■経理のスキルアップとは「業務の高速化」のことなのか

経理のスキルアップとは、単なる業務スピードの向上ではありません。

業務を無理なく計画的に進めることで、完了の時間を早めることです。

ミスが発生しないよう落ち着いて取り組み、適宜チェックを入れながらも作業時間を大幅に削減し、結果として作業完了が大幅に前倒しできる方法を具体的に提案いたします。

そのために必要不可欠なのがAIをはじめとしたデジタルツールです。

■経理DXのそもそもの目的は？

経理DXという言葉を耳にする機会を増えてきたかと思います。これは、経理部門にデジタル技術を取り入れて、業務スムーズに遂行したり、効率化を図ったりすることを指します。

経理で働くみなさんも、コロナ禍にリモートワークを経験した方が多くいらっしゃるかと思います。クラウド会計システム（記帳ソフト）やクラウドを介してのExcelといったツールやファイル共有なども毎日当たり前のように使用しているでしょう。また企業によっては、RPAの導入をしているところもあるかもしれません。

パソコンの普及により紙の帳簿は経理の現場から姿を消し、今や経理はデジタルツール抜きでは成り立たなくなっています。

しかしこういったツールはあくまで道具です。これからは、経理で働く人も減っていく時代。それを使う個々人がスキルを高め、効率的に成果をあげていく方針をとらなくては、経理でのスキルアップ、キャリアアップは望めません。

■Excelの機能より大局的なスキル基盤を身につける

この記事は会計システムやExcelの機能を多数紹介するものではありません。

「経理が仕事の中でどのようにツールを使用していくべきか」という、その“方針”を示したものになります。

もちろんExcelの便利な機能や戦術的テクニックも紹介しますが、短期的な知識だけではなく、それを使ってどのように経理業務を高速化すればいいかの長期的戦略をマスターして欲しいと思っているのです。

■具体的にどうすればよいか、７つの戦略

では大局的なスキルを身につけるには具体的にどのようにすればいいのか、今後は全７章に分けて、１章で１つずつその戦略を説明していきます。

Strategy１：スケジュールを“見える化”する

経理スキルアップのためにはスケジュール管理が非常に重要です。

ここではスケジュール管理のためのツールとして、Excelを使ったスケジュール表の作成を紹介します。また作成したスケジュール表を守っていくためのコツも合わせてご提案します。

Strategy２：情報はしっかり整理整頓

経理スキルアップの意外な壁になるのは、情報を探すことに余計な時間が生じてしまうことです。

情報を常に整理整頓し、必要なときに必要な情報が取り出せるようにしておけば、経理スピードは格段に上がります。

Strategy３：美しい元帳を作成する

情報の整理整頓にもつながることですが、会計システムから出力される元帳もまた、整然と作りこまれていくべきものです。

帳簿は単に情報を入力すれば終わりではなく、その内容を元に次の作業が生まれるものです。具体的には補助科目や相手先といった、会計システムに備わっている機能をフル活用することになります。

Strategy４：手作業をいかに減らしていくか

手作業は時間がかかるうえに、ミスのリスクから逃れることができません。いかに手作業を排除しAIツールに任せてしまうかということが、現代の経理に求められる発想です。

この章ではどのように手作業を減らしていくか、そのテクニックを説明していきます。

Strategy５：Excelシートを作りこむ

経理の現場では会計システムと並んで、Excelが大活躍していると思います。

ここではそのExcelで作られた作業シートを、より使いやすくする方法を徹底的に追求します。ポイントは「入力しやすく」「わかりやすく」「ミスしにくく」の３点です。

簡単に実践できる具体的なテクニックを多数ご紹介しますので、ぜひ試してみてください。

Strategy６：効果的かつ効率的なチェックを実施する

人間である以上、ミスを完全に防ぐのは不可能ですが、ミスが発見されると作業のやり直しが発生するため、適切なチェックの方法を身につける必要があります。

自己チェックはやみくもに行っても意味がありません。

どのようにチェックしていくか、どのようにミスを発見していくか、適切なチェックを意識すれば、かならずミスは減っていきます。

Strategy７：比較分析で異常値を発見する

経理にとって、異常値に対する嗅覚は非常に重要なスキルです。

経理のミスは異常値となって財務諸表上に表れますので、経理はその原因を説明できなくてはなりません。

異常値を探す基本は比較分析を用いることです。ここではどのように比較分析することが異常値発見に有用か、その方法を説明します。

今後の全7回に渡り、説明をしていきます。