■消費税の課税事業者とは
消費税とは、みなさんご存じのとおり、モノを購入したりサービスを受けた際に、本体価格に10%(または8%)の税率をかけた金額を上乗せして支払う税金です。
消費者が支払った消費税は、それを受け取った事業者がまとめて国に申告し、納税をします。消費税は、税を負担する人(消費者)と納税する人(事業者)が異なる「間接税」の一つです。
ところで、事業者であれば必ず消費税を納めなくてはならないのかというと、そうではありません。基準期間(通常、個人事業主であれば2年前、法人であれば前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であるなどの要件に当てはまれば免税事業者となり、消費税の申告・納税をしなくてよいとされています。
ただし、適格請求書発行事業者の登録をした場合は、自動的に課税事業者となります。課税事業者となった場合、個人事業主であれば所得税の確定申告と同じ申告月である翌年3月31日までに、法人であれば法人税と同じ申告期限までに、消費税の申告・納税をしなくてはなりません。
今まで所得税の確定申告をご自身でされていた個人事業主の中には、消費税の申告も自分でしたいけど何をすればよいかわからない…という方もいらっしゃるでしょう。また、法人の経理担当者で、消費税の会計処理はなんだか自信がないな…という方もいらっしゃると思います。
そんな日頃モヤモヤを抱いている方に、消費税の基礎知識としてぜひ知っておいてほしいこと、それは、日々の取引における「消費税区分」の見分け方です。
■消費税区分とは
消費税区分は、「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」の大きく3つにわけることができます。これらの3つは、下の図のように①→②の2段階で見分けることができます。
(1)課税の対象かどうか
まず、「①課税の対象か」について確認してみましょう。課税の対象となるものは、以下の4要件で確認することができます。
- 国内取引である
- 事業者が事業として行っている
- 対価を得ている
- 資産の譲渡・貸付け、役務提供(サービス)である
上記の4要件を1つでも満たしていなければ、課税の対象外、つまり「不課税取引」となります。4要件をすべて満たしている取引は課税の対象となり、さらに「非課税取引」か「課税取引」のどちらなのか、判断することになります。
(2)非課税規定に該当するか
課税の対象となる取引=課税取引、じゃないの…?と思われる方は多いでしょう。
少しややこしいのですが、課税の対象とならないものが「不課税(課税の対象でない)」です。そして課税の対象となるものの中には、社会的な配慮などから消費税を課税するのはそぐわないと考えて「非課税(課税しない)」としているものがあります。課税しない取引については消費税法という法律に列挙されており、「非課税規定」と呼ばれています。
非課税取引と課税取引の見分け方はズバリ、「②非課税規定に該当するか」です。非課税規定の代表的なものを以下にご紹介しましょう。
- 土地の譲渡・貸付け
- 住宅の貸付け
- 預貯金の利子、保険料を対価とする役務提供
- 保険適用となる医療・介護サービス
- 国・地方公共団体などが行う登記などの事務サービス(行政手数料となるサービス)…など
ちなみに、上記の規定はすべて売り手側(サービスを行う側)からみた表現となっています。
売り手と買い手は表裏一体。たとえば、売り手側からすると「土地の譲渡」となる取引は、買い手側からみると「土地の譲り受け」となります。通常は一つの取引に対して、売り手・買い手ともに同じ消費税区分となると理解しておきましょう。
(3)不課税でも非課税でもないものが「課税取引」となる
これまでご紹介した図1の①②の2段階の見分け方により、不課税・非課税に当てはまらなかったものが「課税取引」、つまり消費税が上乗せされる取引となります。
実際の世の中の取引は、この課税取引が圧倒的に多いですね。2023年現在、消費税率は10%で、本体価格にこの税率をかけた金額が上乗せされます。
ただし、飲食料の販売やテイクアウトなど一部の取引については軽減税率8%が適用されます。また、輸出取引の場合は、税率を0%とする課税取引(免税取引)として扱われることとなります。
■ 消費税区分を間違えやすい例 ~実務でよくある取引~
ここで、消費税区分を間違えやすい、実務でよくある取引を例にとって、図1の①②の流れで確認してみましょう。
(1)給与と外注費は?
給与は、雇用契約に基づいて支払われる労働の対価で、「①課税の対象か」の4要件のうち「事業として行っている」に当てはまらないため、不課税取引となります。
外注費は、社外の人に依頼してサービスを受けた対価なので課税の対象となり、非課税規定に該当しませんので、①②どちらもクリアし課税取引となります。
(2)受取配当金と受取利息は?
受取配当金は、株主等の地位に基づいて支払われるもので、「①課税の対象か」の4要件のうち「事業として行っている」に当てはまらないため、不課税取引となります。
受取利息は、銀行に金銭を預けているというサービスの対価ですが、「②非課税規定に該当するか」で預貯金の利子に該当しますので、非課税取引となります。
(3)保険料と保険金は?
保険料は、「②非課税規定に該当するか」で保険料を対価とする役務提供に該当しますので、非課税取引となります。
保険金は、偶発的に起きた事象に対して支払われるもので、「①課税の対象か」で資産の譲渡等の対価に当てはまらないため、不課税取引となります。
(4)建物を賃貸する場合は?
賃貸物件に住む場合に毎月支払う賃料は、「②非課税規定に該当するか」で住宅の貸付け(賃貸)に該当しますので、非課税取引となります。
しかし、事業用で賃貸する場合(テナント)は、居住用になりませんので、非課税規定に該当せず課税取引となります。また、分譲住宅に住む場合は、売買取引となり住宅の貸付け(賃貸)にはなりませんので、課税取引です(土地部分の購入は非課税取引)。
(5)土地売買の仲介手数料は?
土地の販売は、「②非課税規定に該当するか」で土地の譲渡に該当するため、非課税取引となります。しかし、販売に係る仲介手数料は、取引そのものは仲介サービスとなりますので、非課税規定には該当せず、課税取引となります。
■消費税区分を分ける理由は?
ここまで消費税区分について説明してきましたが、「そもそもなぜ消費税区分を分ける必要があるの?」とギモンに思った方もいらっしゃるでしょう。最後に、その理由を2つお教えします。
(1)消費税の計算式とは
消費税区分を分けることは、事業者が納める消費税(納税額)の計算をする上で、とても重要です。原則的な計算式は、シンプルにすると下記のようになります。この計算式の「課税売上げ」「課税仕入れ」に当てはめるために、課税取引を把握しておく必要があるのです。
課税売上げに係る消費税 - 課税仕入れに係る消費税 = 納税額
なお、「課税売上げ」「課税仕入れ」は税務上で使われるワードでして、会計上の「売上」「仕入」とは多少意味が異なります。ココは誤解されやすいポイントですので、覚えておきましょう。
インボイス制度について、「仕入税額控除」というワードを聞いたことはありませんか。上記の式の「課税仕入れに係る消費税」を控除する部分を、仕入税額控除といいます。仕入税額控除は、支払い先が適格請求書発行事業者でない場合(インボイスを発行できない場合)、控除される金額が少なくなり、会計処理が少し複雑になります。
ただし、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった場合は、「2割特例」による計算式で納税額を計算することもできます。
2割特例を使う場合は、下記のように簡易な計算式になりますので、課税売上げのみ把握しておけばよく、課税仕入れや支払い先のインボイス確認については考慮しなくて大丈夫です。まず、今度の申告では2割特例が使えるのかどうか、把握しておきましょう。
(2)課税売上割合は不課税・非課税の見分けがポイント
不課税・非課税を分けるのにも理由があります。少し難しい話になってしまいますが、消費税の原則的な計算には「課税売上割合」という割合を使います。この課税売上割合は、「非課税売上げ」が分母に含まれますが、「不課税売上げ」は分子・分母のどちらにも含まれません。この点で不課税・非課税を分けておく必要がある、ということをちらっと覚えておくとよいでしょう。
課税売上割合 = 課税売上げ / (課税売上げ+非課税売上げ)
■まとめ
消費税区分について、少しはお分かりいただけたでしょうか。インボイス制度が始まってから、消費税の申告に関心のある方が増えていると感じます。今回は、日々の会計処理と密接に関わっている消費税区分について、書かせていただきました。
この記事が、消費税についてもっと知りたいと思う方に、少しでも参考になれば幸いです。