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「小口現金」とは?その業務内容のポイント解説

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ここでは日々の経理業務として紹介されることの多い「小口現金管理」に関して、税理士の定岡佳代さんにお話をお伺いしました。これから経理業務を学びたいという方にもわかりやすい内容となっておりますので、ぜひ参考になさってください。

目次

■「小口現金」とは?

■「小口現金」の業務内容

■「小口現金管理」のポイントは?

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

■小口現金の典型的な仕訳例

■「小口現金管理」の経験を活かしたその後の仕事は?

■「小口現金」とは?

小口現金とは、会社や組織内で発生する少額の取引や支払いに使用される現金のことをいいます。一定額の現金を会社内に準備しておき、文房具代や少額の交通費、お客様へのお茶代など、業務の中で日々発生するちょっとした支払いのために充てるためのお金として使われます。

まず、小口現金の特徴をみてみましょう。

(1)小額の取引に利用される

小口現金は、日常的に発生する小額の支払いのために使われます。

例えば、事務用品の購入、交通費の精算、飲食費の立替えなどが小口現金の範囲に含まれます。大きな金額や重要な支払いは通常の銀行口座を使用しますが、そうではない少額な取引であれば、小口現金を使うことで煩雑な手続きを避けることができます。

(2)限られた金額で管理される

小口現金は一般的に限られた金額で管理されます。小口現金の金額をあらかじめ設定しておき、その範囲内で経理部長や経理担当者が管理します。このように小口現金の上限値を設定しておくことで、小口現金の不正使用や紛失のリスクを最小限に抑えることができます。

小口現金の管理担当者は、小口現金の使用状況を把握するとともに、使った金額と残高が合っているかの確認、残高が少なくなれば補充する、など定期的な確認業務を行います。

ただ、小口現金による支払いにはメリットもありますが、下記のようなデメリットもあります。

  • 支払いの都度、経理とのやり取りが発生し、さらに経理でも伝票の作成、小口現金出納帳への記入などの事務負担が多い。
  • 担当者が一人で小口現金を管理する場合、盗難や不正・横領などのリスクが考えられる。

そのため最近では、従業員が経費を立替え、各自その内容を入力することで経費精算できるようなシステムを導入したり、法人のクレジットカードでの支払いを推進したり、現金でのやり取りは極力行わなくて済むよう効率化を図っている企業が増えています。

■「小口現金」の業務内容

次に、小口現金の業務内容のポイントをみてみましょう。

(1)小口現金の管理

一番重要な業務は、小口現金の管理(現金の支出・残高の確認)です。

現金の受け渡しや保管、足りなくなった現金の補充など、直接現金を取り扱いますので、万一にも盗難、紛失などがないよう担当者は責任を持って管理しなくてはなりません。

(2)経費の精算

従業員が仕事上で支払った経費のレシートや領収書を受け取ります。内容をチェックし、経費の妥当性や適切な科目等を確認したあと、従業員への経費精算の手続きを行います。この場合においても、現金を直接取扱いますので、受け渡しは正確に行われなくてはなりません。

(3)支出を記録する

小口現金の取引は、レシートや伝票といった根拠書類を保管するとともに、小口現金出納帳へ記録します。この小口現金出納帳をもとに、会計システムへの仕訳入力を行います。

支出がある度に、支出した年月日、支出した金額、支出の内容、支払先の情報などを「小口現金出納帳」に記載します。その際、支出の内容から会計上の勘定科目がわかるようになれば、なおよいです。

たとえば、下記のような内容は、それぞれ「〇〇費」といった費用の勘定科目になります。

内容 勘定科目
文房具店でボールペンを買った 消耗品費または事務用品費
従業員が使ったタクシー代を精算した 旅費交通費
郵便局でレターパックを買った 通信費

これにより、経理部門は小口現金の使用状況を正確に把握した上で会計システムへ入力します。こうした流れを踏むことで、会計帳簿の精度を保つことができるのです。

(4)監査対応と報告

上場企業の場合、経理部は小口現金に関する監査対応や報告業務も担当します。内部監査や外部監査などに協力し、小口現金の取引や処理に関する伝票の記録や証拠を提供します。

■「小口現金管理」のポイントは?

小口現金管理は毎日の業務であり、一つひとつは単純な作業です。

1件ごとに伝票を作成し、件数の多い企業の場合はそれを1日ごとに日報としてまとめます。最終的には月ごとのデータになりますが、日付や金額などを間違えると確認作業が大変ですので、単純作業ですが正確に行うことが求められます

最近では、レシートや領収書をPDF化することで、データから月日・金額・取引先などの情報を読み取るシステムが開発されています。こうしたシステムを導入すれば、手作業での入力が不要となりますので、小口現金出納帳を効率的に作成することができます。

今後はこうしたシステム導入を検討する企業が増えていくでしょう。

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

現金を管理する立場であるため、まずは信頼のおける方、不正に厳しい方というのが大前提になると思います。また経理の適性として全般に言えることですが、数字に抵抗がなく、細かい作業も丁寧にできる方に向いているのではないでしょうか。

また、従業員の経費精算をする場面では、様々な部署の方と実際にやり取りをすることもあるかと思いますので、誰とでもコミュニケーションをとれる性格の方がよいかと思います。

小口現金管理担当者に必要な知識としては、日商簿記3級程度の知識です。小口現金出納帳の作成だけでなく、会計システムに入力する際、どのような仕訳になるかをイメージできれば、さらに経理としての信頼度も上がると思います。

以下に簡単な質問を用意しましたので、この程度の知識が必要だという目安にしていただければ幸いです。

■小口現金の典型的な仕訳例

ここでは、ひとつ典型的な小口現金の仕訳例を示します。

(取引)

月初の小口現金残高 10,000円

  1. 消耗品を2,000円購入し小口現金から支払った
  2. 従業員の電車代1,000円を小口現金で経費精算した
  3. 月末になり、小口現金残高が10,000円になるよう普通預金から充当した

月末の小口現金残高 10,000円

(仕訳)
  1. 消耗品費  2,000 / 小口現金 2,000
  2. 旅費交通費 1,000 / 小口現金 1,000
  3. 小口現金  3,000 / 普通預金 3,000

「小口現金」は資産科目で、貸借対照表では借方(左)に記載されます。小口現金を支払う(小口現金が減る)場合は、仕訳の貸方(右)になり、小口現金を充当する(小口現金が増える)場合は、仕訳の借方(左)になる、と覚えましょう。

■「小口現金管理」の経験を活かしたその後の仕事は?

小口現金管理は、経理業務の中でも基本的な業務になります。ただ、現金を直接管理するというリスクや、経理業務の効率化を考えると、今後はますますキャッシュレス化が進み、小口現金を廃止する企業も増えていくでしょう。

それでも、企業では日常的な支出がありますので、小口現金の知識は無駄ではありません。小口現金出納帳を作成できるようになれば、企業内のお金の流れがわかりますので、今後のキャッシュレス社会においても応用が利くと思います。

まずは日商簿記3級程度の知識を身につけ、小口現金管理においては仕訳をイメージしながら取り組んでみましょう。仕訳がわかれば会計帳簿を読み解く力が身につき、経理としてスキルアップできます。

皆様の経理ライフがより楽しくなりますよう、この記事が参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

定岡 佳代(さだおか かよ)
税理士

兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。

関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。

硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。

「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。

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