■外資系経理の業務で、英語はどんな場面で登場するのか
「外資系経理では英語を使う」と聞いても、どんな場面でどのくらい使うのかがイメージできなければ、自分に合うかどうかの判断はできません。まず、外資系経理の日常業務の中で英語が登場する主な場面を整理します。
⑴メール・チャットでの日常的なやりとり
外資系経理における英語使用の中で、最も頻度が高く、かつ対応しやすい場面です。本社の経理チームや他拠点の担当者とのやりとりは、SlackやTeamsなどのチャットツールや電子メールで行われることがほとんどです。
「○月分の数字を送ります」「この勘定科目の処理について確認したい」といった定型的なやりとりが中心で、複雑な文法や高度な表現は求められません。業務に関する英語表現は繰り返し登場するパターンが決まっており、慣れてしまえばテンプレートとして活用できます。
読み書きの英語が基本であるため、英会話に自信がなくても比較的取り組みやすい
場面です。
⑵月次レポーティング(本社への財務報告)
外資系経理の業務の核心ともいえる「本社レポーティング」は、月次決算後に英語で財務データをまとめ、本社の財務チームに提出する業務です。損益計算書の要約・予算と実績の差異分析・月間の主要トピックスなどを英文のフォーマットに沿って記入します。
フォーマット自体は本社から指定されており、毎月同じ型で作成するため、初回さえ乗り越えれば2回目以降は格段に楽になります。数字を正確に入力し、簡潔な英語のコメントを添える能力があれば対応できるため、スタッフレベルでも習得しやすい業務です。
ただし、予算との差異が大きい月や、特殊な会計処理が発生した月には、本社から英語で詳細な説明を求められることがあります。この場面では、数字の背景を簡潔に説明する英作文能力が問われます。
⑶本社・他拠点との英語会議
外資系経理において最も英語力が問われるのが、オンラインや対面での英語会議
です。本社の財務担当者やリージョナルオフィスの経理チームとの定期会議、決算レビュー、監査対応など、様々な場面で英語での会議が発生します。
スタッフレベルでは会議に「参加して聞く」だけでよい場面も多く、議事録を英語で作成する担当になるケースも少なくありません。一方、シニアスタッフ以上になると、会議の中で自分の見解を述べたり、本社からの質問に答えたりする場面が増えます。マネージャークラスになると、会議を主導する立場になることもあり、流暢とはいえなくても、自分の意見を英語で明確に伝える能力が不可欠です。
日本語の会議と大きく異なるのは、発言しなければ「意見がない」と見なされる文化が根付いていることです。英語の流暢さよりも、発言する姿勢が重視されます。
⑷英文財務書類・契約書の確認
英文の財務諸表や契約書類を読み解く場面も、外資系経理では日常的に発生します。本社から送られてくる英文のガイドラインや会計処理の変更通知を正確に理解し、日本法人の業務に適用する作業です。
これは「読む英語」が中心であり、英会話能力とは別のスキルが必要です。会計用語に特化した英語知識(Revenue、Accrual、Deferredなど)を習得することで対応できるため、TOEIC対策よりも会計英語の語彙力を意識的に鍛えることが実務では役に立ちます。
⑸監査法人・外部機関への英語対応
グローバル監査法人が担当している場合、英語での資料提出や口頭説明が求められることがあります。ただし、こうした場面ではシニアスタッフ以上が対応することが多く、スタッフレベルでは日本語対応が中心であるケースが大半です。
■ポジション別に見る「必要な英語レベル」
外資系経理における英語の要求水準は、ポジションによって大きく異なります。「外資系だから全員に高い英語力が必要」というのは誤解で、スタッフレベルと管理職では求められる英語の質と量が根本的に違います。以下に、ポジション別の目安を整理します。
⑴スタッフ・ジュニアアカウンタント
英語の主な使用場面は、定型メール・月次レポートのフォーマット入力・英語の会計システム操作です。読み書きが中心のため、TOEIC600点台でも採用されているケースもあります。大切なのはスコアよりも「英語を学ぼうとする意欲と姿勢」であり、
面接時に「英語環境での業務に前向きに取り組める」という意思が伝えられれば、現時点のスコアが低くても選考を通過する可能性があります。
ただし、英語を全く使いたくないという場合は外資系経理には向きません。英語を使う場面を避け続けることは、外資系の環境ではほぼ不可能です。
⑵シニアアカウンタント
英語の主な使用場面は、本社への差異分析コメント記述・英語会議への参加・本社担当者とのメールの往復です。TOEIC700〜800点程度が目安になりますが、
スコアよりも「実務での英語経験」が重視されます。
「英語の会計システムを使っていた」「英語でのメールのやりとり経験がある」といった具体的な経験があると、選考で評価されやすくなります。
英語会議では、すべてを聞き取れなくても「聞き返す」「確認する」という姿勢が取れる方が求められています。完璧な英語力よりも、コミュニケーションを諦めない積極性が重視されます。
⑶アカウンティングマネージャー・コントローラー
英語の主な使用場面は、英語会議での主体的な発言・本社との数字の折衝・英語での管理職レポートの作成です。TOEIC750〜800点以上が目安となりますが、
スコアよりも「英語で意見を述べ、相手を説得できる実力」が求められます。
本社の幹部や他拠点のマネージャーと対等に議論できるレベルが必要であるため、英会話力の低さは採用のネックになります。このポジションを目指す場合は、日常的な英語学習に加え、英語でのビジネスコミュニケーション経験を意識的に積んでおくことが重要です。
【参考:ポジション別の英語レベル早見表】
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ポジション
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主な英語使用場面
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TOEIC目安
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最重視されること
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スタッフ
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メール・レポートフォーマット入力
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600点台~
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意欲・姿勢
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シニアスタッフ
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差異コメント・会議参加
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700〜800点
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実務経験・積極性
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マネージャー
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会議主導・本社折衝
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750〜800点以上
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英語でのビジネス交渉力
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■英語が不安でも入れるケース、さすがに難しいケース
「英語が不安」という理由だけで外資系経理への転職を諦めるのは、もったいないケースが多くあります。一方で、英語力の不足が致命的になる状況も存在します。以下に正直に整理します。
⑴英語が不安でも入れる可能性があるケース
まず、英語使用頻度が比較的低い企業・ポジションを狙うという選択肢があります。外資系企業の中でも、日本市場を重視していて日本語で業務の大半が完結する企業、アジア系の企業で日本語も通じる環境、ERPシステムは英語だが社内のやりとりはほぼ日本語という企業は存在します。
こうしたスタッフレベルかつ英語使用頻度が低い企業であれば、現時点の英語力が高くなくても採用につながるケースがあります。
また、これまでの経理実務の経験が豊富で、「英語は入社後に伸ばします」という前向きな姿勢をきちんと示せる方も採用されやすいです。ジャスネットの支援実績でも、英語力よりも日本基準での経理実務の深さが評価されて採用に至ったケースは多くあります。
さらに、英語の読み書きはできるが会話が苦手というケースも、スタッフレベルであれば問題になりにくいです。外資系経理の業務の多くはテキストベースのコミュニケーションであり、英会話力の不足を読み書き能力で補えることがあります。
⑵さすがに難しいケース
一方で、マネージャー以上のポジションに英語力ゼロで応募するのは現実的ではありません。会議を主導し本社と数字の折衝を行うポジションでは、英語で意見を述べる能力は必須要件です。
また、米国系大企業の日本法人で、本社との連携が日常的に発生するポジションでは、スタッフレベルでも英語会議への参加が前提となることが多く、最低限の英語会話力が求められます。求人票に「ビジネス英語必須」「英語での会議対応あり」と明記されている場合は、その要件を正直に受け止めて判断する必要があります。
「英語はこれから勉強します」という姿勢が通用するのは、スタッフレベルの求人であり、かつ英語使用頻度が低い環境に限られます。自分が応募しようとしているポジションの英語使用実態を、選考の中で正直に確認することが大切です。
■欧米系・アジア系で、英語環境はどう違うのか
外資系企業といっても、本社がどの国にあるかによって英語の使われ方と要求レベルは大きく変わります。英語力に不安がある方にとっては、この違いを理解することが企業選びの重要な軸になります。ただし以下のような傾向はありますが一般化はできませんので、実際の転職活動では個別にエージェントに確認することが重要です。
⑴米国系企業:英語での積極的な発言が前提
米国系企業では、会議で意見を述べないことは「貢献していない」と見なされる文化が根付いています。本社の担当者からの質問に対して、その場で英語で答えることが当然の前提とされており、英語でのコミュニケーション能力への要求水準は外資系の中でも最も高いといえます。
月次レポーティングの締め切りもタイトで、レポートの数字に対して「Why?(なぜこうなったのか)」という問い合わせが本社から直接来ることが多く、英語で説明責任を果たせる能力が求められます。英語力に自信がない段階での転職先としては、最も難易度が高いカテゴリーです。
⑵欧州系企業:非ネイティブが多く、英語の敷居が低い
ドイツ・フランス・スイスなど欧州系企業の特徴は、本社の社員も英語がネイティブではないケースが多いことです。会議のテンポは米国系より緩やかで、聞き返すことやゆっくり話すことへの配慮がある傾向があります。「完璧な英語」よりも「伝えようとする姿勢」が評価される文化です。
英語への心理的なハードルが最も低いのが欧州系で、英語に苦手意識がある方が最初の外資系チャレンジとして選ぶには適した環境といえます。ただし読み書きの英語は当然必要であり、「英語が全くできない」という状態では難しいことは変わりません。
⑶アジア系企業(中国・韓国・シンガポールなど):日本語が通じる場面もある
アジア系企業では、日本語を話せる本社スタッフがいるケースや、日本語での社内コミュニケーションが認められているケースがあります。英語が苦手な方にとっては負担が少ない環境ですが、グローバルな英語使用経験を積みたいという観点では物足りなさを感じる可能性があります。
また、英語のみならず中国語・韓国語でのコミュニケーションが発生することもあり、英語以外の語学スキルが活きる場面もあります。時差が少ない分、リアルタイムでのコミュニケーションが取りやすく、会議のスケジュールが立てやすいというメリットもあります。
■英語力を入社後に伸ばすための現実的な方法
外資系経理に転職した後、「英語を伸ばしながら働く」ことは十分に可能です。ジャスネットが支援した転職者の中にも、入社時点では英語に自信がなかったものの、2〜3年で英語会議を主導できるまでに成長した方が多くいます。現実的に効果があった方法を、実務家の視点でご紹介します。
⑴業務英語のテンプレートを早期に蓄積する
入社後まず取り組むべきは、自分が日常的に使う英語表現のテンプレートを集めることです。月次レポートのコメント文・本社への質問メール・差異説明のフレーズなど、前任者が使っていた英語表現や本社とのやりとりの文例を積極的に保存しておきましょう。繰り返し使える表現を20〜30個蓄積するだけで、業務上の英語の8割はカバーできるケースが多いです。
⑵会議の前に「言いたいこと」を書き出す
英語会議への参加が始まったら、会議の前に自分が発言しそうな内容を箇条書きで書き出す習慣をつけましょう。「この数字についてはこう説明する」「この質問が来たらこう答える」という準備があるだけで、英語会議のストレスは格段に下がります。準備した内容を会議で実際に発言できたら、それをそのまま自分の英語フレーズとして記録しておくことで、次第に引き出しが増えていきます。
⑶英語会議の議事録を自主的に書く
会議後に英語の議事録を自主的に作成するのは、英語力向上に非常に効果的です。会議での発言内容を英語でまとめることで、リスニングと文章力の両方が同時に鍛えられます。最初は完璧でなくても、本社の担当者に「議事録を送ります」と一言添えてシェアするだけで、相手から自然にフィードバックをもらえることもあります。
⑷会計英語の語彙を体系的に覚える
ビジネス英語全般の勉強よりも、会計に特化した英語語彙(Accounts Payable・Accrued Expenses・Deferred Revenue・Reconciliationなど)を優先的に覚えることが実務では直結します。外資系経理で頻出する500語程度の会計英語をマスターするだけで、日常業務の多くの英文は読み解けるようになります。TOEICの点数を上げる勉強より、会計英語の語彙強化のほうが実務での即効性があります。
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■まとめ:英語が不安でも、まずは自分の状況を整理することから
外資系経理の英語力については、「どのくらいのポジションを目指すか」と「どのタイプの企業を選ぶか」によって、必要な英語レベルは大きく変わります。スタッフレベルかつ英語使用頻度が低い環境であれば、英語力が高くなくとも十分に転職できるケースがあります。一方で、マネージャー以上のポジションや米国系大企業では、英語での発言・折衝能力が不可欠です。
大切なのは「英語が不安だから外資系は無理」と決めつけず、自分の現在の英語レベルと目指すポジション・企業タイプを整理した上で判断することです。英語力は入社後も伸ばし続けられるものであり、外資系の環境に身を置くこと自体が最大の英語学習の場でもあります。
まずは以下の記事もあわせてご覧いただき、外資系経理全体への理解を深めてみてください。
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