経理職は企業にとって欠かせない重要な職種であり、安定性とキャリアアップの可能性から多くの転職希望者に人気があります。しかし、経理未経験者にとって転職を成功させるためには、タイミングが非常に重要な要素となります。求人数の増加や企業の採用意欲が高まる適切な時期を見極めることで、転職の成功率を大幅に上げましょう。
未経験から経理職への転職チャンス!成功するための最適な時期とは?

2025年7月4日ジャスネットキャリア編集部
目次
■経理転職に最適な時期とは?
(1)経理求人が増える時期
経理職の求人には明確な季節性があり、それを知ることが転職成功への第一歩となります。最も求人が活発になるのは、企業の決算処理が一段落した後の時期です。多くの日本企業は3月決算を採用しているため、4月~6月にかけて経理部門の人員補強や組織改編が行われる傾向があります。この時期は新年度の体制構築のため、経験者だけでなく未経験者向けの求人も増加します。
また、9月~11月にかけても経理求人が増える時期です。この時期は下半期の開始に合わせた組織強化や、来年度に向けた準備として人員を確保したいという企業の意図があります。特に10月は中間決算を控えた企業が多く、業務量の増加に備えて人員を募集する傾向が強くなります。
年末年始前の12月~翌年2月にかけては、経理部門の繁忙期と重なるため求人数は一時的に減少しますが、この時期を過ぎると再び活発化します。転職を検討している方は、これらの周期的な変動を把握して戦略的に活動することが重要です。
(2)転職市場の動向を把握する
経理職の転職市場は、経済情勢や業界動向に大きく左右されます。景気が良好な時期には企業の採用意欲が高まり、未経験者にとってもチャンスが拡大します。逆に経済が不安定な時期には、即戦力となる経験者が優遇される傾向があるため、未経験者にとっては厳しい状況となります。
近年のデジタル化の進展により、経理業務にもITスキルが求められるようになっています。Excel、会計ソフト、ERPシステムなどの知識は基本的な要件となっており、これらのスキルを身につけることで未経験者でも競争力を高めることができます。また、リモートワークの普及により、地方在住者でも都市部の企業への転職機会が増えているという新たな動向もあります。
転職市場の動向を把握するためには、求人サイトや転職エージェントからの情報、業界誌やビジネスニュースなどを定期的にチェックすることが有効です。これらの情報を総合的に分析することで、最適な転職タイミングを見極めることができます。
■未経験者におすすめの転職時期
(1)10月~11月が狙い目
未経験から経理職への転職を目指す方にとって、10月~11月は最も有利な時期のひとつです。この時期は多くの企業が下半期の体制強化を図るタイミングであり、新たな人材を積極的に採用する傾向があります。特に中小企業では、来年度の決算処理に向けて人員を確保したいという需要が高まります。
①10月がおすすめの理由
10月は新卒入社から半年が経過し、企業が新入社員の定着状況を把握できる時期でもあります。退職者が出た場合の補充や、業務拡大に伴う増員が行われることが多く、未経験者向けのポジションも多数用意されます。
また、この時期に入社すれば、年度末の繁忙期までに基本的な業務を習得できるため、企業側としても研修期間を十分に確保できるメリットがあります。
②11月がおすすめの理由
11月は年末調整業務が本格化する前の最後のタイミングとして、人員補強を急ぐ企業が多くなります。この時期の求人は比較的急募案件が多いため、選考プロセスがスピーディーに進む可能性があります。未経験者にとっては、じっくりと検討される時間が短い分、基本的なスキルと意欲をアピールできれば採用につながりやすい時期といえるでしょう。
(2)新卒採用の影響を考慮する
新卒採用の動向は、中途採用市場にも大きな影響を与えます。特に4月入社の新卒採用が活発な企業では、新卒者の研修や配属調整が優先されるため、中途採用の選考が後回しになることがあります。逆に、新卒採用で十分な人数を確保できなかった企業では、中途採用で補完しようとする動きが活発化します。
新卒採用の結果が明らかになる5月~6月にかけては、中途採用のニーズが具体化する時期です。この時期に求人が出る案件は、企業の確実な採用意欲を反映しているため、選考において真剣に検討される可能性が高くなります。未経験者にとっては、新卒者との差別化を図りながら、社会人経験という強みを活かすことが重要になります。
■転職活動の準備を早めに行う重要性
(1)求人が増える前に準備を整える
転職活動において最も重要なのは、求人が増加する時期に備えて事前に準備を整えておくことです。求人数が多い時期は競争も激しくなるため、他の候補者との差別化を図るためには十分な準備期間が必要になります。
準備すべき項目は多岐にわたります。履歴書や職務経歴書の作成はもちろん、自己分析や企業研究、面接対策なども含まれます。これらの準備を求人が出てから始めるのでは遅すぎます。理想的には、転職を検討し始めた時点から継続的に準備を進めておくことが重要です。
特に未経験者の場合は、経理の基礎知識を身につけるための学習時間も必要になります。簿記検定の取得、会計ソフトの操作習得、Excelスキルの向上など、これらの学習には相当の時間を要します。求人が活発になる時期までに、これらのスキルを一定レベルまで習得しておくことで、選考において大きなアドバンテージを得ることができます。
また、転職エージェントとの関係構築も早めに行っておくべきです。エージェントとの面談を通じて自分の市場価値を把握し、転職戦略を練ることで、適切なタイミングで最適な求人に応募することが可能になります。
(2)必要なスキルや資格を事前に取得
経理職への転職において、関連するスキルや資格の取得は競争力を高める重要な要素です。特に未経験者にとっては、これらのスキルや資格が経理への意欲と基礎知識を証明する手段となります。
最も基本的で重要な資格は日商簿記検定です。3級は経理の基礎知識を証明するものとして広く認知されており、未経験者でも比較的短期間で取得可能です。2級を取得できれば、より実践的な知識を持っていることを示すことができ、転職活動において大きなアドバンテージとなります。1級は高度な専門知識を要求されるため、経験者のスキルアップに適していますが、未経験者が最初から目指す必要はありません。
ITスキルも経理職には欠かせません。Excel のVLOOKUP関数、ピボットテーブル、マクロなどの機能を使いこなせることは基本要件となっています。また、弥生会計、勘定奉行、SAP などの会計ソフトの操作経験があれば、即戦力として評価されます。これらのソフトは体験版や講習会を通じて学習することが可能です。
税理士資格や公認会計士資格などの高度な資格は、経理職のキャリアアップにおいて非常に有効ですが、取得には長期間を要するため、転職活動と並行して進めることは現実的ではありません。まずは簿記検定やITスキルの習得に集中し、転職後にさらなるスキルアップを図ることが効率的です。
■転職エージェントの活用法
(1)経理特化型エージェントのメリット
転職活動を効率的に進めるためには、転職エージェントの活用が大変有効です。特に経理職への転職においては、経理・財務に特化したエージェントを利用することで、より質の高いサポートを受けることができます。
①業界に精通したエージェントのアドバイスを受けられる
経理特化型エージェントの最大のメリットは、業界に精通した専門的なアドバイスを受けられることです。経理業務の特徴や求められるスキル、キャリアパスなどについて深い理解を持っているため、個々の候補者に最適な求人を紹介してもらえます。また、各企業の経理部門の組織構造や業務内容、求める人物像なども詳しく把握しているため、効果的な選考対策が可能になります。
②非公開求人へのアクセスが可能
さらに、経理特化型エージェントは一般的な転職サイトには掲載されていない非公開求人を保有しています。これらの求人は、企業が信頼できるエージェントにのみ依頼している優良案件が多く、条件面でも魅力的なものが少なくありません。競争率も比較的低いため、適切にマッチした場合は高い確率で内定を獲得できる可能性があります。
③企業は信頼できるエージェントに未経験人材の採用を託す
また、未経験人材を募集する企業が、より人柄を見極めることのできるエージェントに依頼する傾向があります。これは、未経験者が専門特化のエージェントを選ぶ大きな理由の一つになると思います。
企業側は、玉石混合の未経験人材をスムーズに選考したいという切実なニーズがあり、それを満たせるエージェント以外だと手間だけが増えていくためです。
(2)エージェントを利用する際のポイント
エージェントとの初回面談では、正直かつ具体的に自分の希望や状況を伝えることが重要です。転職理由、希望条件、キャリアビジョン、現在のスキルレベルなどを包み隠さず伝えることで、より適切な求人を紹介してもらえます。また、転職に対する本気度を示すことで、エージェントからの優先度も高くなります。
連絡は迅速に行うことも大切です。エージェントから求人紹介や面接調整の連絡があった場合は、できるだけ早く返答するようにしましょう。レスポンスが遅いと転職意欲が低いと判断され、良い求人の紹介機会を逸してしまう可能性があります。
フィードバックを積極的に求めることも有効です。書類選考や面接で不合格になった場合は、その理由を教えてもらい、次回の選考に活かすようにしましょう。エージェントは企業からのフィードバックを詳しく聞いているため、具体的な改善点を教えてもらえます。
■経理職の求人情報を見逃さないために
(1)求人サイトの活用法
経理職の求人情報を効率的に収集するためには、複数の求人サイトを活用することも重要です。それぞれのサイトには特徴があり、掲載されている求人の傾向も異なるため、幅広くチェックすることで見逃しを防ぐことができます。
大手総合求人サイトでは求人数が豊富で、様々な業界・規模の企業の経理職求人を見つけることができます。検索機能を活用して、勤務地、給与、経験年数、企業規模などの条件を細かく設定し、自分の希望に合った求人を効率的に探しましょう。また、メール配信機能を利用して、新着求人を自動的に受け取ることも有効です。
ジャスネットのような経理・財務専門の求人サイトでは、より専門性の高い求人情報を入手できます。ジャスネットは人材紹介だけでなく、人材派遣、OSサービスも行っていることで、人事部からだけでなく、経理部から直接、求人の依頼があることが特徴です。これらのサイトでは、求められるスキルや業務内容がより詳細に記載されているため、自分の経験やスキルとのマッチング度を正確に判断することができます。また、経理職のキャリア情報や市場動向に関するコンテンツも充実しているため、転職活動の参考になります。
企業の公式サイトの採用ページも定期的にチェックすることをお勧めします。特に興味のある企業については、求人サイトに掲載される前に採用情報が更新される場合があります。気になる企業のリストを作成し、定期的に採用ページを確認することで、早期に応募機会をキャッチできる可能性があります。
(2)エージェントを利用する際のポイント
近年、SNSやオンラインコミュニティを通じた転職情報の収集が重要性を増しています。これらのプラットフォームでは、公式の求人サイトには掲載されない情報や、実際に働いている人からの生の声を聞くことができます。
LinkedInは転職活動において特に有効なSNSです。経理職の専門家をフォローしたり、経理関連のグループに参加したりすることで、業界動向や求人情報を入手できます。また、自分のプロフィールを充実させることで、企業のリクルーターからスカウトを受ける可能性もあります。定期的に投稿やコメントを行い、業界内での存在感を示すことも効果的です。
X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSでは、企業の公式アカウントをフォローすることで、採用情報をリアルタイムで受け取ることができます。また、経理職の転職に関するハッシュタグを活用して情報収集を行うことも有効です。ただし、SNS上の情報は信頼性にばらつきがあるため、必ず公式情報で確認することが重要です。
経理職の専門コミュニティやフォーラムでは、実務経験者からの詳細な情報を得ることができます。転職体験談、企業の内部情報、面接対策など、求人サイトでは得られない貴重な情報が共有されています。これらのコミュニティに積極的に参加し、有益な情報を収集するとともに、自分も経験や知識を共有することで、ネットワークを構築することができます。
■転職活動の成功に向けたポイント
(1)書類選考を通過するためのコツ
書類選考は転職活動の第一関門であり、ここを通過できなければ面接の機会を得ることができません。経理職の書類選考において重要なのは、自分の経験やスキルを経理業務に関連づけて具体的にアピールすることです。
履歴書では、基本情報を正確に記載することはもちろん、志望動機を明確に表現することが重要です。なぜ経理職を希望するのか、なぜその企業を選んだのかを具体的に述べ、経理職への転職に対する真剣さを示しましょう。資格欄には簿記検定などの関連資格を必ず記載し、現在勉強中の資格があれば併せて記載することで、継続的な学習意欲をアピールできます。
職務経歴書では、これまでの業務経験を経理業務に活かせる観点から整理して記載します。未経験者の場合でも、数字を扱った経験、正確性が求められる業務、期限管理が重要な業務などは経理職に通じる経験として評価されます。具体的な数値や成果を交えながら、経理職で活かせるスキルを明確に示しましょう。
書類の体裁も重要な要素です。誤字脱字がないかを入念にチェックし、読みやすいレイアウトで作成することが基本です。経理職は正確性が重要視される職種であるため、書類の品質がそのまま候補者の能力評価につながります。
【関連サイト】
職務経歴書の書き方
(2)面接対策の重要性
書類選考を通過した後の面接は、専門知識だけでなく、人物面での適性も総合的に評価されます。技術的な質問に対する準備は欠かせません。簿記の基本的な仕訳、決算書の読み方、税務の基礎知識などについて、自分なりに整理しておきましょう。完璧な回答ができなくても、基本的な理解があることを示すことが重要です。また、分からない点は素直に認めつつ、学習意欲があることを伝える姿勢も評価されます。
未経験者の場合は、なぜ経理職を選んだのかという動機について、説得力のある説明ができることが重要です。単に「安定しているから」「数字が好きだから」といった表面的な理由ではなく、これまでの経験や価値観と関連付けながら、深い動機を語れるようにしておきましょう。
■まとめ
経理職への転職成功には、適切なタイミングの見極めが極めて重要な要素となります。特に未経験者にとっては、経理求人が増える10月~11月の時期が最も有利であり、企業の採用意欲が高まるこの時期を見逃さないことが成功への近道となります。また、新卒採用の結果が明らかになり、中途採用のニーズが具体化する5~6月の時期も抑えておきましょう。
経理職は企業の重要な基盤を支える専門職であり、長期的なキャリア形成においても魅力的な選択肢です。ここで紹介してきたように、適切な時期を見極め、十分な準備を行い、戦略的に転職活動を進めることで、きっと未経験からでも経理職としての新たなキャリアをスタートさせることができるでしょう。
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