【第10回 消費税申告業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
*上記ランクについてはAが代替危険度が高く、BCの順で低いものと予想する。

2019年10月より再び注目を浴びた消費税。軽減税率が導入されたことにより、経理の生活も少しずつ変わってきました。飲食店や小売店などさまざまな業種で「軽減税率」をどのように対応するのかは大きな課題として持ち上がってきたのです。この軽減税率の導入は、今後、日本における経理業務のIT化へのエポックメイキングとしての性質をもつことになるでしょう。
今回は消費税を通して経理のIT化について見ていきましょう。
1.最もITに依存した税金
消費税は会社にまつわる他の税金に比べ、最もITに依存した税金といえます。なぜなら、一仕訳ごとに税額が発生する消費税の申告は日々の仕訳一件一件の積み重ねであり、個々の仕訳における課税分類を一つでも間違えてしまったら、間違った税額になってしまうからです。
企業における仕訳件数は膨大であり、これらをすべて集計したうえで税金計算を行わなければならないわけですから、人海戦術で確認することはほぼ不可能です。そのため、すべての仕訳から漏れずに消費税を集計できるだけでなく、誰が入力しても誤りがないような業務フローを考えなければなりません。
日本における消費税の導入は平成元年ですから、消費税はまさに、会計がシステム化されてからこそ導入できた税目なのです。
2.軽減税率と経理処理のIT化
これらの取引上の分類は、軽減税率の導入とともにさらに複雑さを増します。
テレビなどでも何度も話題になったように、単に税金が課税されるかどうかだけでなく、醤油は8%、みりんは10%といった具合に一見違いがわかりにくい税率の判断をしていかなければならないのです。
そのため、品目の多いスーパーやコンビニなどでは、バーコードで商品情報が判別できたうえでPOSレジなどを利用することでレジ担当者が判断せずとも正しい税額で会計ができるようにしておくなど、販売業務の段階でIT化されている必要があるのです。
(1)2023年問題、インボイスによって変わるミライ
こうしたわかりづらい軽減税率を政府が進めた一つの理由が2023年から導入される適格請求書等保存方式にあるといいます。これは、「日本版インボイス制度」ともいわれています。これまで日本においては、取引価額に含まれる消費税額は明示する必要がなく、税額は課税取引金額を納税を行う事業者側で算定し、申告するという日本独自の計算方法がとられていました。
これは、小規模事業者が多い日本の実情に合わせるための措置でしたが、これにより税制上、本来発生しないはずの税金を取引価額にオンさせて収受する、いわゆる「益税」が発生します。インボイス制度は、この益税を排除するため、対象事業者にみ消費税額等を請求書に記載することを求めているのです。
(2)インボイス制度による請求書のデータ化
これにより、2023年からは日本において商売を行うすべての事業者がこれに対応する請求書等を発行しなければならないこととなったのです。
このことは、小規模事業者においてもIT化を進めなければならないミライを意味します。インボイスは請求書等の厳格な記載要件が決められているため、これまでのように手書きの請求書などでは管理が難しくなってくるからです。
これを受けて、ベンダー各社や決済代行会社は顧客獲得に躍起になって、手数料優遇のキャンペーンなどを繰り広げました。しかし、これはあくまで「紙のレシートをデータ化する」にとどまります。
3.DX(デジタル・トランスフォーメーション)のミライと電子インボイス
これに対し、民間ベンダー5社から発足した「社会的システム・デジタル化研究会」では、請求書の発行プロセスから見直し、中長期的には、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等につなげていく「社会システムのデジタル化」を目指しています。
このデジタル化の当面の目標として国を挙げての電子インボイス制度の導入を目指しています。これは、決済情報を「まずデータとして」やり取りすることを目指したもので、これにより、会計情報はより人の手を離れ、情報の交換により、リアルタイムに帳簿上にデータが生成されるミライがやってくるのです。これにより、消費税も自動的に取引された正確な税額がデータで反映されることとなるのです。
4.DX時代の守りの経理と攻めの経理
こうしたDX構想は、国を挙げての課題となっています。これは、数年先の経理現場の業務を大きく変える可能性を秘めています。
これまで以上に、経理現場では入力作業ができる人材ではなく、データ化され収斂された経理データの正当性を判断できる能力が問われるようになるでしょう。
そして、これまで入力作業に忙殺されていた時間は、細分化する国内市場や身近になった国際市場において、バックオフィスに終始せず、当期利益に貢献する戦略的経理を目指す攻めの経理に置き換わる、そんなミライがもうそこまできているのです。
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
はじめての転職なら
実務に役立つコンテンツ
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
転職の悩みを相談する(無料)
カテゴリー
経理転職に関するカテゴリーごとにまとめたページです。
よく読まれている記事
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
転職の悩みを相談する(無料)
新着記事一覧
-
第1回 アンダーコロナのテレワーク実態 ~テレワークを阻むセキュリティー問題~
税理士 小島 孝子
-
【第11回 法人税申告業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
【第10回 消費税申告業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
【第9回 税効果会計】(AI・IT代替危険度予想 ランクC)
税理士 小島 孝子
-
【会計事務所編】ポスト・コロナ戦略 ~経理部はコロナとどう戦うのか~
税理士 小島 孝子
-
【企業経理部編】ポスト・コロナ戦略 ~経理部はコロナとどう戦うのか~
税理士 小島 孝子
-
【第8回 年次決算】(AI・IT代替危険度予想 ランクC)
税理士 小島 孝子
-
【第7回 経費精算】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
第3回 事前通知の確認事項
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
-
【第6回 固定資産管理】(AI・IT代替危険度予想 ランクC)
税理士 小島 孝子
-
【第5回 在庫管理】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
第2回 軽減税率違反は税務調査でどうなる?
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
-
第1回 元アツガミの税務調査は、まったく怖くない
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
-
第3章 価格戦略
公認会計士 金子 智朗
-
【第4回 手形・小切手】(AI・IT代替危険度予想 ランクB)
税理士 小島 孝子
-
第2章 意思決定の基本
公認会計士 金子 智朗
-
【第3回 現預金管理業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
第1章 管理会計とは何か、なぜ必要か
公認会計士 金子 智朗
-
【第2回 買掛金管理業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクB)
税理士 小島 孝子
-
【第1回 売掛金管理業務】(AI・IT代替危険度予想 ランクA)
税理士 小島 孝子
-
序章 管理会計の担い手たれ!~役割転換が求められる会計人~
公認会計士 金子 智朗
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
転職の悩みを相談する(無料)
経理向け求人
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
転職の悩みを相談する(無料)
経理の転職成功事例
-
経理スキルを十分に生かせない職場からの転職
Y.Kさん 20代 男性
-
30代半ば、上場企業に転職できるラストチャンスをつかむ
S.Eさん 30代 女性
-
転職失敗経験を経て自分に合う会社へ転職
M.Fさん 40代以上 男性
-
未経験から経理職への転職に挑戦。落ち続けた原因を克服
K.Rさん 20代 男性
経理転職Q&A
-
中小メーカーの経理部で働く30歳の男性です。現在、4名(課長以下3名)の経理課の一員として決算取りまとめの…
-
非上場メーカー(1,000名規模)の経理部決算チームで働く38歳の男性です。経理部は2つの課に分かれ…
-
35歳の女性です。子育てと両立しながら、正社員として働きたいと考えています。3-4年程経てば子どもは…
-
32歳の女性です。出産、育児があり、前職は2年前に退職しました。そろそろ仕事に復帰したいのですが…
会計人の人生観・仕事観を紹介「Accountant's Magazine」最新号
「Accountant's Magazine」は、著名な会計プロフェッションにスポットをあて、その人生観・仕事観を紹介。会計・経理分野に従事する人と仕事の将来像を提示する、読者と共に考えるヒューマンドキュメント誌です。今なら新規登録していただくと、「Accountant's Magazine」(WEB版)の全記事を無料で閲覧することができます。
関連コンテンツ
来社・履歴書・職務経歴書が一切不要!
転職の悩みを相談する(無料)