■経営企画への転職は本当に難しいのか? 難易度の実態とその理由
「経営企画への転職は難しい」という言葉はよく耳にしますが、具体的にどう難しいのかが曖昧なまま転職活動を始めると、準備の方向を誤ります。構造的な難しさを正確に理解することが、対策の出発点です。
(1)求人数が少なく、非公開案件の比率が高い
経営企画のポジションは、企業内に少数しか存在しない
のが通常です。大手企業でも数名から十数名、中堅企業では1〜3名という規模が一般的であり、欠員が出なければ求人自体が発生しません。さらに、経営企画の求人は公開求人より非公開で取り扱われることが多く、転職サイトを検索するだけでは求人の全容が見えないという構造的な問題があります。転職エージェントを活用しなければ、そもそも良質な求人情報に辿り着けないケースは珍しくありません。
(2)即戦力志向が強く、ポテンシャル採用の間口が狭い
経理や人事の採用と比べて、経営企画は即戦力性を強く求める傾向があります。経営企画の業務は入社直後から経営陣と対話する場面が多く、業務をゼロから教えながら育てる余裕がないことが多いためです。「管理会計の実務経験があれば」「コンサルファーム出身なら」といった条件付きでポテンシャル採用が行われることはありますが、職種未経験であることのハードルは他職種より高く設定されていると認識しておくべきです。
(3)「経営に関わりたい」という動機だけでは書類を通過しない
これは難易度の問題というより準備の問題ですが、多くの方がここで躓きます。「経営の全体像に関わりたい」という動機は経営企画を目指す方に共通して持たれるものです。しかし採用担当者の視点からすると、「その希望はわかったが、あなたは当社の経営企画の何ができるのか」が問われます。
自分の経験が経営企画の業務にどう結びつくかを具体的に示せるかどうか、それが書類通過率と面接評価の大部分を決めます。
■昨今の経営企画の転職市場における動き
転職市場は時期によって動きが異なります。難しいと言われながらも、特定の条件下では採用が動きやすいタイミングや背景があります。昨今の状況を整理しておきましょう。
(1)DX推進で経営企画の役割が広がっている
多くの企業がDXを経営戦略の柱に据える中、経営企画に求められる役割は従来の「中期経営計画策定・予実管理」から、
データ活用による意思決定支援やDX推進のプロジェクト管理へと広がっています。
この変化は、データ分析に慣れた経理・財務出身者にとって、経営企画への新たな入口になっています。「Excelを使いこなす」「数字から現状を読む」という経理の基礎スキルが、そのまま経営企画における数字の基礎力として認められるケースが増えています。
(2)M&A活発化が経営企画の採用ニーズを押し上げている
企業再編やM&Aを積極的に推進する企業が増えており、
ディールの組成・デューデリジェンスの経験者やPMI(統合後マネジメント)を担える人材への需要が高まっています。
財務分析の視点からM&Aに関わった経験があれば、経営企画での評価に直結する可能性があります。これは、財務・会計バックグラウンドを持つ方にとって特に有利な流れです。
(3)FP&A・管理会計人材の需要が明確に増している
FP&A(Financial Planning & Analysis)という職能が日本企業でも浸透しつつあります。経営数値を分析し、事業部門と経営層の橋渡しをするこの役割は、経理・財務の実務経験と経営企画の思考力を組み合わせたものです。「経営企画・管理会計担当」「FP&A」として求人が出るケースも増えており、経理出身者にとって転職しやすい経営企画ポジションのひとつと言えます。
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■なぜ経理・財務出身者が経営企画転職で強みを持てるのか
「経営企画に転職するなら、コンサルか経営企画経験者でないと難しい」という思い込みを持つ方が多くいます。しかしジャスネットで経営企画転職を支援してきた経験からすると、経理・財務出身者は他職種の候補者にはない強みを複数持っています。この章では、その強みを具体的に整理します。
(1)財務諸表を読む力が、そのまま武器になる
経営企画の日常業務において、財務諸表を正確に読み解く能力は基礎中の基礎です。P/L・B/S・キャッシュフローの分析、セグメント別の収益管理、投資判断のための事業評価など、経理・財務の実務で当たり前に行っていた作業が、経営企画では明確な強みとして評価されます。コンサルティングファーム出身者や営業・マーケティング出身者と比較したとき、「財務の数字に強い」という素地は採用担当者に響きます。特に
財務への関与が深い経営企画ポジション(FP&A、M&A関連、資金調達支援など)では、経理出身者の優位性はより大きくなります。
(2)予算管理・事業計画の経験が業務に直結する
経理部門で予算策定や予実管理に携わった経験がある方は、経営企画業務の中核的な仕事をすでに経験していると言えます。部門ごとの予算をとりまとめる業務、実績と計画の差異分析、経営会議向け資料の作成など、これらは経理と経営企画の間にある境界線がもともと薄い業務領域です。
「数字を作ること」から「数字をもとに経営判断を支援すること」へのシフトが、経理→経営企画のキャリアチェンジの本質とも言えます。現職でこうした経験がある方は、その事実を職務経歴書でしっかり言語化することが重要です。
(3)管理会計・FP&Aスキルが市場価値を高める
管理会計の経験を持つ経理パーソンは、経営企画への橋渡し的なポジションとして高く評価されるケースが増えています。ジャスネットでの支援事例を見ても、上場企業やIPO準備企業から「財務バックグラウンドを持つ経営企画担当者」を求める求人は、ここ数年で増加傾向にあります。特に
連結決算・セグメント管理・管理会計の経験は、経営企画の業務と親和性が高く、採用時のアピールポイントになります。
■経営企画に転職した際の年収相場
ジャスネットコミュニケーションズが保有する2021〜2025年の転職登録者データによると、経営企画職の平均年収は約780万円となっています。同データにおける経理転職者全体の決定年収平均が約496万円であることと比較すると、経営企画は明確に高い年収水準にあることがわかります(詳細は「
経理の年収はいくら?転職で年収アップを実現するための完全ガイド
」をご参照ください)。
ただし、この平均値は企業規模・業界・担当領域・役職によって大きく前後します。担当者クラスとマネージャー以上のクラスでは年収レンジが異なり、前職での担当業務の高度さも転職後の処遇に影響します。約780万円という数字をひとつの目安として持ちながら、エージェントに相談して自分の経験・スキルに見合った相場感を把握した上で交渉に臨むことが重要です。
■経営企画転職を有利にするスキルと資格
経営企画は資格があれば採用されるわけではありません。ただし、スキルの証明や学習の裏付けとして、資格が有効に機能する場面はあります。経理・財務出身者の視点で、優先度の高いものを整理します。
(1)採用担当者が最も重視する3つのスキル
経営企画で最も頻繁に求められるのは、
①数字を読んで経営判断に結びつける力(経理出身者の強みそのもの)
②複数の部門やステークホルダーを調整する力
③考えを資料にまとめて経営陣に伝える力
の3点です。②と③は転職前から意識的に磨いておく必要があり、現職でのプロジェクト参加や経営会議向け資料作成の機会を増やしておくことが実質的な準備になります。
(2)取得しておくと評価が上がる資格
日商簿記2級についてはすでに保有している方も多いでしょうが、面接での財務知識の証明として、簿記1級取得を目指すのも有効な一手となります。
また、経営企画転職を明確に視野に入れる場合、別途、有効になりやすい例としては
「中小企業診断士」
があります。財務・会計・経営理論・運営管理・法務という、経営企画に必要な知識領域を体系的に学べる国家資格であり、経理出身者が未経験の経営知識を補完する手段として実用性が高いです。
そのほか、FP&A関連の実務経験やデータ分析ツール(PowerBI・Tableauなど)の活用スキルも、近年の採用では評価される場面が増えています。MBAは高く評価されますが、取得にかかる時間・コストを考えると、経営企画転職を目的として取得するケースは多くありません。すでに取得している方、または長期的なキャリアとして選択する方にとっては強力なアドバンテージです。
(3)資格より「経験の語り方」を先に整える
重要なのは、資格取得と並行して、あるいはそれより先に、現在の経験をどう語るかを整理することです。経営企画の採用で書類が通過するかどうかは、資格の有無より「今の経験が経営企画の業務にどう接続するか」の言語化にかかっています。
■経営企画転職でよくある失敗パターン5選
転職成功の方法を語る記事は多くありますが、実際に転職活動を始めた方が陥りがちな失敗を知っておくことも重要です。ジャスネットでの支援経験をもとに、よく見られるパターンを5つ挙げます。
失敗パターン① 動機が「経営に関わりたい」で止まっている
面接で評価が下がりやすいのが、「経営の全体像に関わりたいと思い志望しました」という回答です。動機としては理解できますが、
採用担当者が聞きたいのは「その会社の経営企画において、あなたは何ができるのか」
です。
自分の過去の経験と、志望先企業の経営課題を結ぶ「橋渡しの言語化」ができていない場合、書類や1次面接で止まることが多くなります。「なぜ経営企画か」ではなく「なぜ、この会社の経営企画か」まで答えられる準備が必要です。
失敗パターン② 経理経験を「経理の言葉」で説明している
「決算業務を担当していました」「月次の仕訳処理をしていました」という説明は、経理の実務としては正確ですが、経営企画の採用担当者には響きません。同じ経験でも、「月次の業績数値を取りまとめ、部門長への差異分析・改善提案資料を作成し、経営会議での報告をサポートしていました」と言えれば、経営企画の文脈で語れる人材と判断されます。
経験の内容よりも、経験の「語り方」を変えることが先決です。この変換作業は一人で行うより、転職エージェントへのフィードバックを通じて磨く方が精度が上がります。
失敗パターン③ 大手企業の経営企画だけを狙って機会を逃す
経営企画への転職を考え始めると、「どうせなら大手企業で」と考える方が多くいます。しかし大手の経営企画は分業が進んでおり、特定の機能(M&A・IR支援・予算管理など)に特化した担当になりやすく、「経営企画の全体像を一から経験したい」という期待と合わないケースもあります。
一方、
中堅企業やIPO準備中のスタートアップには、予実管理から戦略立案まで幅広く担当できるポジションが存在し、最初の経営企画ポジションとして経験値を積む観点では得るものが多い
ケースも少なくありません。経営企画への携わり方、やりがいのポイントが異なる事も多いため、自身にあったターゲットを見据えた上で転職活動をおこなうと、長期化・機会損失を防ぎやすいでしょう。
失敗パターン④ 転職後の業務実態を知らずにギャップが生まれる
「経営企画=戦略立案」というイメージを持ちすぎると、入社後にギャップが生じることがあります。実際には、社内調整業務・資料作成・各部門からのデータ収集・経営会議の事務局業務など、地道な作業が業務全体の相当部分を占めることも多くあります。
特に中堅企業やスタートアップでは、戦略立案よりもオペレーション業務の比重が高い時期があります。入社前に業務実態をよく確認しておくことが、「こんなはずではなかった」を防ぐ最善策です。
エージェントを通じて、現場のリアルな業務構成を確認する
ことをおすすめします。
失敗パターン⑤ 専門外の転職エージェントだけを使って求人に辿り着けない
経営企画の求人、特に質の高い非公開求人は、管理部門・経理財務領域に専門性を持つエージェントが保有していることが多いです。大手総合型の転職サイトや、管理部門専門外のエージェントだけを利用していると、紹介してもらえる求人の母数が少なくなります。経理・財務・管理部門に精通したエージェントを活用することが、経営企画転職における情報収集の起点として有効です。
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■企業規模・業界別に見る経営企画転職先の選び方
経営企画へのキャリアチェンジを目指す際、どの規模・業界の企業を選ぶかは、その後のキャリア形成に大きな影響を与えます。それぞれの特徴と現実を整理します。
(1)大手企業:分業の中で「深い専門性」を磨く
大手企業の経営企画は、中期経営計画策定・M&A・IR支援・全社予算管理といった機能ごとに担当が分かれていることが多いです。入社後は特定の領域を深く担当することが期待されるため、「経営企画の全体像を経験したい」という期待とはズレが生じる場合があります。
一方で、特定の領域に深く関われることによる会社へのインパクトや貢献性が高いことをやりがいに感じている方が多い傾向があります。また、大規模なプロジェクトへの参画経験や組織的な研修環境もメリットと言えるでしょう。
経理・財務出身者が大手の経営企画に転職する場合、M&A関連・FP&A機能・グループ会社管理への配属が想定されやすいです 。
(2)中堅企業:「経営企画の全体像」を幅広く経験できる
中堅企業の経営企画は、予実管理・中計策定・新規事業検討・社長直轄プロジェクトまで、少人数で幅広く担当するのが一般的です。経営陣との距離も近く、意思決定の場に近いところで実務経験を積めます。
(3)スタートアップ・IPO準備中:裁量と成長を優先するなら
スタートアップや上場準備中の企業では、事業計画作成・資金調達準備・KPI管理・内部統制整備まで幅広く担当することになります。財務バックグラウンドを持つ方にとっては、IPO準備における経理・財務・経営企画のクロスオーバー領域で即戦力として期待される環境です。ただし、業務量の多さ・変化のスピード・企業の安定性については、入社前に十分確認することが重要です。
(4)注目業界:どこで経営企画の需要が高いか
現在、特に経営企画の採用が活発な業界として、IT・SaaS企業(組織拡大に伴う管理強化)、製造業(DX・グローバル展開への対応)、ヘルスケア・医療機器(規制対応と事業成長の両立)が挙げられます。経理出身者がいずれかの業界での実務経験を持っていれば、その業界内での経営企画転職は特に有利に進む可能性があります。業界知識と財務スキルの掛け合わせが、他候補者との差別化になるためです。
■書類・面接対策 経理の経験を「経営企画の言葉」に変換する
選考を進める上で最も重要になるのが、書類と面接での自己表現です。経理出身者が経営企画転職で苦労しやすいのは、この「言語の変換」です。
(1)職務経歴書:経理業務を経営企画目線で書き直す
「決算業務・仕訳処理」という表現は、経理の文脈では正確ですが、経営企画の採用担当者には響きません。職務経歴書では「何のための数字だったか」「その数字が何に活用されたか」まで書くことが重要です。
NG例:
「月次決算および四半期決算業務を担当。仕訳入力・勘定科目のチェックを実施。」
OK例:
「月次・四半期決算を担当。完成した業績数値をもとに部門別の収益分析資料を作成し、差異要因と改善施策を経営陣へ報告。次四半期の予算見直し議論の基礎資料として活用された。」
違いは、
「数字を作った」だけでなく「数字が経営判断にどう使われたか」まで書けているかどうか
です。この視点の転換が、職務経歴書の評価を変えます。
(2)面接でよく聞かれる質問と回答の軸
Q「なぜ経理から経営企画に転職しようと思ったのですか?」
「数字を作る仕事から、数字をもとに判断を支援する仕事へ関わりたいと考えた」という軸で答えることが有効です。また、そのように考えが変わったきっかけやエピソードまで整理することが大切になります。「なんとなく経営に近いところへ」という表現は避け、「自分のどの経験が経営企画のどの業務に活きるか」とセットで話せるよう準備してください。
Q「当社の経営課題をどう見ていますか?」
経理出身者が差をつけられる場面です。有価証券報告書やIR資料などのほか、企業のホームページを事前に読み込み、そこから見えた課題や成長余地について自分の言葉で語れると、面接での評価が大きく変わります。「数字を読める人間として、こう見ている」という視点を持ち込めるのは経理出身者の特権です。
(3)ジャスネットの転職エージェントを活用するメリット
経営企画の非公開求人へのアクセスに加え、ジャスネットでは「経理・財務出身者の経営企画転職」の支援経験をもとに、職務経歴書の書き方・面接での表現・企業との年収交渉まで具体的なサポートを行っています。「自分の経験が経営企画に通用するのか」という判断も含め、まずはエージェントへの相談を起点にすることをおすすめします。
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■ジャスネットが支援した経営企画転職の事例
経理・財務バックグラウンドを持つ方の経営企画転職が、実際にどのように進んでいくのか、ジャスネットが支援した事例の概要をご紹介します。
【転職事例】
経理職から経営企画職への転職を実現(M.Rさん30代男性)
30代前半のRさんは、大学院卒業後、1社目に営業職で入社しました。働くうちに経理の仕事に興味を持ち、経理職を希望して2社目に転職。そこで1年半ほど働いた後、IPOを目指して準備を進めていた3社目に移られました。
そんなRさんが再び転職を決意したのは、100時間を超える残業があり、良好なワークライフバランスを実現できないことに加えて、入社当初はIPOを目指すなど好調だった業績が低迷し、経営が傾いてきたことが理由です。
Rさんへのヒアリングを進めていくと、経理職の中でも、数字を扱って会社の経営を改善していくような仕事に興味を持っていることが判明。そこで、東証一部上場の化学メーカーの経営企画の求人を紹介しました。果たしてどのように転職を成功させたのでしょうか。
→事例はこちら
■まとめ
経営企画への転職は、「難しい」と言われる理由が明確にある転職先です。求人数の少なさ・即戦力志向・経験の語り方の難しさ、これらを正確に理解した上で準備することが、転職成功への第一歩です。
一方で、経理・財務のキャリアを持つ方にとって、経営企画は「スキルの延長線上にある転職先」でもあります。財務分析・予算管理・数字を経営に結びつける力は、経営企画の業務に直接活きます。難易度の高さを正しく理解しながら、自分の経験を経営企画の文脈で語れるよう準備を進めることが、転職成功への最短ルートです。
ジャスネットでは、経理・財務出身者の経営企画転職を数多く支援してきました。「自分には可能性があるのか」という段階からでも、ぜひエージェントへ相談してみてください。
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