現代のビジネス環境において、経理職に求められるスキルは大きく変化しています。グローバル化が進む企業環境では、英語ができる経理スタッフへの需要が高まっており、転職市場でも大きなアドバンテージとなっています。
この記事では、経理職において英語スキルがどのように活用されるのか、そして転職成功に向けてどのような準備が必要なのかを詳しく解説していきます。英語力を武器にキャリアアップを目指す経理職の皆さんにとって、実践的な情報をお届けします。
英語力で差がつく!経理職の転職を成功に導く完全ガイド

2025年7月10日ジャスネットキャリア編集部
目次
■経理職における英語力の重要性
(1)グローバル化が進む経理業界
①海外子会社を持つ企業
近年、日本企業の海外進出は加速度的に進んでおり、経理部門もその影響を大きく受けています。海外子会社を持つ企業では、現地の財務状況を正確に把握し、本社との連携を密に取る必要があります。このような環境では、英語でのコミュニケーション能力が不可欠となっています。
②外資系企業の日本法人
また、外資系企業の日本法人では、親会社への報告業務が日常的に発生します。月次決算や四半期決算の結果を英語で報告することは当たり前となっており、経理マネージャーなどには高度な英語力が求められています。さらに、IFRS(国際会計基準)の導入により、会計処理自体も国際化が進んでいます。
③中小企業の取引先
中小企業においても、取引先の多様化により英語での請求書処理や契約書の確認が必要になるケースが増えています。このような背景から、経理職における英語力の重要性は今後ますます高まっていくと予想されます。
(2)英語力が求められる理由
①英語での財務諸表
経理部門で英語力が重視される理由は多岐にわたります。まず、財務諸表の作成において、英語の財務諸表が必要となるケースが増えています。投資家向けの情報開示や海外展開を検討する企業にとって、英語での財務諸表提供の重要度は高まっているのです。
②外貨建取引の処理
次に、海外取引の増加により、外貨建取引の処理が複雑化しています。為替リスクの管理や外貨建債権債務の評価において、英語での情報収集や分析が必要となります。また、海外の金融機関との取引や資金調達においても、英語でのコミュニケーションが求められます。
③監査法人との連携
さらに、監査法人との連携においても英語力が重要です。特に外資系企業では、海外の監査法人と連携して監査を受けることが多く、監査手続きや質問への回答において英語でのやり取りが発生します。このような状況に対応するためには、専門的な会計用語を英語で理解し、適切に表現する能力が必要となります。
■英文経理と英文会計の違い
(1)英文経理の定義と役割
英文経理とは、企業の日常的な経理業務を英語で行うことを指します。具体的には、英語での請求書作成、支払処理、売上管理、経費精算などの業務が含まれます。外資系企業や海外取引の多い企業では、これらの業務を英語で処理することが求められます。
英文経理の業務では、取引先とのコミュニケーションが重要な要素となります。海外の取引先からの問い合わせに対して、迅速かつ正確に英語で回答する必要があります。また、契約書の内容を理解し、会計処理に反映させる能力も求められます。
日常的な業務においては、英語での会計ソフトウェアの操作や、英語版の財務レポートの作成も含まれます。これらの業務を効率的に行うためには、会計用語の英語表現を正確に理解し、適切に使用する能力が必要となります。
(2)英文会計の定義と役割
英文会計は、より専門的で戦略的な側面を持つ業務領域です。財務諸表の作成、会計基準の適用、税務処理、内部統制の構築など、企業の会計制度全体に関わる業務を英語で行います。特に、IFRSの適用やUS GAAP(米国会計基準)への対応において、英文会計の知識が重要となります。
英文会計の専門家は、複雑な会計処理について英語で説明する能力が求められます。投資家や監査法人、規制当局とのコミュニケーションにおいて、会計方針や判断の根拠を明確に伝える必要があります。また、海外子会社の会計処理を統一するための指導や、国際的な会計基準の変更に対応するための社内研修なども重要な役割となります。
さらに、英文会計では、財務分析や経営分析の結果を英語で報告する能力も重要です。経営陣や投資家に対して、財務状況や経営成績について説得力のある説明を行うためには、高度な英語コミュニケーション能力が必要となります。
(3)両者の業務内容の違い
英文経理と英文会計の最も大きな違いは、業務の範囲と専門性の深さにあります。英文経理は日常的な経理業務を英語で行うことに重点を置いているのに対し、英文会計はより専門的な会計業務を英語で行うことを目的としています。
英文経理では、取引の記録や集計、請求書の処理など、比較的定型的な業務が中心となります。一方、英文会計では、会計方針の策定、複雑な取引の会計処理、財務諸表の作成と分析など、より高度な判断を要する業務が含まれます。
キャリアの観点から見ると、英文経理は経理職として英語力を身につけるためのスタートラインとして位置づけられます。英文経理の経験を積むことで、英語での会計用語や業務プロセスに慣れ親しむことができます。その後、より専門的な英文会計の領域に進むことで、国際的な会計の専門家としてのキャリアを築くことが可能となります。
■経理職で役立つ英語関連資格・スキル
(1)TOEICとその活用法
TOEICは、経理職において最も広く認知されている英語資格の一つです。多くの企業が採用や昇進の基準として活用しており、経理職での転職においても重要な指標となっています。 経理職におけるTOEICの目安スコアは、一般的に600点以上が求められることが多く、外資系企業や海外展開を積極的に行う企業では800点以上が期待されることもあります。しかし、単にスコアを取得するだけでなく、実際のビジネスシーンで活用できる英語力を身につけることが重要です。
(2)USCPA(米国公認会計士)
USCPA(米国公認会計士)は、経理職においてグローバルキャリアを目指す方にとって非常に価値の高い資格です。米国の会計基準や監査基準に関する深い知識を身につけることができ、国際的な会計の専門家としての地位を確立することができます。
USCPAの取得により、外資系企業や海外進出を検討している日本企業からの需要が高まります。特に、米国市場への進出や米国企業との合弁事業を行う企業では、USCPAの知識が重要な戦力となります。また、監査法人や会計事務所においても、国際業務を担当するポジションへの転職が有利になります。
資格取得後のキャリアパスとしては、外資系企業のファイナンスマネージャー、監査法人のシニアスタッフ、コンサルティングファームのアドバイザーなど、多様な選択肢があります。USCPAの資格を持つことで、年収のアップも期待できるため、長期的なキャリア投資として非常に魅力的な選択肢となります。
(3)IFRS検定の重要性
IFRS検定は、国際会計基準に関する知識を証明する資格として、近年注目を集めています。日本企業の海外進出や外資系企業の日本参入が活発化する中で、IFRSの知識を持つ経理スタッフの需要が高まっています。
IFRS検定の取得により、国際的な会計基準に関する専門知識を身につけることができます。これは、海外子会社の財務諸表作成や連結決算業務において非常に重要な知識となります。また、投資家や監査人とのコミュニケーションにおいても、IFRS の知識は重要な武器となります。
IFRS検定の取得者は、上場企業や外資系企業において特に重宝されます。連結決算や開示業務において、IFRSの知識を活用して適切な会計処理を行うことができるため、企業にとって貴重な人材となります。転職市場においても、IFRS検定の取得は強力なアピールポイントとなります。
■経理職の転職市場における英語力の影響
(1)英語力が転職に与える影響
経理職の転職市場において、英語力があることは年収アップの転職に大きな影響があります。英語ができる経理スタッフは、英語ができない経理スタッフと比較して、平均的に20〜30%高い給与を得ることができるとされています。これは、英語力を持つ経理スタッフの希少性と、グローバル企業での需要の高さを反映しています。
転職活動における書類選考の通過率も、英語力の有無によって大きく異なります。特に、外資系企業や海外事業を展開している企業では、英語力を必須条件としている求人が多く、英語ができない場合は応募すらできないケースがあります。逆に、英語力がある場合は、選択肢が大幅に広がり、より条件の良い求人に応募することが可能となるでしょう。
(2)外資系企業の求人動向
外資系企業における経理職の求人は、近年増加傾向にあります。これは、外資系企業の日本市場への参入が活発化していることと、既存の外資系企業が事業拡大を進めていることが背景にあります。外資系企業では、本社との連携が重要な業務となるため、英語力は必須スキルとして位置づけられています。
給与水準については、外資系企業は一般的に日系企業よりも高い水準を提示することが多く、英語力のある経理スタッフにとって魅力的な転職先となっています。また、外資系企業では成果主義の傾向が強く、能力に応じた昇進や昇給の機会も豊富にあります。
■経理職での英語活用事例
(1)海外子会社との連携
①多言語間での統一的な会計処理
グローバル企業の経理部門では、海外子会社との連携が日常的な業務となっています。月次決算や四半期決算において、海外子会社から財務データを収集し、本社での連結決算に反映させる必要があります。この過程では、英語でのコミュニケーションが不可欠となります。
海外子会社との連携において重要なのは、会計処理の統一性を保つことです。各国の会計基準や税制が異なる中で、グループ全体として一貫した会計処理を行うためには、英語での詳細な説明や指導が必要となります。また、問題が発生した場合の原因分析や対策立案においても、英語でのディスカッションが求められます。
②英語での会議やメール
実際の業務では、海外子会社の経理担当者との定期的な電話会議やビデオ会議が行われます。これらの会議では、財務状況の報告、会計方針の説明、予算計画の検討など、多岐にわたる内容が英語で議論されます。参加者は、複雑な会計概念を英語で説明し、相手の理解を確認しながら業務を進める必要があります。
また、海外子会社からの質問や相談に対して、迅速かつ正確に英語で回答することも重要な業務です。メールでのやり取りでは、誤解を避けるために明確で丁寧な英語表現を用いることが求められます。このような日常的な英語でのコミュニケーションを通じて、グローバル企業の経理部門では国際的な業務遂行能力が養われます。
(2)国際会計基準の適用
IFRSの適用は、多くの企業にとって重要な課題となっています。IFRSは英語で制定されており、基準の理解と適用においては英語力が不可欠です。経理担当者は、英語で書かれた基準書を読み込み、自社の会計処理に適切に反映させる必要があります。
IFRSの適用プロジェクトでは、外部のコンサルタントや監査法人との連携が重要となります。これらの専門家とのミーティングや資料作成において、英語でのコミュニケーションが頻繁に発生します。会計処理の変更点や影響分析について、英語で詳細な説明を行う能力が求められます。
■経理職の英語力を活かしたキャリアパス
(1)国際的な経理マネージャー
英語力のある経理スタッフは、国際的な経理マネージャーとしてのキャリアパスを描くことができます。このポジションでは、複数の国や地域の経理業務を統括し、グローバルな視点から財務管理を行います。海外子会社の経理部門を指導し、グループ全体の会計処理の統一性を保つことが主な役割となります。
国際的な経理マネージャーには、高度な英語コミュニケーション能力が求められます。異なる文化的背景を持つメンバーとのコミュニケーションにおいて、相手の立場を理解し、適切な指導を行う能力が重要です。また、本社の経営陣に対して、海外事業の財務状況を英語で報告する機会も多くあります。
このポジションでは、年収1000万円以上の高額報酬を得ることも可能です。また、国際的な経験を積むことで、さらに上位のポジションへの昇進や、他の企業への転職においても有利になります。グローバル企業の経理部門において、このようなポジションの需要は今後も高まると予想されます。
(2)CFOを目指す道
英語力のある経理職にとって、CFOは魅力的なキャリアゴールの一つです。グローバル企業のCFOには、財務戦略の策定から投資家向けの情報開示まで、幅広い業務において英語力が求められます。特に、海外投資家とのコミュニケーションや、国際的な資金調達において、英語でのプレゼンテーション能力は不可欠です。
CFOへの道のりでは、段階的なキャリアアップが重要となります。まず、経理スタッフとして英語での実務経験を積み、その後、経理マネージャーとして専門性を深めます。
CFOのポジションでは、年収2000万円以上の高額報酬を得ることも可能です。また、企業の経営戦略に直接関わることで、ビジネスの全体像を理解し、より幅広いキャリアの選択肢を得ることができます。このようなハイレベルなキャリアを目指すためには、継続的な学習と実践的な経験の積み重ねが重要です。
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■経理職の転職活動における英語力のアピール方法
(1)履歴書での表現
履歴書において英語力を効果的にアピールするためには、具体的な資格スコアと実務経験を明記することが重要です。TOEICスコアを記載する際は、取得年月も併せて記載し、最新の英語力を示すことが大切です。800点以上のスコアがある場合は、積極的にアピールしましょう。
資格だけでなく、実際の業務での英語使用経験を具体的に記載することも重要です。例えば、「海外子会社との月次決算業務において、英語でのメール対応および電話会議を担当」「英文財務諸表の作成および外部監査法人との英語での監査対応」など、具体的な業務内容を記載することで、実務に直結した英語力をアピールできます。
また、語学留学を含む留学経験(短期であっても)や英語での研修受講歴、海外出張の経験なども有効なアピールポイントとなります。これらの経験は、英語力だけでなく、国際的な業務への適応能力も示すことができます。さらに、英語での資料作成や、海外関係者向けのプレゼンテーション経験なども、専門的な英語力の証明となります。
(2)面接でのアピールポイント
面接において英語力をアピールする際は、具体的なエピソードを交えて説明することが効果的です。英語を使った業務での成功体験や、困難を乗り越えた経験を具体的に話すことで、面接官に強い印象を与えることができます。例えば、「海外子会社の経理担当者との英語でのやり取りにおいて、複雑な会計処理について説明し、問題を解決した経験」などを詳しく説明しましょう。
また、面接の中で実際に英語を使用する機会があれば、積極的に対応することが重要です。簡単な自己紹介や志望動機を英語で話すことで、実際の英語コミュニケーション能力を示すことができます。
外資系企業の場合は、英語面接を実施することも。英文のレジュメなどを持っていくことでプラスのアピールが可能になることもあります。
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■まとめ
経理職において英語力は、もはや「あると良い」スキルではなく、キャリアアップや転職成功のための「必須」スキルです。グローバル化が進む現代のビジネス環境において、英語ができる経理スタッフへの需要は継続的に高まっており、給与水準や転職機会において大きなアドバンテージとなっています。
英語力を身につけることで、外資系企業や海外事業を展開する企業への転職が可能となり、より高い年収と充実したキャリアを築くことができます。また、国際的に活躍できる経理マネージャーやCFOといったハイレベルなポジションを目指すことも可能になります。
重要なのは、単に英語資格を取得するだけでなく、実際の業務で使える実践的な英語力を身につけることです。日常的に英語での情報収集を行い、会計用語や財務表現について英語で理解し、説明できるようになることが大切です。また、継続的な学習と実践を通じて、英語力を維持・向上させるようにしましょう。
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ジャスネットキャリア編集部
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