■ 会計事務所・税理士法人の仕事内容を知る(point1)
同じ経理・会計の仕事でも、会計事務所・税理法人と事業会社の違いはなんなのでしょうか。
その違いや会計事務所・税理士法人での業務内容の特徴を知ることで、「なぜ会計事務所・税理法人で働きたいのか」という志望動機は、よりはっきりしたものになります。
ご自身の得意分野や目指す方向性と会計事務所・税理法人の特徴を照らし合わせ、今後のキャリアステップの参考にしてみてください。
(1)会計事務所と事業会社の経理業務の違いとは
まず大きな違いとして挙げられるのは、1社の会計を扱うのか、複数社の会計を扱うのかということです。
1.事業会社の経理業務とは?
誰に対して業務を提供するのか?
事業会社の経理は、決算など自社の数字に関わる業務のみとなります。
経費精算や給与計算は自社の従業員のためであり、決算業務は自社の財務状況を明らかにし納税額を確定するために必要です。また、その数字は社長をはじめとした経営陣が経営判断のために必要となるものです。
上場している企業であれば、有価証券報告書の作成は株主などのステークホルダーが適切に投資の判断をするためとも言えますが、それも最終的には自社の経営につながります。
2.会計事務所・税理法人の仕事内容とは?
① 誰に対して業務を提供するのか?
会計事務所も同様に企業の会計に携わりますが、中小企業や個人事業主が主な顧客になります。経営者の右腕として、経営判断に必要な決算書類や税務書類の作成、税務業務の代行を請け負います。
担当者はクライアントを何社も担当しますので、並行して様々な規模、業態の経理業務を経験する
ことができます。
また、税理士や会計事務所のスタッフは、単に数字を処理するだけではありません。経営者と直接対話し、経営課題を数字から読み解き、解決策を提案する機会が頻繁にあります。「来期の売上目標を達成するためには何が必要か」「新規事業への投資は適切か」「事業承継をどう進めるべきか」といった経営の根幹に関わる相談を受けることも少なくありません。
一般企業の経理が「自社のための会計処理」であるのに対し、税理士の仕事は「クライアント企業の経営を支える専門サービス」という位置づけになります。この違いを理解することが、税理士業界でのキャリアを考える第一歩となります。
② 会計事務所・税理法人の業務内容は?
基本的に、会計事務所・税理士法人は事業会社の税務・会計業務を外部として受託しているので、業務の内容は事業会社の経理と共通するところが多いです。
会計事務所・税理士法人ではそれだけではなく、そのクライアントの「税務顧問」を引き受けて、経営サポートまで行う場合もあります。経営サポートとは、経営相談や節税対策、税務調査、M&A、事業承継などのさまざまな相談に乗るような仕事です。
所員は、「会計の専門家」として最新の高度な会計サービスを提供します。
③より専門性の高い業務
より専門性の高い業務の一つに、税務調査への立会いがあります。税務署から調査の通知を受け、調査官が来訪した際には、税理士が質問への対応を行います。帳簿や領収書などの資料を説明し、税務処理の根拠を示すことで、クライアントの権利を守ります。税務調査は経営者にとって大きな負担となりますが、信頼できる税理士がそばにいることで、安心して調査に臨むことができます。
その他にも、以下のような違いがあります。比較材料にしてみてください。
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会計事務所・税理士法人
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事業会社
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業務量
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担当する企業数や規模に比例する(平均10~20社ほど)
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企業数、規模に比例して業務量も多くなる傾向がある
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会社の規模や配属先によって異なるが、1年を通じで業務量に大きな変動は少ない
ただし繁忙期、本決算、上場準備、特殊なプロジェクトの発生に伴い業務量が増えることも
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会計ソフト
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弥生、ミロク(MJS)、ICS、勘定奉行、財務応援、魔法陣、会計王、TCA、JDL、freee、マネーフォワード、A-SaaS
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弥生、勘定奉行、ERP(SAP等)
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外出頻度
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毎月、隔月、四半期、年一などクライアントとの契約に応じて発生
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基本的に社内でも業務が多い
支払業務など担当している場合は銀行などへの外出がある
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(2) 会計事務所は忙しい?!繁忙期はいつ?
「会計事務所や税理士法人の仕事はすごく忙しい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん、それぞれの事務所のクライアント数や専門としている分野、事務所の組織規模などによって異なりますが、繁忙期の一般的なトレンドというものが存在します。
まずはこちらの表をご覧下さい。
この表からも分かるとおり、経理業務の年間スケジュールは具体的に決まっています。
そのため、クライアントの業務を何社も請け負っていると、その時期の業務量は必然的に増加し、繁忙期が発生するのです。
しかしこの繁忙期・閑散期を利用して、フレキシブルな働き方もできるというのが、会計事務所・税理士法人の特徴です。また現在ではクラウドワークやリモートワークを推進している事務所も増加しており、よりワークライフバランスに配慮した働き方が選べるようになっています。
なお、会計事務所が請け負うことが多い「法定事務」に関する詳しい内容は、こちらの
「経理カレンダー【年間スケジュール】」
をご参照下さい。
いつまでに何の書類を提出しなければならないのか、またその提出書類の記入方法や、業務の具体的な手順などについても解説しています。こちらの各月のカレンダーを見ることによって、繁忙期に何をするべきなのかを学ぶこともできますので、実務で活用するのもおすすめです。
■ 会計事務所・税理士法人での働き方を知る(point2)
これまで会計事務所・税理士法人特有の業務内容や事業会社との違い、年間の繁忙期などをご説明してきましたが、会計事務所・税理士法人の皆さんは実際にはどのような働き方をしているのでしょうか。
(1)税理士を目指しながら働く
会計事務所や税理士法人は、その名の通り会計・税務分野のプロフェッション集団です。
もちろん所員には税理士資格を持っている人もいますが、例えば税理士の科目合格者や、試験合格を目指して勉強中という方も多く活躍しています。
前述の
「(2)会計事務所は忙しい?!繁忙期はいつ?」
にもあるように、比較的業務量が落ち着く閑散期の頃、税理士試験が実施されるということもあり、事務所によっては「試験休暇」を設けているところもあります。
(2)在宅スタッフとして働く
会計業界では、クラウド会計ソフトが大幅に普及しました。現在は個人事業主や小規模事業者、会計事務所での利用が中心ですが、この流れは中規模企業から大企業にも広がりつつあります。
また現在も会計人材にとっての売り手市場は続いており、事務所経験者を増強したい事務所にとっては採用難の傾向が続いています。特に開業して数年ながら、着実に業務を拡大している若い世代の会計事務所の所長からは「経験者の応募が少ない」「業務スペースに限りがある」などの声が寄せられております。
一方で、当社の登録者でも子育てや介護などの理由で、会計事務所の仕事に復職したくてもできない方々が多数いらっしゃるという現状があります。
このようなニーズを解決する手段として、コロナ禍以降のここ2~3年で
正社員ながら、在宅スタッフ
を選ぶという方が増えています。コンテンツの最後に求人をまとめています。
■ 会計事務所・税理士法人で働くための具体的な方法を知る(point3)
「会計事務所や税理士法人は、ハードルが高くて就職するのが難しい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
ポジションによっては、公認会計士や税理士などの資格を持っている人を募集している求人もありますが、会計事務所で求めているのは有資格者だけではありません。
資格よりも実務を重視する会計事務所も多くあります。業務の内容によって求めるスキルは異なりますので、ご自身の経験と照らし合わせて求人情報を見てみましょう。
(1) 会計事務所・税理士法人の転職活動時期
自分にあった求人との出会いは、いつ訪れるかはわかりませんが、
「(2)会計事務所は忙しい?!繁忙期はいつ?」
でも解説したように、業務の繁忙・閑散期があります。その業務の波によって、求人の数にもトレンドがあります。
繁忙期を迎える冬から春にかけて(12~3月)求人は減少傾向にありますが、繁忙期明けの6月から11月くらいまでは増加する傾向
があります。
税理士試験直後の採用が落ち着き、繁忙期に備える少し前の
秋頃にも求人が増加する
傾向にあります。エージェントを使って転職活動をするには、この時期が狙い目かもしれません。
(2)会計事務所・税理士法人の具体的な業務を知る
会計事務所・税理士法人で働いてみたい方に、下記に参考になる読み物をまとめてみました。参考にされてください。
■まとめ
税理士業界は、確かに繁忙期の忙しさや覚えることの多さなど、大変な側面があります。しかし同時に、短期間で幅広い実務経験を積める、様々な業種の企業の経営に関われる、専門性を高められる、独立開業の道もあるなど、多くの魅力があります。
税理士としてのキャリアを築く道は一つではありません。大手税理士法人で組織の一員として働く道、中小の事務所で幅広い業務を経験する道、特定の業界に特化し専門性を磨く道、将来独立開業する道。どの道を選ぶにしても、大切なのは学び続ける姿勢と、クライアントのために尽くす使命感です。
簿記の資格を取得した方、経理の経験がある方、税理士を目指して勉強中の方。それぞれの状況は異なっていても、税理士業界という舞台で活躍するチャンスは開かれています。一歩を踏み出す勇気を持って、税理士としての充実したキャリアを築いていってください。
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