【第11回 法人税申告業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
*上記ランクについてはAが代替危険度が高く、BCの順で低いものと予想する。

日本で最も数が多い3月決算法人の決算期を迎える6月。今年は、空前絶後の災害下で多くの経理現場がテレワーク等の慣れない環境のなか、何とか決算を終え、安堵していることでしょう。
こうした決算手続きにおいて、税務は経理現場の中でも比較的経験の長い担当者が行うベテラン経理職の業務というイメージです。こうした専門的な業務はAI時代においてどのように変わっていくのでしょうか。
1.意外に低い大企業における税務の重要性
会計事務所の経験がある経理部員が、経理現場でまず驚くことが企業経理における税務の重要性の低さではないでしょうか。
中小企業においては、その年に支払う税金がいくらになるのかは大問題。毎月のように税理士センセイと打ち合わせをし、納税計画や資金繰りを考えたりと経理業務における重要性のウエイトの高い業務です。
しかし、多くの大企業で毎月のように税理士が帳簿の監査を行うようなことも納税について打ち合わせするようなこともなく、そもそも申告書作成業務自体を税理士に委託することすらない企業が多いというのが現状です。
また、税務を行う担当者は税理士資格がある者などの税務に明るい者でもなく、ジョブローテーションで税務担当になるというケースがほとんどなのではないでしょうか。
2.進まない電子申告制度と申告の義務化
こうした背景から、顧問税理士が就く中小企業では今や当たり前となっている「電子申告」を取り入れている企業は少なく、多くの企業が紙で作った申告書に代表印を押印し、たくさんの添付資料を添えて提出していたという状況だったのです。
中小企業では考えられない話ですが、担当税理士がいない中では、毎月のように申告に触れる会計事務所と異なり、年に1回、e-taxソフトに申告データを入力し、電子証明書を添付し送付するという複雑な仕組みの電子申告を行うことは確かにハードルが高いと言えます。
こうした背景から、平成30年度の税制改正では、事業年度開始時において資本金の額等が1億円を超える法人に対し、電子申告が義務化されました。
そのため、多くの企業でこれに対応するための税務ソフトの入れ替えを行っています。

3.申告の義務化がもたらすテレワークへの影響
ところで、経理業務の完全テレワーク化を阻む一因として押印の作業があります。
(参照『ポスト・コロナ戦略 ~経理部はコロナとどう戦うのか~【企業経理部編】』)
もともと、国により、オリンピック期間に備えたテレワーク化を推奨していたこともあり、これを機に内部の稟議書などの意思決定のフローは、なるべく出社せずに行わるようシステム化した企業は多いといわれています。
しかし、こうした企業においても最後まで押印のために出社する必要があったのが、代表印の押印を求められる行政機関に関する書面です。
行政手続きに関しては、国が少しずつ電子化を進めるものの、企業内では年に数回程度の作業のためにシステム導入をすることもできず、これらを利用できる環境になかったのです。
しかし、義務化されたことを機に積極的にシステム導入し、税務業務においてもテレワーク環境下で対応できるようになった企業も多いようです。企業にとって緊急性の低い業務についても国が積極的に関与していくことでIT化が進んでいく好事例といえるでしょう。
4.これからの税務業務の在り方と経理
会計事務所などと異なり、毎年同じ項目を同じように処理すれば申告書が作成できてしまう大企業にとって税金はこれまで業務上発生する費用の一部という捉え方でしかありませんでした。
しかし、こうした「税金を計算する」という作業に関しては、国の方針もあり、よりIT化が進んでいくことでしょう。
2020年度からは年末調整も各金融機関などの証明書を電子データでやり取りできるよう、整備されています。こうしたIT化の流れを積極的に取り入れることは、テレワークを促進させ、より経理業務の効率化に寄与することでしょう。

5.経理部署が本当に求めている人材
しかし、人材難といわれている経理部署において、上層部が本当に探したい人材は「国際税務」に明るい人だといいます。
多くの企業が日本国内におけるマーケットの縮小により、海外に活路を見出しています。今や売上の半数以上が海外事業で占める企業も数多くあるほどです。国際税務には定型的に済ますことができない問題が山ほどありますし、専門性の高い分野です。
また、M&Aなどの特殊なケースでも、税務上の取扱いを問われるケースは多いのです。そのため、これまでのような後処理の税務を行っていては、大幅に資金をロスしてしまいます。税務分野においては、案件を事前に把握し、税務に関するメリット、デメリットを考慮したうえで経営者層に意思決定に関する提案ができる真の意味での税務プロフェッショナルが求められているのです。
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