ここでは、これから経理スキルを磨き、ゆくゆくはキャリアアップしたいという方に向け、具体的なスキルアップの方法を“7つの戦略”として提案しています。
今回のテーマは「手作業をいかに減らしていくか」です。
経理作業において、そもそも手を動かしてデータを入力すること自体が非効率的かつ不正確な行為であると、まずは認識してください。経理の高速化とは、終了までの時間を短縮することです。そのために、可能な限りデータ上で作業することを意識しましょう。
そのためのテクニックをご紹介いたします。
経理スキルアップの「7つの戦略」
第4章 手作業をいかに減らしていくか
ジャスネットキャリア編集部
ここでは、これから経理スキルを磨き、ゆくゆくはキャリアアップしたいという方に向け、具体的なスキルアップの方法を“7つの戦略”として提案しています。
今回のテーマは「手作業をいかに減らしていくか」です。
経理作業において、そもそも手を動かしてデータを入力すること自体が非効率的かつ不正確な行為であると、まずは認識してください。経理の高速化とは、終了までの時間を短縮することです。そのために、可能な限りデータ上で作業することを意識しましょう。
そのためのテクニックをご紹介いたします。
データ上で作業すると言っても、外部から入手した資料はそれぞれまったく異なるフォーマットで作られているため、そのフォーマットを合わせる必要があります。
例えばタテに数字が並んだデータを、ヨコに並べた表に入力したい、という場合を例に見てみましょう。【図表1】をご覧ください。
このような場合、元データのデータ領域(B3:B6)を一括でコピーして貼り付けることはできません。しかし、セルのひとつひとつをコピーして値貼り付けするのは入力ミスの元です(Excelには一応「行列を入れ替える」という貼付け方法があるのですが、もう少し複雑な場合は対応できないため、この例では触れません)。
そこで【図表2】で示しているように、最終的に入力したい表とは別に、「貼付け専用のフィールド」を用意しておき、関数で数字をリンク(参照)させることで、入力ミスなく自動でデータを組み替えることができます。
では次の【図表3】のように、毎月入力する箇所が違う場合はどうすればよいでしょうか。
シンプルな解決策として、コピー用のフォーム組替えフィールドを用意しておき、リンクによって自動で順序を組み替えたうえで、コピー&値貼付けするという作業手順にする方法があります(【図表4】)。
コピペという手作業が2回発生するものの、組替えの判断は不要であるため、これでもスピードと正確性は大きく向上します。上記の例では説明を簡略化するためデータ量を少なくしていますが、大きなデータになるほど効果を発揮するでしょう。
上記の例は非常に単純な解決策ですが、大切なことは手作業や作業判断を極力排除することです。手作業や判断には常にヒューマンエラーが入り込む余地があり、起こりうることはいつか必ず起こります。可能性を完全になくすことはできなくても、少しでも減らす方法を考えましょう。
実は【図表4】のタテのデータをヨコに並べた表に転送する方法には、大きな問題があります。それは元のデータが不規則な順番になっている場合、間違ったセルを参照してしまうことになる、ということです。
例えば、【図表4】のもとになる「得意先別売上集計表」において、タテのデータの順序が毎月変わる場合、単純にリンク参照していたのでは、間違った場所に間違ったデータが飛んでしまいます(【図表5】)。
このような場合、表から指定したデータをピックアップして集計する「SUMIF」関数が便利です。
SUMIF関数:表の中から条件に一致する行を選び、その行にある指定した列の数値の合計を計算してくれる
集計すべき数値がひとつしかない場合は、その数値をそのまま拾ってきてくれます。例えば【図表6】の場合、最新版に張り付けた相手先名がどんな順番であってもB4セルには「東京商会」の数値を拾ってきてくれるのです。
なお、貼付けフィールド(H3:H8)に集計条件に該当する取引先の行が2つある場合は、合算してしまうことにご注意ください。
よくあるミスが、前月のデータの上に新しい月のデータを貼付けた際、データの行数が前月よりも少なく、下の方に前月のデータが残っていたためにそれも集計してしまうことです。
そのようなミスを防ぐためには、条件に合う数を数えるCOUNTIF関数を併用するとよいでしょう。
SUMIF関数の引用は同一シートのみならず、別のシートを参照することもできます。
そのため1シートを丸ごと貼付専用とし、そこからSUMIF関数で別のシートに数字を飛ばす、といった参照方法がおすすめです。
つまり、システムからCSVデータを出力すると、往々にして非常に読みづらい表が出てくるものですが、それを何ら加工せずにそのままひとつのシートにコピペして、SUMIF関数により必要な情報のみピックアップする、といった方法が便利です(【図表7】)。
そうすることで、毎月1回コピペするだけで、判断ミスなく適切なデータをピックアップできますし、元データが修正された際の更新作業も格段にスピーディかつ正確になります。
非常に便利なSUMIF関数ですが、拾ってこられるのは数値に限られており、文字列をピックアップしたい場合には使えません。そのため文字列を拾いたい場合はVLOOKUPという関数を使うことになります。
VLOOKUP関数:事前に作成しておいた一覧表の中から、指定した行・列のセルを拾ってくる関数。この関数は数値でも文字列でも扱うことができます。
しかし残念ながら条件の列が昇順に並んでいなければならない、条件列よりも右側の列しか引用できない、などのSUMIFにはない制約も多く、使い勝手が悪い関数でもあります。
そのため数値の引用はSUMIFに任せ、摘要の自動作成などの文字列を扱う場合でのみ、VLOOKUPを使うことをおすすめします。
コビペやインポートを使って作業をするためには、当然ながら、入力の元となる資料はExcelやCSVといった電子データである必要があります。もし重要な証憑を紙やPDFで入手しているのであれば、なんとかしてデータで入手する方法がないか考えてみましょう。
例えば、社内の別部署が作った経費一覧表が紙で送られてきているとしましょう。ここで、経費一覧表のデータをメールで送ってもらうだけで、経理作業は劇的に効率的かつ正確になるのです。
仮に内部統制上、その部署のトップの押印がなければ経費入力できない決まりになっていたとしても、入力作業まで縛られるものではないため、紙と一緒にデータを送ってもらって作業すれば問題ないはずです。もし入手した原紙とデータが一致しないリスクがあるのであれば、合計値をチェックするなどして、簡単に一致を確認する作業を追加すればいいだけのことです。
なお、画像データをExcel化するソフトウエアもWEB上で販売されていますが、少なからず読み取りミスが発生しますので、使用の際は十分注意しましょう。
最後に留意点として、入手した元データは“ナマの状態”、すなわち入手したときのそのままの状態で保存しておきましょう。
この際、更新日時も変更しないように注意しましょう。
生データを保存しておく理由は以下のふたつです。
ひとつは、会計監査や税務調査で求められることがあるからです。
特に監査法人は、会社の作業の妥当性を確かめるために、会社とまったく同じ作業をしたり、自分ならこうするという手順で作業を行ってみたりしています。そのために、会社の作業の出発点である生データは非常に重要性が高いのです。
したがって監査法人は、会社側がすぐに生データを出してこなかったり、何か変更された形跡のあるデータを出してきたりした場合、何か隠しているのではないだろうかという疑いを抱き、追加で資料を請求したり、質問をしてきます。これは本気で経理部員を疑っていなくても、疑いをかけて調査しなければいけないルールになっているのです。
したがって、何の意図もなく元データを削除してしまったり、変更した形跡を残してしまうと、お互いにとって無駄な作業が発生してしまうのです。
生データを保存するもうひとつの理由は、後でどんなデータを使用したかわからなくなるリスクを避けるためです。
何らかのシステムから出力されたデータのファイル名は、アルファベットと数字の番号の羅列で出力されていることが多く、前月どんなデータを使用したかわからなくなってしまうことが多いものです。こんな場合に前月の作業を思い返せるよう、作業履歴は極力具体的に保存しておくことが望ましいのです。
ただし、データのバージョン管理のため、ファイル名に入手日付を追加するのは有効な手段です。その場合でも、元のファイル名を上書きするのではなく、情報を追加するに留めましょう。
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