取得した資格、業務改善の実績などを具体的にまとめることで、エージェントに対して正確で詳細な情報を提供できます。

転職理由と希望条件の明確化も重要なポイント です。年収アップ、キャリアアップ、ワークライフバランスの改善、業界チェンジなど、転職の主要な動機を明確にし、それに対応する具体的な希望条件を設定することで、より的確な求人紹介を受けることができます。ただし、すべての希望を満たす求人は稀であるため、優先順位を明確にしておくことも大切です。

面接対策においても、転職エージェントの支援を最大限に活用しましょう。多くのエージェントでは、企業別の面接対策や想定質問の共有、模擬面接の実施などのサービスを提供しています。特に経理職の面接では、専門的な質問が多く出される傾向があるため、事前の準備が成功の鍵となります。

また、転職エージェントとは継続的にコミュニケーションを取ることが重要です。定期的な進捗報告や市場動向の確認、新着求人の紹介など、積極的に情報交換を行うことで、より良い転職機会に巡り会う可能性が高まります。複数のエージェントを併用する場合は、それぞれとの連絡状況を適切に管理し、重複応募を避けるよう注意が必要です。

■経理転職の成功事例

実際の転職成功事例を通じて、経理職の転職における成功要因を具体的に見ていきましょう。

【ケース1】中小企業から大手企業へ転職したAさんの場合

Aさんは経理経験5年で、前職では従業員100名程度の製造業で経理全般を担当していました。転職のきっかけは、より大きな規模での経理業務を経験し、スキルアップを図りたいという意欲でした。
Aさんの転職成功の要因は、前職での幅広い業務経験を体系的に整理し、大手企業でも通用するスキルとして再構築したことにあります。特に、ERPシステムの導入プロジェクトに参画した経験や、月次決算の早期化に取り組んだ実績を具体的な数値とともにアピールしました。また、転職準備期間中に簿記1級を取得し、より高度な会計知識を身につけていることも評価されました。

【ケース2】異業種への転職を成功させたBさんの場合

Bさんは商社で7年間経理業務に従事した後、IT業界への転職を実現しました。商社とIT業界では会計処理や商習慣が大きく異なるため、当初は転職の困難が予想されました。しかし、Bさんは商社での国際取引や外貨建て取引の経験、そして複雑な商流における売上認識の実務経験が、IT業界の多様なビジネスモデルにも対応できる応用力として評価されました。

【ケース3】子育てとの両立を実現させたCさんの場合

Cさんは出産を機に前職を退職し、3年間のブランクを経て経理職に復帰しました。ブランク期間中は簿記2級の取得と会計ソフトの操作練習を継続し、復職への準備を怠りませんでした。転職活動では、時短勤務や在宅勤務の制度が充実している企業を中心に応募し、限られた時間でも高い生産性を発揮できることをアピールしました。

■まとめ

経理職の転職市場において、経験年数は確かに重要な評価要素のひとつですが、それだけがすべてではありません。重要なのは、限られた経験の中でどれだけ深く学び、どのような付加価値を提供できるかということです。

未経験者や経験の浅い転職者であっても、強い学習意欲と明確なキャリアビジョンを持っていれば、十分に転職成功の可能性があります。一方、豊富な経験を持つベテラン層においても、変化する会計基準や新しい技術への対応能力が求められており、継続的な学習姿勢が重要となります。

転職を成功させるためには、自身の経験とスキルを客観的に評価し、市場のニーズと照らし合わせて戦略的にアプローチすることが必要です。転職エージェントの活用や資格取得への取り組み、そして具体的な成果に基づいた効果的な自己PRの構築など、多角的な準備が成功への鍵となります。

経理職は、企業経営の根幹を支える重要な職種として、今後も安定した需要が見込まれています。デジタル化やAIの進歩により業務内容は変化していくものの、財務データの分析や経営判断への参画など、より付加価値の高い業務にシフトしていく傾向があります。

このような環境変化を好機と捉え、継続的なスキルアップと柔軟なキャリア発展を心がけることで、経理職としての市場価値を高め、理想的な転職を実現することができるでしょう。経験年数というひとつの指標にとらわれることなく、自身の強みを最大限に活かせる転職戦略を構築することが、成功への最短距離となります。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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