近年、経理職の転職市場でベンチャー企業への注目度が高まっています。従来の大企業とは異なる働き方や成長機会を求める経理職の方々にとって、ベンチャー企業は魅力的な選択肢として浮上しています。本記事では、ベンチャー企業の経理職への転職を検討している方に向けて、その魅力から実際の業務内容、転職成功のポイントまでを詳しく解説します。
ベンチャー企業の経理 転職ガイド|求人情報と成功の秘訣

2025年7月23日ジャスネットキャリア編集部
目次
■経理職のベンチャー企業への転職が注目される理由
(1)ベンチャー企業の成長性と経理職の重要性
ベンチャー企業の最大の特徴は、その爆発的な成長ポテンシャルです。創業から数年で売上が何十倍、何百倍にもなる可能性を秘めており、そのような成長の過程で経理職の役割は極めて重要になります。
成長期のベンチャー企業では、資金調達、株式公開、M&Aなどの重要な局面が頻繁に訪れます。これらの場面で経理職は単なる数字の管理者ではなく、経営陣と共に会社の未来を描く重要なパートナーとして機能します。従来の大企業では体験できない、会社の成長と共に自分自身も成長できる環境が整っているのです。
また、ベンチャー企業の経理職は、会社の財務状況を最も深く理解している存在として、経営判断に直接的な影響を与える立場にあります。新規事業の収益性分析、投資判断のための財務モデル構築、コスト削減施策の提案など、経営に直結する業務に携わることができます。
(2)経理職の多様な業務内容とキャリアパス
ベンチャー企業の経理職は、従来の経理業務の枠を超えた幅広い業務に携わることができます。月次決算や年次決算といった基本的な業務はもちろん、予算策定、資金調達支援、内部統制の構築、税務対応、投資家向け資料作成など、多岐にわたる業務を経験できます。
このような多様な業務経験は、将来のキャリアパスを大きく広げる可能性を秘めています。CFO(最高財務責任者)への道筋が明確に見えるだけでなく、経営企画、事業企画、コンサルティング業界への転職など、様々な選択肢が開かれます。特に、IPO(株式公開)の準備段階から関わった経験は、転職市場において非常に高く評価されます。
さらに、ベンチャー企業では年齢や経験年数に関係なく、実力次第で重要なポジションに就くことが可能です。20代でも経理チームのリーダーとして活躍し、30代でCFOになるケースも珍しくありません。このような急速なキャリアアップの機会は、大企業では得られない大きな魅力です。
■ベンチャー企業の経理職の魅力とは
(1)経営に近いポジションでの経験
ベンチャー企業の経理職の最大の魅力は、経営陣との距離が非常に近いことです。大企業では何層もの管理職を経て経営陣に情報が届くのに対し、ベンチャー企業では経理職が直接CEOやCTOと議論する機会が豊富にあります。
この近さは、経理職にとって貴重な学習機会を提供します。経営者の思考プロセスを間近で観察し、事業戦略の立案過程に参画することで、経営感覚を身につけることができます。また、自分が作成した財務資料が経営判断に直接活用される実感を得られるため、仕事に対するやりがいも格段に向上します。
さらに、ベンチャー企業では経理職も経営会議に参加することが一般的です。各事業部門の収益状況を把握し、新規事業の立ち上げ計画に財務面からアドバイスを提供するなど、経営の中核に関わる業務を担当します。このような経験は、将来的に経営職を目指す方にとって非常に価値の高いものとなります。
(2)裁量権の大きさと成長機会
ベンチャー企業の経理職は、規程が大手ほどしっかり定められていません。業務を行う上で決裁を得るべき上長がおらず、自身の判断で業務を進めるケースも多く見受けられ、業務プロセスの改善、新しいシステムの導入、経理規程の策定など、自分の判断で様々な改革を実行できます。これにより、自分のアイデアが会社の成長に直接貢献する実感を得られます。
また、ベンチャー企業では新しいことへの挑戦が奨励される文化があります。従来の経理業務の枠にとらわれず、データ分析、業務自動化、新規事業の収益モデル構築など、幅広い分野でスキルを磨くことができます。
成長機会の面では、会社の急成長と共に経理部門の規模も拡大していくため、マネジメント経験を積む機会が豊富に提供されます。部下の指導、チームビルディング、他部門との連携など、リーダーシップスキルを実践的に身につけることができるでしょう。
■ベンチャー企業の経理はきつい?
ベンチャー企業の経理職について「きつい」という印象を持つ方も多いでしょう。確かに、大企業と比較して人員が限られているため、一人当たりの業務負荷は重くなりがちです。しかし、この「きつさ」は必ずしもネガティブな要素ばかりではありません。
まず、業務の多様性により、毎日が新しい挑戦に満ちています。単調な作業の繰り返しではなく、常に新しいスキルを身につけながら成長できる環境があります。また、自分の努力や成果が会社の成長に直接貢献する実感を得られるため、やりがいは非常に大きいものとなります。
ただし、ベンチャー企業を選ぶ際には、会社の成長ステージや組織体制をしっかりと確認することが重要です。創業間もない企業では経理体制が未整備で、一人で全ての業務を担当しなければならない場合があります。一方、ある程度成長した企業では、適切な役割分担と業務フローが確立されており、働きやすい環境が整っています。
■ベンチャー企業での経理職の実際の業務
(1)日常業務の流れ
ベンチャー企業の経理職の日常業務は、大企業と比較して非常に多岐にわたります。朝の時間帯には前日の売上データの確認と分析から始まり、各事業部門からの問い合わせ対応、請求書の処理、支払い業務などを並行して進めます。
月次決算の時期になると、各部門から提出される実績データの取りまとめ、損益計算書や貸借対照表の作成、予算との差異分析などが主な業務となります。ベンチャー企業では経営陣が迅速な意思決定を求めるため、月次決算の精度とスピードが重要視されます。
また、資金調達の準備段階では、投資家向けの財務資料作成、事業計画の数値化、デューデリジェンスへの対応など、通常の経理業務とは異なる専門性の高い業務に携わることになります。これらの業務は、経理職のスキルアップにとって非常に価値の高い経験となります。
(2)特有の課題とその解決策
ベンチャー企業の経理職が直面する特有の課題として、業務の標準化不足があります。成長過程にある企業では、業務プロセスが明確に定義されておらず、担当者が試行錯誤しながら業務を進める必要があります。
この課題に対しては、積極的に業務改善提案を行い、効率的なプロセスを構築することが重要です。クラウド型の経理システムの導入、承認フローの電子化、定型業務の自動化などにより、業務効率を大幅に向上させることができるでしょう。
また、急激な事業拡大に伴う業務量の増加も大きな課題となります。この場合、優先順位を明確にし、重要度の高い業務から順番に取り組むことが必要です。さらに、外部の税理士や会計事務所との連携を強化し、適切な業務分担を行うことで、負荷を軽減することができます。
人材不足による属人化の問題も見逃せません。特定の担当者にしかわからない業務が発生しないよう、業務マニュアルの整備や知識の共有化を進めるようにしてください。
■ベンチャーの経理職に求められるスキルと資格
(1)必須スキルと資格
①日商簿記
ベンチャー企業の経理職に転職するためには、基本的な経理知識に加えて、変化に対応できる柔軟性と学習意欲が求められます。日商簿記2級以上の資格は最低限必要であり、1級を取得していれば更に有利になります。
②ITスキル
ITスキルも重要な要素の一つです。ExcelやPowerPointの高度な操作技術はもちろん、クラウド型の経理システムやデータ分析ツールの使用経験があると評価されます。また、RPAやAIを活用した業務自動化の知識も、今後ますます重要になってくるでしょう。
③英語力
英語力も徐々に重要性を増しています。海外展開を視野に入れるベンチャー企業が増えているため、英文財務諸表の作成や海外投資家との対応ができる人材は高く評価されます。
④コミュニケーション能力
コミュニケーション能力も欠かせないスキルです。ベンチャー企業では部門間の連携が重要であり、経理職も様々な部署と密接に協力する必要があります。複雑な財務情報をわかりやすく説明する能力、経営陣への提案力、チームワークを大切にする姿勢などが求められます。
(2)求められる経験
ベンチャー企業の経理職への転職では、必ずしも長期間の経験は必要ありません。むしろ、多様な業務に対する好奇心と学習意欲が重視されます。ただし、基本的な経理業務(月次決算、年次決算、税務申告)の経験は最低限必要です。
特に評価される経験として、システム導入プロジェクトへの参加、業務改善の実績、マネジメント経験などがあります。また、監査法人や会計事務所での経験は、専門知識の深さを示すものとして高く評価されます。
IPO準備企業での経験は、ベンチャー企業への転職において最も価値の高い経験の一つです。内部統制の構築、監査対応、開示資料の作成などの経験は、成長段階のベンチャー企業で即戦力として活躍できる証明となります。
■転職活動の進め方
(1)求人情報の収集と分析
ベンチャー企業の経理職求人は、従来の転職サイトだけでなく、ハローワークや自社サイトでも多く見つけることができます。求人情報を見る際は、単に給与や労働条件だけでなく、企業のビジョン、成長ステージ、事業内容、経営陣の経歴などを総合的に分析することが重要です。
特に注意すべきポイントは、経理部門の体制と成長計画です。現在の経理担当者数、今後の採用予定、システム環境、業務フローの整備状況などを確認し、自分が入社後にどのような役割を期待されているかを理解することが大切です。
また、企業の資金調達状況も重要な判断材料となります。直近の資金調達実績、投資家の顔ぶれ、今後の資金調達計画などを調べることで、会社の成長性や安定性を判断することができます。
(2)面接対策と自己PRのポイント
ベンチャー企業の経理職面接では、専門知識に加えて、企業文化への適応力と成長意欲が重視されます。
①自己PR
自己PRでは、これまでの経験をどのように活かしてベンチャー企業の成長に貢献できるかを具体的に示すことが重要です。
業務改善や効率化の実績があれば、具体的な数値と共に説明しましょう。また、新しいシステムやツールの導入経験、チームワークを発揮した事例、困難な状況を乗り越えた経験などは、ベンチャー企業で求められる資質を示すものとして有効です。
②志望動機
面接では、志望動機を明確に伝えることも重要です。なぜベンチャー企業を選ぶのか、その企業の何に魅力を感じるのか、自分のキャリアプランとどのように一致するのかを、論理的かつ熱意を持って説明しましょう。
(3)転職エージェントの利用
経理職の転職では、経理分野に特化した転職エージェントの活用が成功の鍵となります。一般的な転職サイトだけでは見つけられない好条件の求人や、業界特有の情報を入手できる可能性が高まります。
ジャスネットコミュニケーションズは、経理・会計分野に特化した転職エージェントとして、業界でも高い評価を受けています。ジャスネットは人材派遣事業も行っており、人事部門だけではなく、採用の決定権を持つ経理部の現場責任者(部長、課長など)とも密な関係を築いています。そのため、企業の経理部から直接、多種多様なパターンの求人をいただいており、常に現場のニーズを把握しています。
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■まとめ
ベンチャー企業の経理職への転職は、従来の安定志向から成長志向へとキャリアを転換する大きな機会です。経営に近いポジションでの経験、幅広い業務への挑戦、急速なキャリアアップの可能性など、大企業では得られない魅力的な要素が数多く存在します。
確かに、業務負荷の重さや変化への対応など、チャレンジングな側面もあります。しかし、これらの困難を乗り越えることで得られる成長と経験は、将来のキャリアにとって非常に価値の高いものとなるでしょう。
転職を成功させるためには、自分自身のスキルと経験を正確に把握し、企業のニーズとマッチングさせることが重要です。また、継続的な学習と自己成長への意欲を持ち続けることで、ベンチャー企業の経理職として活躍できる可能性が大きく広がります。
今後もベンチャー企業の経理職市場は拡大を続けると予想されます。変化を恐れずに挑戦する気持ちを持って、新しいキャリアの扉を開いてみてはいかがでしょうか。
- 執筆者プロフィール
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ジャスネットキャリア編集部
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編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。