20代で経理職への転職を考えている方にとって、現在の転職市場は決して悪くない状況といえるでしょう。デジタル化やリモートワークの普及により、経理業務の働き方も大きく変化し、新しいスキルを持った人材への需要が高まっています。経験がない方でも、適切な準備と戦略があれば十分に転職成功の可能性があります。
20代経理転職ガイド|経験なしでも成功する秘訣とは

ジャスネットキャリア編集部
目次
■20代の経理職転職ガイド
(1)経理職の現状と求人の傾向
現在の経理職は、従来の記帳や計算業務から大きく様変わりしています。クラウド会計ソフトの普及により、単純な入力作業は自動化が進み、代わりに分析業務や経営判断のサポート業務の重要性が高まっています。特に中小企業では、経理担当者が財務分析から予算管理まで幅広く担当するケースが増えており、総合的なビジネススキルを持つ人材が求められています。
求人市場では、大手企業から中小企業まで幅広く経理職の募集が行われており、特にスタートアップ企業や成長企業では、若手の経理担当者を積極的に採用する傾向があります。これらの企業では、経験よりもポテンシャルや学習意欲を重視する傾向が強く、20代の転職希望者にとっては絶好のチャンスといえるでしょう。
(2)20代経理職に求められるスキルや経験
20代の経理職に求められるスキルは、基本的な簿記知識に加えて、Excel等の表計算ソフトの操作能力、コミュニケーション能力、そして何より学習意欲の高さです。経理業務は法改正や制度変更が頻繁にあるため、継続的に学び続ける姿勢が重要視されます。
また、近年ではデジタルリテラシーも重要な要素となっています。クラウド会計ソフトやRPA(自動実施ソフトウェア)ツールの活用能力は、業務効率化に直結するため、多くの企業が注目しています。プログラミングスキルまでは必要ありませんが、ITツールに対する抵抗感がないことは大きなアドバンテージになります。
さらに、英語力も徐々に重要性を増しています。海外展開する企業や外資系企業では、英文会計や国際会計基準の知識を持つ人材の需要が高まっており、20代のうちから語学力を磨いておくことで、将来的なキャリアの選択肢が大きく広がります。
(3)20代経理職の年収相場
20代の経理職の年収相場は、経験や企業規模により大きく異なりますが、未経験の場合は年収300万円から400万円程度からのスタートが一般的です。経験を積むにつれて、20代後半では450万円から550万円程度まで上昇する傾向があります。
経理・会計分野に特化した転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」の登録者5万人のデータをもとにした情報によると、20代後半の想定水準年収は456万円となっています。ただし20代の年収相場は年齢要因よりも、これまでのキャリアパスや専門性の深度、働く業種によって大きく変動するのが実情です。
年齢 | 想定年収 |
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20代後半 | 456万円 |
30代前半 | 466万円 |
30代後半 | 584万円 |
40代 | 647万円 |
50代以上 | 796万円 |
※ジャスネットコミュニケーションズ「年収診断」を利用。
勤務地東京・日商簿記資格あり・スタッフ(一般社員)職・在宅ワーク希望・強みは「年次決算経験」にて試算
大手企業や外資系企業では、より高い年収設定となることが多く、20代でも600万円以上の年収を得ることも可能です。ただし、これらの企業では高いスキルレベルや実績が求められるため、転職前の準備が重要になります。
一方、中小企業やベンチャー企業では年収水準は相対的に低めですが、幅広い業務経験を積むことができ、将来的なキャリアアップにつながる貴重な経験を得ることができます。年収だけでなく、将来的なキャリアパスも含めて総合的に判断することが重要です。
■未経験から経理職への転職
(1)経理未経験者向け求人事例
ここでは、ジャスネットの求人から厳選した20代で経理への転職を目指す方におすすめの事例を紹介します。
【未経験者歓迎】プライム上場子会社の連結決算スタッフ
仕事内容 |
お客様から受託した決算業務のプロジェクトメンバーとして、連結決算業務、もしくは上場子会社を中心とした単体決算業務に関わっていただきます。 【具体的な業務内容】
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応募要件 |
★未経験応募可能 【必須条件】
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想定年収 | 300万円~500万円 |
税理士法人での経理・財務労務スタッフ
仕事内容 |
【具体的な業務内容】
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応募条件 |
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想定年収 | 400万円~600万円 |
【簿記なしOK!】急成長中のベンチャー企業で経理
仕事内容 |
【具体的な業務内容】
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応募条件 | 月次決算業務のご経験がある方。(補助も可) |
想定年収 | 400万円~600万円 |
(2)20代の未経験転職の可能性
20代での未経験転職は、他の年代と比較して成功の可能性が高いといえます。企業側も長期的な人材投資として20代の採用に積極的であり、ポテンシャル採用の考え方が浸透しています。特に人材不足が深刻な経理職では、未経験者でも意欲的な人材であれば積極的に採用する企業が増えています。
成功のポイントは、転職理由を明確にし、なぜ経理職を選ぶのかを論理的に説明できることです。単に「安定している」という理由ではなく、数字を扱うことの面白さや、企業経営に深く関わることへの興味など、具体的で前向きな動機を伝えることが重要です。
また、転職前の自己投資も成功確率を大幅に向上させます。簿記検定の取得や会計ソフトの操作方法の習得など、基礎的なスキルを身につけておくことで、採用担当者に対して本気度をアピールできます。
(3)経理職に役立つ資格
経理職への転職において最も基本的な資格は日商簿記検定です。2級では株式会社の会計処理と工業簿記を学ぶことができ、実務に直結する知識を習得できます。未経験者であれば最低でも3級、できれば2級まで取得しておくことを強く推奨します。
また、最近ではFASS検定(経理・財務スキル検定)も注目されています。この検定は実務に即した内容となっており、経理業務の実践的なスキルを証明することができます。さらに、MOS(Microsoft Office Specialist)のExcelやマイクロソフトの資格も、日常業務で使用頻度が高いため取得しておくと有利です。
■転職活動の準備と進め方
(1)経理転職の準備
経理職への転職を成功させるためには、入念な準備が不可欠です。まず、自分の強みや経験を棚卸しし、それらが経理業務にどのように活かせるかを整理することから始めましょう。営業職であれば数字への感度、事務職であれば細かい作業への集中力など、一見関係なさそうな経験も経理業務に活かせる要素があります。
次に大切なのは、経理業務に関する基礎知識の習得です。簿記の勉強はもちろんですが、実際の企業の決算書を読んでみたり、経理関連のニュースに目を通したりすることで、業界への理解を深めることができます。また、転職を希望する業界の特徴や会計処理の特殊性についても調べておくことで、面接での質問に対してより具体的な回答ができるようになります。
さらに、転職活動に必要な書類の準備も重要です。履歴書や職務経歴書は、経理職への適性をアピールできる内容に調整し、複数のバージョンを用意しておくことで、応募企業に応じたカスタマイズが可能になります。
(2)求人検索方法と最新情報の探し方
効果的な求人検索のためには、複数の情報源を活用することが大切になってくるでしょう。大手転職サイトでは豊富な求人情報を得ることができますが、経理専門の転職サイトや会計事務所の求人サイトも併せて確認することで、より幅広い選択肢を見つけることができます。
企業の採用ページを直接確認することも有効な方法です。特に中小企業やベンチャー企業では、転職サイトに掲載せずに自社サイトでのみ募集を行っているケースもあります。気になる企業があれば、定期的に採用情報をチェックする習慣をつけましょう。
また、業界の最新動向を把握することも重要になります。会計基準の変更や税制改正などの情報は、面接での質問に対応するためだけでなく、転職後の業務においても必要な知識となります。会計専門誌やウェブサイト、セミナー情報などを活用して、常に最新の情報をキャッチアップする習慣を身につけましょう。
(3)職務経歴書の書き方
経理職向けの職務経歴書では、数字に関する実績や細かい作業への対応能力をアピールすることが重要です。営業職であれば売上実績、事務職であれば処理件数や正確性など、定量的な成果を具体的に記載しましょう。また、Excel関数の使用経験や、システム導入に関わった経験があれば、それらも詳細に記述することで技術的な対応能力をアピールできます。
未経験者の場合は、簿記の勉強や資格取得への取り組みを積極的にアピールしましょう。学習期間や取得予定日を明記することで、志望企業に計画性と継続性を印象づけることができます。また、会計ソフトの練習や、オンライン講座の受講実績なども、学習意欲の高さを示す材料として有効です。
■転職エージェントの活用法
(1)転職エージェントの選び方
転職エージェントを選ぶ際は、経理職の求人に強いエージェントを選択するといいでしょう。総合型の大手エージェントは求人数が豊富である一方、経理特化型のエージェントは業界の専門知識が深く、より具体的なアドバイスを受けることができます。
エージェント選びでは、担当コンサルタントとの相性もチェックするようにするといいでしょう。経理業務への理解度、転職市場に関する知識の深さ、コミュニケーションの取りやすさなどを総合的に判断し、信頼できるパートナーを見つけることが転職成功の鍵となります。
転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」は、経理・財務・会計・税務・法務分野に特化した専門性の高さが特長です。業界出身のキャリアアドバイザーが多数在籍しており、専門職ならではのキャリアパスや求人のマッチングに強みがあります。また、非公開求人も多く、希望条件に合った精度の高い転職サポートが受けられます。
(2)エージェントを活用した求人探し
転職エージェントを最大限活用するためには、自分の希望条件を明確に伝えることが必要になってきます。年収、勤務地、企業規模、業界などの基本的な条件に加えて、キャリアパスや働き方に関する希望も詳細に伝えましょう。また、絶対に譲れない条件と妥協可能な条件を分けて整理しておくことで、エージェントもより適切な提案ができるようになります。
エージェントからの求人紹介を受ける際は、単に条件面だけでなく、企業文化や職場環境についても詳しく聞くようにしましょう。経理職では長時間のデスクワークが多いため、職場の雰囲気や同僚との関係性は業務効率や満足度にも大きく影響します。
さらに、面接対策や書類添削などのサポートサービスも利用できるので存分に活用しましょう。特に経理職では専門的な質問が多いため、業界に精通したエージェントからのアドバイスは非常に価値があります。模擬面接を通じて、想定質問への回答を準備し、自信を持って本番に臨むことができます。
■20代経理職のキャリアパスと働き方
(1)20代経理職のキャリアパス
20代の経理職のキャリアパスは多様性に富んでおり、個人の志向や能力に応じて様々な道筋があります。一般的には、経理アシスタントから始まり、主担当、係長、課長へとステップアップしていく管理職コースが王道とされています。しかし、近年では専門性を極めるスペシャリストコースも注目されており、税務や連結決算、IFRS(国際会計基準)対応などの専門分野で高い専門性を身につけることで、市場価値を高めることができます。
また、経理職からのキャリアチェンジも多様な選択肢があります。財務企画、経営企画、内部監査、コンサルティングなど、経理業務で培った数字への感度やビジネス理解を活かせる職種への転職も可能です。特に20代であれば、異なる職種への挑戦も比較的容易であり、幅広いキャリアの可能性を持っています。
さらに、独立や起業という選択肢もあります。税理士資格を取得して会計事務所を開業したり、フリーランスの経理担当者として複数の企業をサポートしたりすることも可能です。20代のうちから将来の独立を見据えて経験を積むことで、より多様な働き方を実現できます。
(2)ワークライフバランスの重要性
経理職は比較的規則正しい勤務時間で働けることが多く、ワークライフバランスを重視する20代にとって魅力的な職種です。ただし、月末月初や決算期には業務量が集中するため、繁忙期の働き方については事前に確認しておくことが重要です。
近年では、リモートワークやフレックスタイム制度を導入する企業も増えており、経理職でもより柔軟な働き方が可能になっています。クラウド会計ソフトの普及により、在宅でも多くの経理業務を行えるようになったため、通勤時間の削減や家庭との両立がしやすくなっています。
ただし、ワークライフバランスを重視するあまり、スキルアップを怠ってはいけません。効率的な働き方を実現するためには、より高いスキルと専門性が必要です。プライベートの時間を確保しながらも、継続的な学習と成長を続けることが、長期的なキャリア成功の鍵となります。
■経理未経験者の転職成功事例
実際に未経験から経理職への転職を成功させた事例を見ることで、具体的な成功パターンを理解することができます。ここでは2例を見てみましょう。
営業職から経理職に転職したAさん(28歳・男性)は大学卒業後、不動産会社で5年間営業として勤務していましたが、将来的なキャリアの安定性を考え、経理職への転向を決意。営業時代には売上管理や見積書・請求書の作成も任されており、数字に強い点や取引先との折衝経験を自己PRとして活用しました。
転職活動前に日商簿記2級を取得し、無料のクラウド会計ソフトを使って仮想の帳簿付けをするなど、実務の理解を深めました。その結果、経理未経験でも「実務への理解度が高く、成長が期待できる」として、メーカー系の中小企業の経理職に内定。入社後は月次処理や伝票起票などから業務をスタートし、着実に経験を積んでいます。
事務職から経理職にキャリアチェンジしたBさん(29歳・女性)は、前職では医療系企業の一般事務として、請求処理やデータ入力、勤怠管理などを担当。正確さと地道な作業を継続する力を強みとしてアピールしました。経理への関心が高まり、転職活動と並行して税理士試験の簿記論の勉強を開始。将来的には税務業務にも携わりたいという明確なビジョンを持っていたことが、ベンチャー系IT企業の経理ポジションで高く評価されました。入社後は仕訳入力や月次決算補助からスタートし、積極的に業務の幅を広げた結果、入社3年で経理主任に昇進。現在はチームリーダーとして後輩指導にもあたっています。
これらの成功事例に共通するのは、転職前の十分な準備と明確な目標設定です。未経験であることをハンディキャップと捉えるのではなく、これまでの経験をどのように経理業務に活かせるかを具体的に示すことで、採用担当者の信頼を獲得しています。
■まとめ
20代での経理職転職は、適切な準備と戦略があれば十分に成功可能です。未経験者であっても、基礎的な知識の習得と明確な志望動機があれば、多くの企業で歓迎されます。重要なのは、経理職への転職を単なる職業選択ではなく、長期的なキャリア構築の一歩として捉えることです。
転職成功のためには、簿記をはじめとする基礎資格の取得、転職エージェントの効果的な活用、面接での適切なアピール方法の習得が不可欠です。また、転職後のキャリアパスを明確にイメージし、継続的な学習と成長を続ける意識を持つことで、より充実したキャリアを築くことができます。
現在の転職市場では、経理職への需要は高く、特に若手人材への期待は大きくなっています。デジタル化の進展により業務内容は変化していますが、それは同時に新しいキャリアの可能性も生み出しています。20代という年齢の強みを活かし、計画的な転職活動を行うことで、理想的な経理職でのキャリアをスタートさせることができるでしょう。
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ジャスネットキャリア編集部
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