第2回 軽減税率違反は税務調査でどうなる?

第2回 軽減税率違反は税務調査でどうなる?

1.軽減税率におけるイートイン、テイクアウト問題

2019年10月以降の消費税増税を踏まえて、税理士の中では、軽減税率という制度にどう対応するかが問題になっています。税理士に限らず、飲食料品を多数扱うスーパーマーケットやコンビニでは、新たな設備投資が必要になることもあり、この問題の対処について、大いに頭を悩ませていると聞いています。

とりわけ、これらの業界において問題視されているのは、イートインになるかテイクアウトになるか、その線引きです。イートイン、すなわち店内飲食であれば飲食サービスに該当して軽減税率の対象にならない反面、テイクアウト、すなわち飲食料品の販売であれば軽減税率の対象になります。イートインスペースがある店舗においては、この区分を明確に行う必要がある訳ですが、その方策として国税が指示しているのは、販売などの際に顧客に意思確認を行って判断するということです。

意思確認すればいい訳ですから、持ち帰りますと言われて販売し、その後その商品を店内で飲食されても、適用税率は軽減税率の8%となります。こうなると制度がガタガタになると思う訳ですが、それ以上にコンビニなどの業界が懸念していることは、意思確認の大変さです。取扱商品が多く、かつレジ業務は短い時間で行う必要があるため、いちいち意思確認をしていると業務が回らないという問題点が指摘されています。

2.軽減税率に関する税務調査の実際

このような問題点の指摘を受けて、財務省は従来の方針を転換し、店内飲食を想定していない店については、「飲食禁止」などの張り紙を掲示するなど一定の要件を満たせば、イートインがないとしてすべて軽減税率として取り扱っていい、という新しい方針を打ち出しています。こうすれば、意思確認は要らなくなると解説しているのですが、張り紙といった形式的な要件だけで線引きするとなると、消費税の脱税を誘発する恐れがあります。この点、報道によると、税務調査を徹底させていい加減な軽減税率の適用を防止する、と財務省は考えているようです。

しかし、実際に税務調査を実施した身から断言できますが、調査官は軽減税率に関しては、真剣に税務調査はしません。というのも、以下の2つの問題があるからです。

  • ① 頑張っても、取れる税金は差額の2%に過ぎないこと
  • ② 税務調査先から修正申告を慫慂することが非常に難しいこと

まずは上記①についてです。税務調査は少ない日数で多額の税金を追徴する必要があるため、調査官は不正取引等、税金が取れる大きな間違いを中心に調査をします。となった場合、取れても2%しか税金が変わらない軽減税率の適用チェックについては、当然後回しにするでしょう。

次に、上記②ですが、税務調査は国税の手間を考えて、原則として納税者が間違いを反省し、自分で修正する修正申告の提出で終わります。反省するということは国税の指導に従うということですが、軽減税率の線引きが難しすぎますから、国税の指導に従わない方も多くいるでしょう。となると、軽減税率の是正は不可能でないにしても極めて困難と考えられます。

以上を踏まえると、調査官の常識的な感覚としては、上記2点を踏まえた上で2%は課税せず目をつぶり、他の税目で税金を取るという実務になると考えられます。

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執筆者プロフィール
松嶋 洋(まつしま よう)
  • 元国税調査官・税理士

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。現在は顧問業務の他、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ていた。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という300回を超えるコラムを連載中。

【セミナー講師実績】
・税理士会統一研修:「誤解だらけの税務調査実務とその対応策」
・東京税理士会麻布支部:「税理士が見落としがちな税務の盲点」
・鳥飼総合法律事務所:「相手を知ることで勝てる税務調査交渉術」
・アックスコンサルティング:「自社株対策(組織再編とグループ税制の活用)」
・アックスコンサルティング:「事業承継税制(平成25年度改正)」
・ビズアップ総研:「税務調査対策(事前準備と交渉術)」
・インスパイアコンサルティング:「印紙税税務調査対策」

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