日商簿記2級は経理転職にメリットをもたらす「パスポート」
――経理職を目指す人にとって簿記資格はどのような価値がありますか?
簿記資格は経理・会計職における「パスポート」のような存在です。
経理業務では、簿記や会計に関する知識を前提として仕事を進めるため、企業は応募者が基礎知識を持っているかどうかを重視します。その判断材料として、日商簿記は非常に分かりやすい指標です。
特に日商簿記2級は、「経理職を目指すなら最低限持っていてほしい資格」として位置付けられているケースが少なくありません。
実際には経理経験が豊富であっても簿記資格を持っていない人もいます。しかし、転職市場では同じような実務経験を持つ候補者であれば、簿記2級を保有している人のほうが評価されやすい傾向があります。
――簿記2級を取得していると、転職活動では具体的にどんなメリットがありますか?
(1)実務経験者が簿記2級を取得した場合
経理経験がある人にとっても、簿記2級の価値は小さくありません。
例えば、中小企業で決算業務を担当していた場合、その経験が企業規模の異なる他社でも通用するレベルなのか、会計の基礎知識がどの程度身についているのかを企業側が判断するのは簡単ではありません。そこで参考にされるのが簿記2級です。
経理業務は「会計という共通言語」を扱う仕事です。簿記2級は、その言語を理解し、扱えることを客観的に示す証明になります。
もちろん選考では実務経験が最優先となりますが、履歴書や職務経歴書に簿記2級の記載があるかどうかで、書類選考の通過率が変わるケースもあります。
また、経験者であっても「経理として働いているにもかかわらず簿記2級を持っていない」という点をマイナスに捉える企業もあり、その場合は応募できる求人の選択肢が狭まる可能性があります。
(2)経理未経験者が簿記2級を取得した場合
未経験の場合、簿記資格をまったく持たずに経理職へ転職するのは非常に難しいため、簿記2級の重要性はさらに高まります。
簿記3級のみでも転職できる可能性はあります。しかし、応募可能な求人の数や企業の選択肢は、簿記2級を持っている場合と比較するとだいぶ限られるでしょう。そのため、未経験から経理職へのキャリアチェンジを目指すのであれば、まずは簿記2級の取得を目指すことを推奨します。
実際にエージェントが「まず簿記2級を取得してから転職活動を始めましょう」とアドバイスすることも少なくありません。数か月後に資格取得を経て転職支援を再開するケースもあります。
――未経験でも簿記2級があれば経理への転職は可能ですか?
結論からいえば、可能です。以前と比べると、未経験者でも簿記2級を評価して採用する企業は増えています。
ただし、資格だけで転職できるわけではありません。一般的には、学歴、経歴、簿記資格の取得状況のバランスが揃うことで紹介可能な求人の幅が広がります。
一方で、「プライム上場企業に入りたい」「大手企業に限定して応募したい」といった希望になると、簿記2級だけではハードルが高く、やはり経理の実務経験が求められることになります。それでも、
未経験者にとって簿記2級は経理職への入口となる重要な資格であることは間違いありません。
簿記2級と簿記3級の違いやカバーできる業務の範囲
――簿記3級と簿記2級では転職市場でどれくらい差がありますか?
簿記3級も会計の基礎知識を学ぶうえでは有効な資格ですが、転職市場では簿記2級のほうが圧倒的に評価される傾向があります。企業は応募者を学歴、職歴、年齢、資格などの要素で複合的に判断しているので、資格だけで判断しているわけではありません。そのため簿記3級の所持のみでも転職できるケースはあるものの、転職活動はかなり苦戦する覚悟をしておいたほうがいいかもしれません。
未経験にせよ実務経験があるにせよ経理職を目指すのであれば、より多くの求人に応募できる簿記2級の取得を目指したほうが有利といえるでしょう。
面接でも「3級を取得しました」というだけでなく、「3級を取得していますが、現在は2級取得に向けて勉強をしています」と説明したほうが資格取得に向けた姿勢としてアピールできます。
――経理業務としてひとつの指標となる「決算」ですが、決算業務を担当するためにも簿記2級は必要でしょうか?
決算業務を一人で担当できるレベルを目指すのであれば、簿記2級程度の知識は身につけておきたいところです。特に簿記2級では、簿記3級にはない工業簿記や原価計算を学びます。製造業の経理では原価計算の知識が必要になるため、製造業を志望する場合は簿記2級の取得がほぼ必須と考えてよいでしょう。
また、近年の日商簿記2級では連結会計も学習範囲に含まれており、従来よりも実務に近い知識を習得できます。そのため、中小企業だけでなく、一部上場企業や大手企業の経理職を目指す場合にも有効な資格といえます。
――簿記2級を取得したら簿記1級も目指すべきでしょうか?
キャリアプランによって異なります。将来的にプライム上場企業や誰もが名前を知っているような大手企業の経理部門、あるいは高度な会計業務に携わりたい場合は、簿記1級の取得が有効です。
一方で、簿記1級は合格率が低く、長期間の学習が必要な難関資格です。そのため、
簿記2級取得後はすぐに簿記1級を目指すのではなく、年齢やキャリアプラン、実務経験とのバランスを考えて判断するといいでしょう。
働きながら講座などで簿記2級の取得勉強も可能
――経理経験の蓄積と簿記2級の取得、どちらを優先すべきでしょうか?
基本的には実務経験が優先です。しかし、転職市場では実務経験だけでなく、それを裏付ける知識も求められます。実務経験があっても簿記2級を持っていなければ、転職時に評価されにくくなる場合があります。逆に簿記2級だけを持っていても実務経験がなければ、応募できる求人は限られます。
理想的なのは、経理業務に携わりながら簿記2級の取得を目指すことです。実際に、働きながら独学や通信講座、専門学校などを経て簿記2級に合格する人は数多くいます。自分に合った勉強方法を探してみてください。
簿記の資格は複数あって、日商簿記のほかに「全商簿記」「全経簿記」があります。もちろんこれらの資格にも価値がありますが、就職・転職で有利になるのは知名度の高い日商簿記です。全商簿記や全経簿記を取得している方も、経理への転職を考える際は日商簿記の取得をチャレンジしてみてください。
まとめ:日商簿記2級は経理転職のスタートライン
経理転職を考えるのであれば、日商簿記2級は「取得しておいて損のない資格」ではなく、「持っていることが前提として期待される資格」です。
もちろん、経理経験が豊富であれば簿記2級がなくても転職できるケースはあります。しかし、転職市場で客観的に知識を証明し、応募できる求人の幅を広げるという意味では、簿記2級の価値は依然として高いままです。
未経験から経理職に挑戦したい方も、将来的なキャリアアップを目指す方も、まずは日商簿記2級の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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