■どうして不動産業界の経理が注目されているのか
近年、不動産業界の経理職への転職希望者が増加している背景には、いくつかの要因があります。
人々の住居や企業のオフィス需要は常に存在し、長期的な視点での事業展開が可能な業界であるため、経理職としても安定した雇用環境が期待できます。生活や企業活動に不可欠な産業である一方、金利や市況の影響を受けやすい面もあり、安定性と変動性の両面を持ち合わせています。
また、不動産業界は専門性が高く、一度身につけた知識やスキルが他の業界でも応用しやすいという特徴があります。建物の減価償却、固定資産税の計算、賃貸収入の管理など、複雑な会計処理を習得することで、経理職としての市場価値を大きく向上させることができます。
さらに、近年のデジタル化やテクノロジーの発達により、不動産業界でも業務効率化が進んでいます。従来の手作業による処理から、システムを活用した自動化へと移行が進む中で、これらの新しいツールを使いこなせる経理職への需要が高まっています。
不動産投資信託(REIT)の普及や、プロパティマネジメント業務の専門化など、業界全体の多様化も転職市場に影響を与えています。これらの新しい分野では、従来の経理業務に加えて、投資分析や資産評価などの知識も求められるようになり、キャリアアップの機会が広がっています。
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求人例①:【経理リーダー候補】プライム上場/「住まい」に関わるあらゆる分野で事業を展開する企業グループ
職種 |
経理(月次決算業務)、経理(決算業務)、経理(管理会計) |
仕事内容 |
- 経理に関わる日々のオペレーション業務の確認
- 単体/連結決算業務全般(会社法/金商法)
- 開示資料の作成業務(計算書類/決算短信/有価証券報告書等)
- 管理会計に関する業務(予実管理等)
- 金融庁等への各種財務情報のレポーティング業務
- 会計基準、法令等に関する知識の習得・情報収集
- 監査法人との情報交換・調整
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年収 |
500万円 〜 750万円 |
求人例②:【財務・スタッフ】金融機関でのご経験あり知識を活かしたい方、裁量を持ってスキルアップをしたい方におすすめ!
職種 |
投資銀行業務・ファンド業務 |
仕事内容 |
金融機関からの資金調達を担当している財務経理部の主任候補を募集
【具体的な業務】
- 財務管理(資金管理、資金調達管理)
- プロジェクトファイナンス管理、実行
- 金融機関の開拓、交渉
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応募条件 |
【必須】・金融・財務いずれか3年 ・PCスキル(Excelの関数)
【歓迎】・日商簿記3級 ・宅地建物取引士
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■どんな仕事内容?不動産業界の経理
不動産業界の経理職の仕事内容は、一般的な経理業務に加えて、業界特有の専門的な処理が数多く存在します。
(1)賃貸収入の計上や管理費の精算
日常的な業務として、賃貸収入の計上や管理費の精算、建物の保守点検費用の処理などがあります。これらの業務は、物件ごとに異なる契約条件や収益パターンを正確に把握し、適切に会計処理する必要があります。
(2)建物の建設や改修に関する経理処理
建物の建設や改修に関する経理処理も重要な業務の一つです。建設費用の資産計上、工事進行基準による収益認識、完成後の減価償却計算など、長期間にわたる取引を正確に記録し、企業の財務状況を適切に反映させる必要があります。
(3)税務処理
固定資産税や都市計画税などの税務処理も、不動産業界の経理職が担当する重要な業務です。物件の評価額に基づいて計算される税金を正確に把握し、適切なタイミングで支払い処理を行う必要があります。また、不動産取得税や登録免許税などの一時的な税金についても、取引のタイミングに合わせて適切に処理する必要があります。
(4)資金繰り管理
資金繰りの管理も、不動産業界の経理職にとって重要な業務です。建設費用や土地取得費用など、多額の資金が必要な取引が頻繁に発生するため、資金調達計画の策定や、銀行融資の管理、キャッシュフローの予測など、財務的な視点での業務も求められます。
(5)賃貸管理に関する経理処理
賃貸管理に関する経理処理では、入居者からの家賃収入や共益費の管理、退去時の原状回復費用の処理、保証金や敷金の管理などが含まれます。これらの業務は、物件ごと、入居者ごとに異なる条件を正確に把握し、適切に処理する必要があります。
■不動産業界の経理には、どんな専門知識が必要?
不動産業界の経理職には、一般的な会計知識に加えて、不動産に関する専門的な知識が幅広く求められます。
ただしこれらの知識は入社前に必ずしも必要という訳ではありません。まずは経理として基本の知識、経験を積んでいることが最も重要です。
(1)不動産の評価方法
まず、不動産の評価方法について理解する必要があります。収益還元法、原価法、取引事例比較法など、不動産の価値を適切に評価する手法を習得し、帳簿価額と時価の関係を正確に把握することが重要です。
(2)建物の減価償却
建物の減価償却に関する知識も不可欠です。構造別の法定耐用年数、定額法と定率法の使い分け、改修費用の資産計上基準など、建物の価値減少を適切に会計処理するための専門知識が必要です。また、土地については減価償却の対象外であることを理解し、建物と土地の区分を正確に行う必要があります。
(3)不動産の税制
不動産特有の税制についても深い理解が求められます。固定資産税の計算方法、都市計画税の仕組み、不動産取得税の特例措置など、不動産に関わる各種税金について正確な知識を持つ必要があります。また、法人税法上の処理と会計上の処理の違いについても理解しておく必要があります。
(4)賃貸契約に関する法的知識
賃貸契約に関する法的知識も重要です。借地借家法の基本的な内容、敷金・保証金の取り扱い、更新料の会計処理など、賃貸事業に関わる法的な枠組みを理解し、適切な会計処理を行う必要があります。
(5)建設業会計についての知識
建設を伴う事業(例:デベロッパーや開発型REIT)に携わる場合には、建設業会計の知識も活かせます。工事契約の収益認識、工事進行基準と工事完成基準の使い分け、未成工事支出金の管理など、建設事業に関わる会計処理についても理解しておくことで、より幅広い業務に対応できるようになります。
■不動産業界の経理のメリット5つ
不動産業界の経理職には、他の業界では得られない独特なメリットが数多く存在します。
(1)専門性が高い
まず、専門性の高さが挙げられます。不動産に関する会計処理は複雑で専門的な知識が必要なため、一度習得すれば他の経理職では代替困難な価値あるスキルとして認識されます。この専門性により、転職市場での市場価値が高く評価される傾向にあります。
(2)業界の安定性
業界の安定性も大きなメリットです。不動産は人々の生活や企業活動に不可欠な要素であり、長期的な需要が見込めるため、経理職としても安定した雇用環境が期待できます。
ただし不動産業界は、住宅やオフィスなど基礎的な需要は堅調ですが、金利や不動産価格の変動、政策の影響を受けやすい一面もあります。安定性と変動性の両面を併せ持っているといえるでしょう。
(3)給与水準の高さ
給与水準の高さも魅力的な要素です。不動産業界は利益率が比較的高く、従業員の給与水準も他の業界と比較して高い傾向にあります。
特にREIT運用会社や大手デベロッパーでは高水準の給与が期待されますが、中小規模の賃貸管理会社などでは業界平均に近い水準である場合もあります。企業規模・業務内容によって幅があるため、事前のリサーチが重要です。
(4)キャリアの幅広さ
キャリアの幅広さも不動産業界の経理職の魅力です。経理業務以外にも、資産運用、投資分析、プロジェクト管理など、多様な分野での活躍機会があります。これにより、単なる経理職としてだけでなく、経営に近い立場での業務に携わる可能性もあります。
(5)知識のアップデート
学習機会の豊富さも見逃せません。不動産業界は法改正や制度変更が頻繁にあり、常に新しい知識を学ぶ必要があります。これは負担でもありますが、継続的な学習を通じて専門性を向上させ、キャリアアップを図る機会としても活用できます。
■不動産業界の経理で働くデメリット
不動産業界の経理職には魅力的な側面がある一方で、いくつかの課題や困難な面も存在します。まず、業務の複雑性が挙げられます。不動産取引は多額の資金が動き、契約期間も長期にわたるため、処理すべき情報量が膨大になります。また、物件ごとに異なる条件や特殊な取引形態も多く、標準化された処理が困難な場合があります。
法規制の多さと変更の頻繁さも大きな課題です。不動産業界は建築基準法、都市計画法、宅地建物取引業法など、多くの法律の影響を受けます。これらの法規制は定期的に改正されるため、常に最新の情報を把握し、業務に反映させる必要があります。
責任の重さも考慮すべき要素です。不動産取引は高額であり、経理処理のミスが企業に与える影響も大きくなります。特に、税務処理のミスは追徴課税や信用失墜につながる可能性があり、高い精度と責任感が求められます。
業界特有の慣習や商習慣への適応も必要です。不動産業界には長年にわたって培われた独特の慣習があり、他の業界から転職してきた場合、これらの慣習を理解し、適応するのに時間がかかることがあります。
■どうすれば不動産業界の経理への転職を成功させられるのか
不動産業界の経理への転職を成功させるためには、戦略的なアプローチと入念な準備が重要です。
ステップ①自分の経験・スキルの確認
まず、自分の現在のスキルと不動産業界で求められるスキルのギャップを正確に把握することから始めましょう。簿記の資格や経理実務経験は基本として、不動産特有の知識をどの程度身につけているかを客観的に評価する必要があります。
ステップ②:履歴書・職務経歴書の作成
履歴書と職務経歴書の作成においては、不動産業界への転職理由を明確に示すことが重要です。単に待遇の向上を求めるだけでなく、不動産業界の特性や将来性に魅力を感じている点を具体的に記述し、長期的に業界で活躍したい意欲を示しましょう。
ステップ③:選考・面接対策
面接対策では、不動産業界の基本的な知識を身につけておくことが不可欠です。業界の市場規模、主要な企業、最近のトレンドなどについて調べ、面接官との会話で自然に話題にできる程度の知識を持つことが重要です。
転職エージェントの活用も効果的な手段です。不動産業界に特化したエージェントは、業界の内部情報や非公開求人を持っていることが多く、個人では得られない情報を提供してくれます。また、面接対策や給与交渉においても専門的なアドバイスを受けることができます。
ステップ④:その他、転職成功のカギ
ネットワーキングの構築も転職成功のカギとなります。不動産業界のセミナーや勉強会に参加し、業界関係者とのつながりを作ることで、求人情報の入手や推薦を受ける機会が増えます。LinkedInなどのSNSを活用して、業界関係者とのネットワークを築くことも有効です。
転職活動の時期選択も重要な要素です。不動産業界は決算期や税務申告時期に求人が増加する傾向があります。これらの時期に合わせて転職活動を行うことで、より多くの選択肢の中から転職先を選ぶことができます。
■不動産業界の経理の将来性
不動産業界の経理職は、転職を考える方にとって非常に現実的で魅力的な将来性を持っています。
(1)給与面
中途でのスタート時点では400〜600万円程度が一般的で、実績次第で700万円以上を目指すことも可能です。不動産業界は利益率が高く、経理職も相応の待遇を受けやすい環境にあります。
(2)専門性の高さ
専門性の高さから、一度スキルを身につければ転職市場での価値が長期間維持されることも大きな魅力です。他の業界の経理職と比較して、不動産特有の知識を持つ人材は希少価値が高く、求人倍率も有利に働きます。
(3)キャリアパス
キャリアの道筋も明確で、一般的な経理職から始まって、係長、課長、部長へと段階的に昇進していく道筋が整っています。また、経理部門だけでなく、財務部門や経営企画部門への異動も可能で、幅広いキャリア選択肢があります。
最近では、デジタル化による業務効率化が進んでおり、単純作業は自動化される一方で、分析や判断を要する業務の重要性が高まっています。これにより、専門知識を持つ経理職の価値はさらに向上しています。
(4)様々な資格取得によるキャリアップ
資格取得によるキャリアアップも現実的です。宅地建物取引士や不動産鑑定士の資格を取得することで、より専門性の高い業務に携わることができ、給与アップや昇進のチャンスが広がります。
このように、不動産業界の経理職は、安定性と成長性を兼ね備えた、転職を検討する方にとって非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。
■不動産経理に転職してよかった!転職成功事例
【転職成功者の声1】前職:メーカー経理 → 不動産デベロッパー経理(32歳・男性)
「メーカーの経理から不動産デベロッパーに転職して3年が経ちました。最初は建設仮勘定や工事進行基準など、聞いたことのない会計処理に戸惑いましたが、今では複雑な開発案件の収支管理を任されるまでになりました。
特に印象的だったのは、10億円規模のマンション開発プロジェクトで、土地取得から建設、販売まで3年間の長期プロジェクトの会計処理を担当したことです。減価償却の計算や固定資産税の処理、販売時の利益認識など、不動産特有の専門知識が身につき、転職市場での価値も大幅に向上しました。給与も前職より150万円アップし、専門性を評価してもらえる環境に満足しています。」
【転職成功者の声2】前職:商社経理 → 不動産賃貸管理会社経理(28歳・女性)
「商社から不動産賃貸管理会社に転職して2年になります。賃貸事業の経理は想像以上に奥が深く、敷金・保証金の管理、原状回復費用の処理、家賃収入の計上方法など、学ぶことが山積みでした。
特に驚いたのは、同じ建物でも契約形態や入居時期によって会計処理が異なることです。現在は200戸のマンション5棟の経理を担当していますが、物件ごとの収支分析や、空室率の改善提案なども行っています。宅建の資格も取得し、法的な知識も身につけました。
不動産業界の経理は専門性が高く、一般的な経理職では経験できない業務が多いため、キャリアの幅が大きく広がったと実感しています。」
【転職成功者の声3】前職:IT企業経理 → REIT運用会社経理(35歳・男性)
「IT企業からREIT運用会社に転職して4年が経ちました。REITの経理は上場企業としての開示業務に加え、投資法人特有の会計処理が求められ、非常に専門性の高い分野です。投資用不動産の時価評価、分配金の計算、投資主への情報開示など、一般的な経理では経験できない業務に携わっています。
特に不動産鑑定評価書の内容を理解し、会計処理に反映させる業務は、不動産と金融の両方の知識が必要で、非常にやりがいを感じています。現在は主任として後輩の指導も行っており、給与も前職から200万円以上アップしました。この専門性があれば、今後のキャリアも安泰だと確信しています。」
■まとめ
不動産業界の経理職への転職は、専門性の高いスキルを身につけ、安定したキャリアを築くための有効な選択肢のひとつだと言えるでしょう。業界特有の複雑な会計処理や法的知識が必要な一方で、それらを習得することで他の業界では得られない貴重な専門性を獲得できます。
転職を成功させるためには、事前の準備と継続的な学習が重要です。
簿記などの基礎的な会計知識に加えて、不動産に関する法律や税制についても理解を深めておくことが求められます。また、転職活動では業界研究を十分に行い、自分の経験やスキルが不動産業界でどのように活かせるかを明確に示すことが大切です。
不動産業界の経理職は、業界の変化と成長に伴って、より専門性が高く、幅広い知識が求められる職種へと発展していくと予想されます。継続的な学習と適応能力を持つ人材にとって、多くの成長機会が用意されている魅力的な分野といえるでしょう。
転職を検討している方は、この記事で紹介した情報を参考に、ぜひ不動産業界での新たなキャリアにチャレンジしてみてください。